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「……やめたいって、だけど、どうしてなの……?」
KILLAは、今が最も売れている時期でもあった。
「嫌なんだ…もう。あそこでバンドとしてやっていくことが……」
苦しげに口にして、カイが顔を両手で覆う。
いつものごう慢さが少しも覗えない彼は、雨に濡れる子犬みたいにあまりにもか弱い存在にも感じられて、
思わず手を伸ばして、肩をそっと抱いた。
「ごめん……つまらないことを言ったりして……。あんたに、こんなことを言っても、仕方がないのにな……」
「ううん、そんなことないから」と、首を横に振る。
「あなたの力になるから……」肩の手に、ギュッと力を込めて、
「だから、大丈夫だから」と、心から励ますようにも伝えた。
「……このままで、少しだけ、そばにいてくれないか……」
「うん…」肩を抱いたままで、もう一方の手を、膝に乗せられた彼の手にそっと重ねた。
沈黙の中で、彼の手にぐっと力が入り、拳に握られたかと思うと、
重ねた掌の上に、ぽたりと涙が落ちた──。
「カイ……」
潤んだ瞳を見つめ、名前を呼びかけると、
「ごめん…」
とだけ、か細い声で返された。
「……どうしたらいいのか……もうわからないんだ……」
微かに震えて見える彼の身体を、たまらずに両手で引き寄せて、衝動的に胸の中へ抱えた。
「カイ…私にできることがあれば、何でも言って?」
どうにかしてあげたい一心だったけれど、私に身を預けてしばらく無言でいた後に、彼はふっと顔を上げると、
「ごめん…」と、もう一度くり返して、
「……いい、もう。……今日は、迷惑をかけて、悪かった……」
そう話して、それ以上の介入をやんわりと拒んだ。
「カイ……いいの? 本当に……」
心配が拭えない私に、彼は首を縦に一度だけ振って、スッと身を引いた。
「私でよければ、頼ってくれていいから……」
「ああ…」とだけ、彼が答える。
「帰る……急に、呼び出したりして、ごめん……」
ベンチを立つ彼に、釣られるように自分も立ち上がる。
「ねぇカイ、本当に頼ってもらって構わないから!」
行きかける彼に念押しで伝えると、歩き去ろうとしていた後ろ姿が、一瞬小さく頷いたようにも感じられた──。