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「ねぇねぇ滝ちゃん!」
「僕 、滝ちゃんが好き!大好きだよ!」
あぁ 、気味が悪い 。
どうしてこんなにも 、
全身が奮い立つようなことが言えるのか
この馬鹿にはいつも驚かされる 。
この 、鬱陶しく付き纏うこの男こそが私…
平滝夜叉丸が大大大っ嫌いな綾部喜八郎である
綾部喜八郎は 、私と幼馴染の関係であった 。
そうは言っても 、身分は到底違っており
私の方が彼よりもふたつ程度上であった 。
ある家系の末裔である私と 、
ただの平民の家の綾部喜八郎 。
そんな私たちの出会いは 、
親同士の友好関係であった 。
私の母上と喜八郎の母上が同じくのいちで
同じ学園に通っていた事から 、所謂親友という
関係であり 、それなりに仲良くしていた
父上は 、平民なんかと渋い顔を
いつもしていらっしゃったが母上を
傷つけないためかいつも偽物の笑顔を作っては
喜八郎の父上と難しい話をしていた 。
そんな父上を見てきたからか 、
私は少々自分勝手な母上とこの生意気家族が
どうも気に入らなかった 。
無論 、母上は嫌いじゃない 。
勿論好きだが 、綾部家と関わる母上は嫌いだ 。
喜八郎に強い嫌悪感を持ち始めたのは 、
五つか六つの頃だろう 。
あれから二年 、私は八歳になり
幾年にはあの有名な名門校の忍術学園に
忍たまとして入ることが決まっている
父上も母上も喜んでくれていた
だから 、私はその思いを然りと受け取って
忍術学園一の忍者になり美しく
そして可憐な忍者になってみせると 。
だが 、ひとつ気に入らないとすれば
その学園には綾部喜八郎も入学するということ
母上にだって言ってみたさ
「え?喜八郎くん?」
「そうよ!喜八郎くんも
同じ学園に入るみたいなの!
いっつも滝夜叉丸と一緒にいるみたいだから
あなたが守ってあげないとね!」
なんて 、笑えてくる返答だった 。
一緒に居るみたいだからって 、
あっちが勝手に着いてきてるだけです 。
なんて言ったら……….
「まぁ 、いいじゃないのよ
喜八郎くんと居る時の滝夜叉丸
お母様 、嫌いじゃないわよ?」
『なんですかそれは、、』
拗ねるんじゃないわよと頭を撫でられ
母上はその場を去った 。
私は喜八郎を嫌っている故 、それ相応の対応を
しているはずなのに 、その行動が嫌いじゃない?
親友の息子に怪訝な態度をするのに??
馬鹿には心底ついていけぬ
そう父上と愚痴をこぼしたのだった 。
今日も 、お稽古が終われば
いつもの時間がやってくる
「滝ちゃん 、あそぼ!」
『…..またか 、喜八郎』
「うん!!またきちゃった」
舌っ足らずなアホな言葉が右から左 。
すると今度は腕を捕まれ 、ユラユラと揺らす
『〜ッ…なんなんだよ!!』
そう思いっきり腕を振り解き 、振り向けば
目を大きく見開いてこちらを見つめる彼 。
本の中のお姫様のような可愛らしい顔立ちに
思わず見惚れるところで目を逸らせば 、
ぐりっと心臓をえぐられるような感覚になる
また 、恐る恐る彼を見てみれば
振りほどいた手を見つめながら
ぽつりぽつりと口を開く 。
「…ううん 、あのね!」
「滝ちゃん 、一緒にあのお山に登らない?」
『山?』
きっと 、山というのは
ここら一体を囲んでいるあのでかい山の事だろう
しかしあの山は 、サンゾクが潜んでいるらしく
危ないから近づいてはいけないと
父上と母上から言われていた 。
だけれども 、私には策があった 。
わざとその山付近まで行き 、それをなんとかし
母上達の耳に入らせ 、私ではなく…
喜八郎を怒ってもらい懲らしめてやろうと
きっと母上達は喜八郎のことを 、
「うちの息子を危険な目に合わせたヤツ」と
再認識して 、もう綾部家と近寄ることもないだろう
この作戦 、いいじゃないか!
