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わんくしょん
誤字脱字などありますが、ご寛大なお心でお読みください。
桃紫です。
いるまはカウンターの端で、溶けかけた氷を眺めながらお酒をちびちび飲む。
紫がかった髪がネオンの光に濡れて、鏡に映る自分の顔が他人みたいだ。
らんと初めて会った夜も、こんな夜だった。
笑顔がまぶしくて、すぐに体が欲しくなった。
ホテルで交わした熱は、ただの衝動のはずだったのに。
それから何度も会ううちに、いるまの胸に小さな棘が刺さったまま抜けなくなった。
「好き」なんて言葉は、封印していた。
『セフレ。』
それで十分だと思っていたのは、最初だけ。
ある雨上がりの夕方。
いるまは仕事帰りに二丁目を抜けようとして、ふと足を止めた。
向こうの歩道に、らんがいた。
隣にはらんより少し背の高い男。
二人は傘を一本で共有して、肩を寄せ合って笑っている。
らんが男の腕にそっと手を置く瞬間、いるまの視界が白く霞んだ。
……恋人、いたんだ。
胸が潰れそうな痛み。
息が詰まって、足が動かない。
そのまま踵を返して、反対方向へ逃げた。
スマホが震えても、見なかった。
既読をつけると、余計に苦しくなる気がしたから。
次の日も、その次の日も。
らんからのメッセージは増えていった。
「どうしたの? 何かあった?」
「いるま、返事してよ」
「俺、嫌われた?」
「ブロックするなら、せめて一言言ってくれない?」
いるまは全部既読にしなかった。
画面を見るだけで、涙がにじむ。
諦めようと思った。
本気になった自分が馬鹿みたいで、情けなくて。
これ以上傷つきたくなかった。
でも、心のどこかでまだ期待していた。
「ただの友達だよ」って、らんが笑って言ってくれるのを。
そんな都合のいい展開なんて、あるはずないのに。
1ヶ月が過ぎた頃。
共通の知り合いが開いた小さな飲み会に、いるまは意を決して顔を出した。
もう避けきれないと思ったから。
隅の席で酒を飲んでいると、らんが入ってきた。
目が合った瞬間、らんの顔が強張った。
やつれていた。
いるまと同じように、眠れていないみたいだった。
飲み会が終わって、外の空気を吸いたくなったいるまは非常階段へ向かった。
冷たい風が吹き抜ける中、そこにはらんがいた。
「…らん、久しぶり」
どんな顔をすれば良いのかわからない
「……久しぶり」
気まずい空気が流れる。
先に沈黙を破ったのはいるまだった
「…お前、浮気しててよかったん?」
「は?なんの話?」
いるまは決意をしたかのように口を開けた。
「…いや、気使わなくていいから、」
「え?まじ何の話?」
「見たんだよ。お前が恋人歩いてるとこ」
「うっそだ〜!だって俺恋人いないもん」
いるまは無言で汚物を見るような目でらんを見つめた。
「本当に心あたりないんだけど!え、ちょ!やめて!その目!」
らんは本当に心当たりがなさそうだった。
ずっと首を傾げている。
「…茶髪で、ぴんで前髪止めてる男」
いるまは意を決してその男の特徴を言った
「…え?それ、なっちy、じゃなくて、友達だわ」
「は?」
「あっれあれあれ?もしかして、いるま、勘違いしちゃったぁ?」
いるまは壁に寄りかかって、目を伏せた。
「クソが」
「…まぁ、勘違いでよかった。俺いるまのこと好きだから、まじで死ぬかと思ったわ」
「……は?」
本日何度目かわからない疑問符。
「ってごめん、迷惑だよな」
「…いや、俺も、す、好き、だった。ずっと。」
「…だった?」
「今も、好き」
その言葉を聞いたらんはその場にしゃがみ込んだ。
「はぁぁぁ、よかったぁ。いるまが急にいなくなって、俺……毎日、嫌われたかと…」
「ごめん」
真っ赤ないるまの頬にらんは、そっと指を添えた。
「もう、離れないでね」
いるまの耳にそっと囁かれた。
「俺、もうお前いないと無理だわ」
いるまはらんの胸に顔を埋めた。
二人は抱き合ったまま、長い間動けなかった。
非常階段の蛍光灯が、冷たく二人を照らす。
ネオンの街の喧騒が遠く聞こえる中、互いの体温だけが、唯一の救いだった。
その夜、二人はホテルには行かなかった。
ただ、近くの公園のベンチで朝まで寄り添っていた。
言葉はもういらなくて、ただ触れ合っているだけで、胸の棘が少しずつ溶けていく気がした。
二人はもう、二度とすれ違わない。
紫と桃の色が、ようやく重なった夜に。
一応余談として、後日に2人で指輪を買いに行くんですが、そこが赤さんのお店だったって言うのも考えてましたが、それはまたいつかに…
コメント
1件
うわぁめっちゃ好きです!!︎💕︎︎ セフレから恋人になるの好きなんで見れて最高です!!🫶🏻︎☺️ 紫さん勘違いするの可愛い! やっぱりあめさんが書く作品全部神作です!!✨️👏🏻 余談も完璧です!!