テラーノベル
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R「はぁー……」
こっそり借りたあの本を読み終えた。
“恋”への憧れが強くなる。
けれど、どう始まるのか分からない。
もう一冊読めば、少しは分かるだろうか。
その為には、棚の鍵を開けなければならない。
こっそり返して、また借りる…
R「っあ」
書庫で会った家臣を思い出した。
かのんに頼めばいい。
だが、大勢の家臣の中から一人を見つけ出すのは至難の業だ。ましてや、雑務係はその日その日でやる仕事が違う。
R「爺、かのんって奴知ってるかー?」
爺「んーー…存じ上げませんね。その方がどうかなさいましたか?」
R「書庫で会った家臣なんだけど、有能でさ…」
爺「またお会いしたいという事ですか?」
R「ま、まぁ…そうだ……」
鍵を開けてもらう為なんて言える筈がない。言葉を濁しながら視線を逸らした。
爺「では探しておきますので、お待ち下さい」
R「頼む」
朝御飯を終え、庭先で剣術を習う。
剣を振るっていると、外側から声がしてそちらに視線を向けた。
R「あ…」
かのんがいる。
すでに、爺が探し当てたようだ。
思ってたより早かったな…。
しかし、家臣が複数見守っているこの状況で鍵の事を頼めない…。
K side
若様に呼ばれていると聞き、足早に庭先に向かった。
ブンッ…
空気を裂く音が耳に届く。
若様が木刀を振っていた。
迷いのない太刀筋に、思わず目が奪われる。
さすが…。
汗に少し濡れた髪が額に張り付き、それすら様になって見える。
凛とした横顔。
見惚れていると、
家臣「何の用だ」
護用の人に鋭い目を向けられてしまう。
K「失礼しました、若様が私を呼んでいると聞きまして…」
R「あ…」
若様と目が合う。
俺の顔を見ると、一瞬固まったように見えた。
喜んでいるような、困っているような、妙な表情だ。
来る頃合いを間違えただろうか…。
K「若様、お呼びでしょうか」
動揺を見せないように声をかける。
少しの間があって、
R「…かのん、振ってみろ」
急に木刀を持たされた。
K「…!剣術は…自信がありません…」
R「いいから、やってみろ」
剣術は幼い頃からやっているが、点で駄目だった。それでも、城に仕える立場だから合間を見て練習してはいるが…、一向に上達しない。
少し渋りながらも構えてみせる。
R「違う、腰が引けている」
若様が後ろから肩を軽く押し、足の位置を直す。
R「こうだ、振ってみろ」
K「はい」
深呼吸をする。
えいっ…!
ブンッ
K「…っ」
木刀は見当違いの方向へ逸れ、勢いに引っ張られるように身体がぐらりと傾いた。
K「わっ…!」
危うく転びそうになり、慌てて足を踏み直す。
やってしまった…。
こんな、城を守れないような剣、若様がどう思うだろう… 。
周囲からの視線も刺さるように痛く、身体が硬直する。
R「……っ、ふ……っ」
声がする方にはっとして視線を移す。
若様が顔を背け、 肩を震わせていた。
K「…?」
R「ふ…っ、ははっ……何だ今の…!」
とうとう堪えきれなくなった若様が声を上げて笑った。
K「っ……!」
顔が熱くなる。
K「申し訳ありません、剣術は苦手で…」
R「ははっ…そんな頼りない振り方、初めて見た」
いつもはもう少しまともにできるのに…。
ブンッ
もう一度振ってみる。
けど、今度は勢い余って足元がもつれ、木刀を抱えたままくるっと半回転してしまった。
R「ぶっ……!」
若様が完全に吹き出した。
R「駄目だ……っ、お前、面白すぎる……!」
若様はお腹を抱え、目尻に涙を浮かべながら笑っている。
R「っ…かのん、気に入った。今晩私の元へ来い」
K「…」
俺は突然の言葉に、すぐには返事ができなかった。
若様の部屋に伺うなど、身分が違いすぎる。
周囲に何を言われるか分からない。
でも、若様の命令を断れる立場ではなかった。
K「…分かりました」
深く頭を下げ、その場から立ち去る。
持ち場へ戻る途中、心を落ち着ける為に呼吸を整えていた。
そういえば…若様の笑った顔、初めて見た。
時折お見掛けする若様は、いつも思考の読めない冷たい表情をしていたのに。
胸の奥が少し騒がしい。
あの笑顔が、なかなか頭から離れなかった。
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コメント
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うわ、2話も読んだよ!鍵を開けてもらいたいのに剣術を教える流れになって笑ったけど、あの後の「今晩私の元へ来い」はちょっとドキッとした…!かのんが若様の笑った顔を初めて見て胸が騒ぐラスト、すごく良かった。二人の距離がこれからどう変わるのか、本当に気になる〜!