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絵里は流産してしまった・・・。
健吾と茜が病室に駆け付けた頃、絵里は病室で眠っていた。
幸せそうな寝顔―――
しかし、絵里は大切なモノを失っている。
その姿を見ていると涙が止まらない・・・。
泣き続ける茜を、健吾は支えるように車へ連れて帰った。
茜は自分を責めていた。
あの時、絵里を無理矢理にでも引き止めておけば・・・。
健吾とのクリスマスにばかり気を取られていた自分を責めた。
後悔ばかりが募っていた・・・。
健吾と車に戻った茜はケンに電話をした。
ケンと茜が連絡を取れないままなら、伝える必要があるんじゃないかと思ったから・・・。
ケンに電話をすると、ケンは全て知っていた。
そして電話口で『俺のせいなんだ・・・』と呟く。
理由を聞き、茜は頭に血が登った。 そして、ケンに暴言を吐いた―――
「ふざけないでよ!!
絵里に流産させたの?!
今病室で、麻酔かけられて腕に点滴の針刺されて寝てるよ!!
ケンが避妊しないで子供作って、挙げ句の果てに妊婦にキレて流産させるなんて・・・。
知らなかったとはいえ、許せない。」
・・・止まらなかった。
同じ女として、絵里の痛みや苦しみは分かる気がする。 愛する人の子供を失うなんて、耐えきれない絶望を絵里に与えたと思う。
ケンは茜の言葉に対して、何も言わなかった。
翌日の昼間、茜は絵里の病室を尋ねた。病室へ近づくにつれ、足どりが重くなる。
絵里の顔を見るのがつらかった・・・。
《咲坂絵里》とゆう名前が書いてある病室の前で茜は深呼吸をした。
トン、トン、
軽く扉をノックすると、中から『はい』とゆう男の声がした。
「失礼します。」
声をかけながら扉を開けると中年の男性がベッドの絵里と話していた。
その男性は、『絵里の父です』と茜に挨拶する。
『わざわざお見舞いにきてもらってすいません。
じゃあ、私は帰るんで・・・。』
絵里の父は茜に声をかけると、絵里にも何か話して病室を出ていった。
茜は絵里のベッドの横の椅子に腰掛け、絵里に差し入れのケーキや雑誌を手渡す。
『ありがと!
新しいこの雑誌見たかったのー。 病室って、テレビ見るしかなくて暇なんだよね。』
絵里は笑顔で茜に言う。
その笑顔が痛々しかった・・・。
「無理しないでいいよ。」
茜は絵里に言い、絵里の手をにぎった。
「つらかったね・・・。
力になれなくてごめんね。」
涙をこらえて絵里に謝った。
その言葉を聞いて絵里は首を横に振り、茜の目を見た。
『気にしないでいいの。
もう、仕方ない。
それに、堕ろすしかない子供だったの・・・。
失った時は悲しかった。
でもね、両親が心配してくれたり、こうやって茜が来てくれて立ち直ってきたの。
ほんとに来てくれてありがとう・・・。』
茜は絵里にかける言葉が無かった。
そして、バッグの中から小さな袋を出し、
「少し遅いけど、クリスマスプレゼント。」
と袋を手渡した。
絵里は驚いた顔で袋を受け取り、『ありがと』と言いながら袋を開けた。
中にはクリスタルの数珠が入っている。 前に茜がデパートで買った数珠だった。
「これね、《恋愛》の意味のクリスタルなの。
お守りみたいな感じで、茜も同じのを付けてるんだぁ。」
服の袖を少しめくり、手首の数珠を見せる。
絵里は少しさみしそうに数珠をつけた。
「・・・。
気に入らなかった??」
確かに趣味とか好みとかあるし・・・。
『ううん、違うの。
嬉しいよ!
でもね・・・。
実はさっき、ケンに距離あけようって言ったんだ。
だから、なんか恋愛って聞くとさみしくなって。』
「それでいいの?」
絵里は少しの沈黙の後、『うん。』と一言だけ言った―――。