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「でさ、あの教授のクセが――」
亮の話がまた続く。
咲は相づちを打ちながらも、視線はテーブルの湯呑みに落ちていた。
そのとき、不意に横から声がした。
「……妹ちゃん」
顔を上げると、悠真がちらりと視線を向けてきた。
「ご飯、ごちそうさま。ほんと美味しかった」
亮と話しながらの自然な調子。けれど、確かに自分に向けられた言葉。
「……あ、ありがとうございます」
胸の奥に小さな灯がともるようで、咲は思わず箸を強く握りしめた。
ほんの一言。
それだけで、置いていかれたはずの輪の中に、自分も含まれた気がした。