日常・非日常②

目黒は知らないと思うけど。渡辺は、目黒が大大大好きだ。

言わないし、普段は目黒が先に愛してるって言ってしまう。

お気に入りの写真などは、箱に入れて、1LDKに隠してある。目黒も入ることはあるが、渡辺が箱を隠していることは知らない。

渡辺は、目黒の帰りが遅くなる日とかには、写真を見に行くことがある。

そこで、眠ってしまうこともある。

目黒が帰って来た。渡辺はいない。「下かな？」着替えもせず、携帯だけ持って、下りていく。

ソファにはいない。

ぐるりと見回す。部屋の隅に足が見えた。

隅っこラックにまだ何も置いてないはず。寝てるみたいで、動かない。目黒はそっと近づく。箱を大事そうに抱えて眠っている、

目黒ー翔太くん？

渡辺ー…。

目黒ー翔太くん？ただいま？

渡辺ーんっ…あっ…おかえり。

そう言いながら、箱を背中に隠す。ちょっと慌てている。

目黒ーそれ何？

渡辺ーな、何でもない。

目黒ー見せて？

渡辺ーだめ、あっ、変なものじゃない、写真だから！

目黒ーだったら見せて？

渡辺ーお、お腹空いた！

目黒ー晩ご飯作ってくる。後で見るから。

渡辺ー片付けて、すぐ行く。

目黒ー隠さないでね。

渡辺ー…。

箱の中は、目黒の写真ばかり。

それも、裏に一言書いてある。

◯◯のとき…かっこいい。

◯◯のとき…可愛い。

◯◯のとき…この角度好き。

などなど。

絶対、目黒に見せられない。

ちょっと小さい箱にばさりと移し替え、隠して家に帰った。

目黒ー隠して来た？

渡辺ー知らないも〜ん。

目黒ー晩ご飯食べたら行くからね。

渡辺ーいいじゃん、箱の一つくらい。

目黒ーそっくりその言葉返す。

渡辺ーいいじゃん！目黒が知らないものがあっても。

目黒ーだめ、2人の部屋だから、俺も知りたい。

渡辺ーやだ！だめ！

目黒ー勝手に行くもんね〜。

渡辺ーふん！好きにしろ！

目黒は、渡辺が箱を変えたと思う。一緒に来るか知らないが、探す楽しみが出来た。

目黒ー翔太くん、下行くけど？

渡辺ー行く。

目黒ー俺の写真？

渡辺ー何でだよ？

目黒ー見せたくないなら、俺のかなぁと。

渡辺ー調子に乗るな。

目黒ーまたまたぁ、俺のだったら、キス１つ。

渡辺ーふん？

下の部屋にやって来た。さっきの箱はそのまま置いてある。

だが、目黒は触ろうとしない。

渡辺が、ちょっと残念な顔をする。

だんだん近づいて行く。

渡辺は、我慢出来ずにそっとあるものの前に立つ。

目黒ー翔太くん、どいて？

渡辺ーいや。

目黒ーそこに置いたの？

渡辺ー知らないも〜ん。

目黒ーど・い・て？

渡辺ーやだ、目黒の写真なら、わざわざ隠さない。

目黒ーふ〜ん。じゃあ、何か特別な写真なんだ。

渡辺ー違う！あっち行け！

渡辺をラックに押しつけて、キスをしながら、DVDの箱を端から振る。

渡辺は、キスされながらも、両手で目黒の手を掴み阻止する。何箱目かで、かしゃかしゃ音がする。

ベストアルバム。渡辺がキスから逃れ、その箱を胸に抱え座り込む。

目黒が手を差し出す。

首を振る渡辺。何度も首を振る。

目黒ー翔太くん、一緒に見せて？

渡辺ーん〜ん。

目黒ーお願い。

渡辺ー触らない？

目黒ーん。

渡辺ー箱から1枚出しテーブルに置く。普通の写真だと、目黒は思った。渡辺がもう1枚置く。何となく違和感がある。

渡辺ーもう終わり！普通の写真だろ？

目黒ーうん、ありがとう。家に帰ろうか？

渡辺は大事に仕舞う。

今日は、渡辺は、風磨と、焼肉とサウナ。

LINEが来た。ちょっと遅くなると。

目黒は、下の部屋にやって来た。

目黒ー確かこれ。

振ると、かしゃかしゃ言う。

テーブルに全部出した。

目黒ー可愛いことを…。

目黒は、写真を見て、裏を見て、30分くらい読んでいた。

ふいに、渡辺の写真を集めだした。渡辺と同じことをしている。裏に一言書いている。

1時間くらいで、出来上がり、目黒の写真と混ぜてケースに入れ仕舞い込み、知らん顔で、帰って来た渡辺を迎える。

渡辺は下の部屋に行きたがった。行っておいでと送り出す。

しばらくして、箱を持った渡辺が走って帰って来た。

渡辺ー何これ！何これ！

目黒ーあっ、俺の箱触らないで。

渡辺ーばか言え！俺が写真入れてたやつだろ！

目黒ー何かあったの？

渡辺ーお前〜！俺の写真入れてた！目黒の写真見たな？

目黒ーふふふ、同じことした。

渡辺ーもう！恥ずかしい！

ソファでみの虫になる。

一言を読んでいる目黒は、優しい顔をしていた。あの顔こそ、写真に撮るべきだと思う。

目黒が、みの虫の横で箱を振る。

かしゃかしゃする。

渡辺が小さな声で、ばか、と言う。