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ふぅ ーっと1つ息を吐いた。それは白くモヤモヤと消えていく。
世の中は寒い寒い冬景色。
道行く人も暖かい格好をしている。
でも、私が思うのは”寒い”じゃなくて、まるであの人が吐いた煙草の煙だなって思い出してた。
煙草を持つ手の形を思い出して、口元に持っていく。
まるで煙草を吸うように、冷たい空気を吸って吐き出す。
実際は全然違うけど、”あの人の吐く煙だ”って懐かしく思った。
会いたい。
また会いたい。
たばこは嫌いなのに。
あの人のことはまだ忘れられない。
大好きだった。
いや、まだ大好き。
そのせいで前に進めないでいる。
忘れなきゃって分かっているのに。
“ちょっとタバコ”そう言って彼がいつも入っていた喫煙所を見る。
居ないと分かっていながら少し期待してる自分がいた。
「えっ…。」
あの人に似た背中を見つけた。
私は思わず駆け寄って「あの…!」と声をかける。
振り向いたその人は…あの人ではなかった。
あの人では無いとわかった瞬間、煙草の匂いが一気に押し寄せる。
鼻と口を抑えて、すぐに走り去った。
目からこぼれる涙を、この寒さか、煙草の煙のせいにしながら。