テラーノベル
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そのとき、リンがゆっくり私の手を握った。 小さな手だけど、すごく熱い。
「のあ……きみの言葉が、ぼくの中の“苦しみ”に届いてる。
でも……もう一つだけ必要なものがある」
「必要なもの?」
「ミルの“本当の力”」
ミルがびくりと肩を震わせた。
「リン……それは……!」
「隠しても意味ないよ。
ミルは“甘味の主”なんかじゃない」
私は驚いてミルを見た。
「え……ミルって、主じゃなかったの……?」
ミルは少し悲しそうに笑った。
「私はね……この国の“甘さだけを集めて生まれた化身”なの。
本当の主は……ずっとリン一人だった」
リンが続ける。
「ミルはぼくの“甘さ”。
苦塊はぼくの“苦さ”。
どっちも……ぼくが生みだしたんだ」
私は耳を疑った。
(じゃあ……ミルはリンが生んだ存在……?
甘い気持ちが形になった……?)
ミルは静かに言った。
「だから私は、リンの苦しみと戦えない。
甘さだけで苦さを押さえつけようとしたら、壊れちゃう」
リンは私の手を握る力を少し強めた。
「でも——のあ。
きみが間に入ってくれたら……きっと両方をつなげる」
ミルも私のもう片方の手を握った。
「のあちゃん……お願い。私たちを、つないで」
その瞬間——
リンの“苦さ”でできた苦塊が、
ミルの“甘さ”が、
私に向かってすべて集まるように光りだした。
体が熱くて、でも冷たくて、胸の奥がしびれて——
「う、うわ……!」
「のあ、しっかり!!」
「のあちゃん、落ち着いて!!」
私の心に、甘いものと苦いものが同時に押し寄せてくる。
混ざり合いながら、一つに溶けていくみたいに。
そして——
灰色に変わった苦塊が、ゆっくりと形を変え始めた。
リンの苦しみの塊。
ミルの甘さの光。
そして私の言葉。
三つが混ざり合うように、渦の色が変わっていく。
黒から灰色へ、
灰色から白へ、
そして——
透明に。
「……え……」
苦塊は、まるで霧が晴れるように消えていった。
塔の揺れも止まり、部屋は静寂に包まれる。
リンは膝から崩れ落ちた。
「終わった……のあ……ありがとう……」
ミルは嬉しそうに笑いながら、涙をぽろぽろ落とした。
「のあちゃん、本当に……すごいよ……!」
私は息を切らしながら、二人を見つめた。
(こんなの……すごいなんて言えないよ……
私だって怖かったし、何もわからないまま叫んだだけなのに)
でも。
リンが、ミルが、私の手を握ってくれている。
その温かさが、胸にしみた。
コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!ミルの正体…めっちゃ驚きました!つぎで…最終回かな?続き楽しみにしてます!!