テラーノベル
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王都に残ることになったレオンは、これでもかというほど不満そうな顔をしていた。
「……本当に、僕もついて行っちゃ駄目?」
「駄目に決まっているでしょう」
私は額を押さえて盛大にため息をついた。
「あなたは次期国王なのよ? 戴冠に向けた準備も、王妃派の残党処理も、山ほど仕事が残っているでしょう!」
「分かってる、分かってるけどさあ……」
レオンは盛大にため息をつく。
王妃を失脚させ、王都を取り戻したとはいえ、国の混乱がすべて収まったわけではない。次期国王となるレオンには、ここからが本番なのだ。さすがの彼も、それは理解しているらしい。
「……仕方ないか」
しょんぼりと肩を落とした――かと思えば。
レオンはぱっと顔を上げ、私の手を取った。
「じゃあ、バイオレッタ」
「な、なに?」
そのまま指先に唇を寄せ、にっこり笑う。
「全部終わったら、最後のダンス。忘れないでね?」
「――忘れろ」
横から、氷点下の声が割り込んできた。アレクだ。
「えー。なんで勝手に決められなきゃいけないのかな?」
「必要ないからだ」
「必要あるよ。ものすごくある」
「ない」
「ある」
「ない」
「子ども!?」
思わず突っ込む。その時――背後から、ふわりと柔らかい感触が抱きついてきた。
「ご安心ください、お姉さま♡」
「……フローラ?」
「卒業パーティーの最後のダンスは、私とお姉さまが踊るって最初から決まってますから♡」
振り向くと、ひまわりのような満面の笑顔。 ただし――男二人に向ける視線だけが、マイナス二百度で完全に凍りついている。
「えっ……いや、そんなの初耳よ!?」
「では、今決まりましたね♡」
「どういう理屈!?」
レオンがむっとする。
「フローラ、それはさすがに抜け駆けすぎない?」
「次期国王陛下にはこれから死ぬほど沢山のお仕事があるじゃないですか?」
「ぐっ……」
「どうぞ私たちの邪魔はなさらず、国のために働いてくださいませ♡」
笑顔なのに圧がすごい。
そんな二人の小競り合いを一瞥もせず、アレクが当然の顔で私の荷物を取った。
「行くぞ、バイオレッタ」
「え、ちょっと――」
アレクは自分のと私の重いトランクをひょいと持ち上げると、そのまま歩き出してしまう。
「待ってお姉さま! 私も参ります!!」
慌ててドレスの裾を掴んで追いかけてくるフローラ。 そして背後からは、レオンの必死な叫びが飛んできた。
『バイオレッターーー! ラストダンスだからね! 絶対に予約済みだからーーーっ!!』
「忘れろと言っている!!」
ひより
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#主人公最強
伊織
41
#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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#ギャップ
ひより
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「お邪魔虫は引っ込んでいてください!! お姉さまは私のものですーーーっ!!」
「……あなたたち、出発の瞬間までそれなの!?」
――こうして。 未練たらたらのレオンを王都に残し。 私とアレク、そしてフローラは、すべての因縁に引導を渡すため――ウィステリア領へと旅立ったのだった。
***
数時間後。王室の豪奢な馬車が、懐かしい屋敷の前で停止した。窓の外を見つめながら、私は小さく息を吐く。
ウィステリア伯爵家。私が生まれ育った家。そして――。私から、すべてを奪おうとした女がいる場所。
(ずいぶんと、遠回りをしてしまったけど──帰ってきたのね)
馬車を降りる。私の右隣にはアレク。左にはフローラ。さらに後方には、王都から同行してきた近衛騎士団の騎士と捜査官たちが控えている。
その物々しい一団を見て、屋敷の使用人たちがざわめいた。やがて、玄関の扉が開く。
「……まあ」
聞き覚えのある声、ベラドンナだ。その背後には、母親の陰に隠れるようにして、義弟のナルシスがオドオドとこちらの様子を窺っている。
「随分と突然のご帰宅ですこと、バイオレッタ」
「ごきげんよう、お義母様」
私は完璧なカーテシーであいさつし、にっこりと微笑んだ。
ベラドンナの視線が、私の後ろへ向かった。
「……ずいぶん大勢でのご帰宅ですこと。自分の家へ帰るだけなのに、護衛までぞろぞろ連れてくるなんて」
「ええ、お義母様。本日の目的は、ただの『帰省』ではありませんもの」
「……なんですって?」
ベラドンナの眉間に、初めて険しい皺が刻まれる。 私はすっと右手を挙げ、後ろに控えていた首席司法官へ視線を送った。
法服を纏った司法官が一歩前へ進み出る。
そして――。バッ!!
純白の羊皮紙に刻まれた――王室の公文書が、ベラドンナの鼻先へ突きつけられた。
「国家反逆罪共謀、ならびに禁忌魔術行使の容疑に伴う――捜索令状である!」
「なっ……!?」
ベラドンナの顔から、さっと血の気が引いた。後ろのナルシスに至っては、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
呆然とするベラドンナを見つめ、私はにっこりと微笑んだ。
「――ただいま、お義母様。この屋敷の離れも地下室も――隅から隅まで、徹底的に調べさせていただきますわ」
コメント
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うわあ、ついにこの瞬間が来たか! レオンの未練とアレク&フローラの牽制がもう面白すぎて、出発前のやりとりだけで笑ったよ。でも一番グッと来たのは、やっぱりあの「ただいま、お義母様。家宅捜索です」だよね。ここまで積み重ねてきたバイオレッタの成長と決意が、たった一言のカーテシーと微笑みに全部詰まってる感じがして、鳥肌立った。伏線の回収が本当に気持ちいい!