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アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPを内包する旧██市立██小学校は、現在「アスベスト汚染および地盤沈下による倒壊の危険性」をカバーストーリーとして閉鎖され、財団の管理下にあります。対象の教室(1年1組および3年2組)の窓際から半径2m以内への立ち入りは、防護装備を着用した職員が単独で行う場合に限定されます。
収容区域内のカーテン(以下、SCP-XXXX-JP-1)は、常に専用のクランプで全開状態に固定されなければなりません。万が一、2名以上の人間が同時にカーテンの裏側に侵入した場合、即座にプロトコル「放課後のチャイム」を発動し、対象領域の物理的開放と隔離を実施してください。
説明: SCP-XXXX-JPは、特定の条件下で発生する空間位相の歪み、およびその起点となる小学校教室内の窓際領域の総称です。
本オブジェクトの活性化には、以下の3つの条件が必須となります。
* 対象: 8歳から12歳までの、相互に強い親和性を持つ児童。
* 状況: 2名、あるいはそれ以上の偶数名が、窓と閉じられたSCP-XXXX-JP-1の間に形成される閉鎖空間に侵入すること。
* 対話: 対象者間でのみ共有される、排他的かつ秘匿性の高い情報の伝達(「内緒話」)。
条件が満たされた際、対象者は現在の空間から消失し、SCP-XXXX-JP-2と呼称される異常空間へと転移します。SCP-XXXX-JP-2内では「対象者同士の心理的障壁の極端な低下」と「物理的個体境界の融解」が発生します。
インタビュー記録:事案XXXX-JP-07に係る定例面談
実施日: 20██/██/██
聞き手: ██研究員(児童心理カウンセラーとして偽装)
対象: 児童F(10歳)、児童G(10歳)
付記: 両名は同じ小学校に通っていた親友同士。休み時間中、教室のカーテン裏で過ごしているところを発見され、保護された。
[記録開始]
■■研究員: 今日は学校の話をしようか。最近、休み時間は何をして遊ぶのがブームなのかな?
児童F: うーん、最近は……普通にお喋りかな。ね?
児童G: うん。図書室に行ったり、たまにお教室の隅っこで二人でお話ししたり。
聞き手: お話し。それは楽しそうだね。どんな場所でお話しするの?
児童G: 普通ですよ。窓際の、カーテンのところ。あそこ、ちょっと狭くて落ち着くんです。
聞き手: カーテンか。少し窮屈じゃないかい?
児童F: ううん、全然。お日様が当たってて、あったかいし。
聞き手: そこで、どんな「内緒話」をしたのか、少しだけ教えてもらえるかな?
児童G: (笑って)えー、内緒話だから内緒ですよ。ね、██(児童Fの名前)ちゃん。
児童F: うん、秘密。でも、大したことじゃないよね。好きなアニメの話とか、給食の話とか。
聞き手: そうか。……今、何か身体が重かったり、変な感じがしたりはしないかな?
児童G: ありません。むしろ、前より元気かも。
児童F: 私も。あ、でも、最近すごく気が合うよね。私が「お腹空いたな」って思うと、██(児童Gの名前)ちゃんも同じこと考えてたり。
児童G: そうそう。あと、宿題のノートとか、どっちがどっちのか一瞬分からなくなっちゃうくらい。
聞き手: なるほど。仲が良いのは素晴らしいことだね。……じゃあ、そろそろ時間だ。今日はもうお部屋に戻っていいよ。
児童F: はーい。あ、先生、手伝って。
児童G: (児童Fと同時に手を差し出す)
聞き手: ……何をだい?
児童F: 手を繋ぎたいんですけど、袖が絡まっちゃって。
[記録終了]
補遺:物理的データの異常解析
上記のインタビューは一見して平穏なものでしたが、記録された物理データには致命的な不整合が確認されています。
重量計のデータ: インタビュー室の椅子には隠し重量計が設置されていました。入室時の記録では、児童F(34.2kg)と児童G(35.1kg)でした。しかし、対話が「カーテン」の話題に及んだ中盤以降、椅子Fの数値が徐々に減少し、逆に椅子Gの数値が増加。退室直前には、椅子Fは「0.0kg」、椅子Gは「69.3kg」を指していました。視覚的には二人が座っていますが、物理的質量は完全に一箇所に集約されていました。
熱源反応の統合:
赤外線カメラの記録では、対話中に両名の境界線が消失し、「二つの頭部を持つ一つの熱源」として描出されていました。特に、二人が手を繋いだ際、体温分布が完全に均一化され、個別の生命体としてのバイタルサインの判別が不可能となりました。
音声の指向性:
音響解析の結果、児童Fと児童Gの発言は、物理的には異なる位置から発せられているにもかかわらず、「一つの声帯から発せられた音声をステレオ放送のように左右に振り分けたもの」と波形が完全に一致しました。
調査員による注記:
彼女たちは、自分たちが「一人」になりつつあることに全く気づいていない。
むしろ、個々の存在が溶け合い、質量を共有し、一つの生命系として機能し始めていることを「気が合う」という言葉で肯定している。
回収された事案現場のカーテンの裾から、「24.5cm」という、子供用としてはあり得ないほど細長い「一足分の上履き」が発見された。
あれは二人で入るには狭すぎる場所だ。だから、あそこから出てくるものは、常に「一人」の形に整えられてしまうのではないか。
―― ██研究員
補遺XXXX-JP-M1:財団医学部門によるX線構造解析および臨床報告:
本画像は、事案07において曝露した児童Fおよび児童Gの胸腹部を、財団標準の広帯域X線スキャナーによって撮影・合成したものである。表面上、両名は独立した個体として振る舞っているが、内部構造においては不可逆的な「位相融合」が進行していることが見て取れる。
1. 骨格系における網目状接続(Suture-like Ossification)
画像中央の拡大図に示される通り、両個体の脊椎および肋骨下部からは、通常の解剖学では説明のつかない微細な繊維状の骨組織が突出している。これらはポリエステル繊維に近似した結晶構造を持ち、他方の個体へ向けて網目状に伸展することで、両個体を物理的に「縫合」している。この接続組織には神経末梢の混入が確認されており、一方への物理的刺激が他方へも同質・同量の感覚として共有される要因となっている。
2. 内臓器官の鏡像配置化と非対称な質量遷移
心肺機能の解析によれば、児童Fの胸腔内には副心臓(Secondary Heart)の形成が認められ、循環器系が事実上のバイパスを構築している。対照的に、児童Gの本来心臓が存在すべき領域は半透過状態の空洞へと変質しており、循環機能の大部分を児童F側の心臓に依存している。これは重量計データで見られた「質量の不均等な集約」と相関しており、物理的な生存権が一方の個体へと偏在し始めていることを示唆している。
3. 外科的介入に関する医学的見解
現在、両個体の生命維持システムは、この網目状の接続組織を介した高度な相互補完状態にある。特定の部位を切除、あるいは物理的に隔離しようとする試みは、両個体における多臓器不全および空間的な位相崩壊を招くリスクが極めて高い。医学部門の見解として、現時点での外科的分離は不可能であり、両名は今後「機能的な単一生命体」として収容を継続すべきであると結論付ける。
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