進路希望調査票の「第一希望」「第二希望」が、いつまでたっても埋められない。
公立高の三年生・安藤敦は、部活も勉強も「そこそこ」、これといって夢も特技もないまま受験の時期を迎えてしまった。
クラスには「この大学に行きたい」と言い切れるやつもいれば、偏差値だけで志望校を決めてしまえる器用なやつもいる。
家に帰れば、なんとなく進学を期待している親の空気。
「やりたいことがない」まま、どこかを選ばなきゃいけないのは、自分だけなんじゃないか――そう思えてくる。
そんな敦に、担任の西尾先生が言った。
「夢は今なくていい。
代わりに“やりたくないこと”から決めてみろ」
そこから敦は、塾講師、コンビニ店長、一度社会に出てから進路を変えた大人たちと話をしながら、
少しずつ「自分が無理せず続けられそうな生き方」を探していく。
立派な夢も、ドラマみたいな成功もない。
それでも――やりたいことがないなりに、「この道ならまあ悪くない」と思える進路は選べるのか。
夢がなくても進路希望を出さなきゃいけない高校生と、かつてそうだった大人たちに向けた、等身大の進路物語。