「あそこね 、秋にすっごい綺麗な紅葉が咲いてね
景色も綺麗で 、とっても素敵な場所なの 。」
『…そんなの何処でだって見れるだろう』
「ううん 、あそこはちがう 。
きっと滝ちゃんも好きになるよ!!」
ねぇ行こう〜としつこくまたねだってくるのも
面倒なので 、少々気後れするが今回は私が 。
『….いいだろう 、あの山だろう?』
『仕方なくこの平滝夜叉丸が行ってやろう』
ふんっと顔を合わせずに言えば 、
応答が一切帰ってこないものだから仕方なく
そのものに目線を落とせば 、ぽぽぽと
林檎のように赤く染ったそのほっぺをしたまま
にこっと喜八郎は笑っていた 。
嗚呼…その笑顔 、眩しすぎるその笑顔が
私は大っ嫌いだ ___________
「ほんとに!!滝ちゃん大好きっ!!」
なんて言いながら抱きついてくるものだから
鬱陶しく引き剥がし山へと向かった 。
どれくらい進んだかわかってはいないが
空はすっかり橙色に染まり 、日も落ち
私の気持ちもすっかり落ちきっていた 。
そんな時喜八郎が 、あ!と大きな声を出した
「ここだよ 、滝ちゃん!」
手を引っ張られ走り出したその先には 、
本の中でしか見た事ないような大きな樹木が
一本 、二本と沢山あって 、秋分であったことで
綺麗な色鮮やかな景色が目の前に広がっていた 。
『…..綺麗だ 、笑』
つい零れてしまった 。
慌てて口元に手をやれば 、
横でぷはっと吹き出す声を聞いた
『笑うなよこの馬鹿!!!』
「あははっ!!滝ちゃんやっと笑ってくれたね!」
『….は?』
「滝ちゃん 、全然笑ってくれないんだもん
いつも怒ってばっか 、もしかして僕のこと嫌い?」
そんなの 、答えはひとつしかないじゃないか 。
でも 、喉まで出てきたはずの言葉が
上手く出てきてくれなくて 。
「滝ちゃん?」
『…….い』
「え?」
『…..嫌い』
「…..滝ちゃん 、」
止まろうにも私の口は達者なもので 、
止まることを知らなかった 。
『お前達はいつもいつも呑気に笑って 、
馬鹿言って迷惑ばかりかけて 、挙句には
私の母上までも奪って言って!!!』
「滝ちゃ…..」
『いいか!よく聞け!!!』
『私は 、お前のことが
ずっと大っ嫌いだったんだ!!!!!』
そう言って 、一度も振り向くことなく
私は走り出し 、そのまま山へ降りてしまった 。
どうせ 、いつもみたいに後ろを着いてくるだろう
あいつはそういう奴だ 。なんて安直な考えで
そのまま家に帰ってきてしまった 。
ふと後ろを見れば 、そこには誰も居なかった
それもそのはず 、ここは私の家 。
喜八郎の家はあっちなのだから 。
それに 、今更嫌いなヤツを心配して
どうしたと言うんだ 。
家に帰れば開口一番 、
「どこに行ってた」「何があった」と詰め寄られたが
少し離に散歩へ行ったのですが 、
迷子になっちゃって 。
そう言い訳をつくって言えば 、みんなが
安心したように僕を抱きしめた 。
すると父上が 、
「今日は疲れただろう 、
飯を食べて風呂に入ってもう寝なさい」そう言って
頭をひとつ撫でてくださった 。
でも 、何故だろうか
お風呂に入るとき 、ご飯を食べているとき
自身の手入れをしているとき
なぜか頭のなかにはあのときの喜八郎の笑顔と
あの悲しそうな顔が浮かんでくるのだ 。
そのせいで 、あまり眠れなかった記憶だ 。
翌朝 、目が覚めると何やら騒がしい気がした
何事かと思い 、家のものに聞いてみれば
「お坊ちゃま 、落ち着いて聞いてくださいね 。」
「お隣の綾部様の息子様が 、
昨日から行方が分からないそうなんです 。」
『………….は??』
綾部と平のもしもの話 。
コメント
5件
続きが早く見たくなるじゃないですか💢💢
すげえ、ほんとに小説読んでるみたい!!やっぱ語彙力あげる勉強しようと思いました...ゆきの読んで忍たまも見返そうと思う‼️
ほんっっっっとに謝らせてください。申し訳ございません。 言い訳になってしまうのですが 、 学生という身でありますので行事やテストにおわれてしまいこうも 出すのが先延ばしになってしまいました 。それなのにも関わらずこんな新作を書いてしまった部分も申し訳ございません!!! これから先は少し落ち着いているのでまた復帰して頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします‼️