テラーノベル
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あの日を境に、悠が頻繁に俺の家に来るようになった。
平日の夜も休日の昼もお構いなしだ。
ズカズカと上がり込んでは冷蔵庫のものを勝手に食べるし、自分のものを置いていくし、録画してた番組勝手に観るし……。
「……いつまで続けるのこれ」
「飽きるまで?」
まるで自分のベッドかのようにふんぞり返ってゲームをする悠に、思わずため息ができる。
考えてみると、こんなに悠と一緒にいる時間は、初めてかもしれない。
幼い頃から俺は隼兄にずっとくっついてたし。
今までは言い合いばかりしていたけど、こんなに長く居座られては、流石に文句も尽きる。
「…昨日作ったカレーあるけど…食う」
「え、まじ?さんきゅ」
…と、こんな感じで料理を振る舞うくらいにはなってしまった。
なんでこんなことになってんだよ…。
「美味いじゃん、お前料理上達したんじゃね」
「うるせー…」
小さなテーブルに2人分のカレーを並べて悠と食べる。少し前なら想像もできない変な状況だ。
「………家庭科課題のカレー…」
無意識にポツリ、と呟いていた。
小学生の頃、隼兄と悠が家庭科の課題で、自宅でカレーを作ったことがあった。学年が違う俺には関係ないけど、隼兄と料理したくて手伝ったんだっけ。
「あ〜お前が手伝うって言って聞かなかったやつな!邪魔すぎて俺がキレたんだっけ」
「ふ…そうそう、俺もムキになってカレーほったらして2人でめっちゃ喧嘩したやつ」
「懐かしい〜お前危なっかしいんだもん 。下手だし」
「は、うざ」
吹きこぼれそうになった鍋を、俺が慌てて触って火傷しちゃったんだっけ…
そういえばあの時の悠、すごい形相でキレながら俺の指冷やしてたっけ…
思い出しながら、少し笑ってしまう。
「……あの頃から好きなの、隼のこと」
「……あ〜…どうだろ、気づいたのは中学上がってからかな…」
「ふーん……男が好きなの?」
「うん……って!なに聞いてんだよ」
我に返って慌ててカレーをかき込む。
いや俺も、なに普通に答えてるんだよ。
悠と喧嘩をせず普通に会話するの、何年振りだろう。案外普通に話せていることに、自分でも驚く。
悠だって、俺が隼兄…というか同性が好きってわかったのに、気まずくないんだろうか。
ただ、普通に接してくれるのは少しありがたい気もした。
「彼氏とかいたことあんの?」
「?!」
驚いた拍子にご飯粒が変なところに入った。
ゲホッゲホッとむせながら、慌てて水で流し込む。
「…けほっ…、なんでお前に教えないといけないの」
「いないんだ」
「……っ」
むかつく!!!
「いたことあるし、彼氏」
「あら、 意外〜」
「黙れよ…」
本当はいないけど。
からかうように笑われて、ふつふつと怒りが湧いてくる。バカにされて、面白くない。つい、意地を張ってしまう。
「ガキンチョだった瑞樹に恋人ね〜」
「は?!2歳しか変わんねーだろ」
「彼氏か〜…ちゅーもした?」
「あ、当たり前…」
「えっちも?」
「っ?!……そりゃあ…うん」
「ふーん……」
強がって返してしまったが、正直パニック状態の脳内。
や、やばい。嘘ってバレてる?
ここで見栄張ってるってバレたら、1番ダサいやつじゃん。
必死に取り繕うと、早口で止まらない俺の言葉。
「馬鹿にすんな、ひ、人並みに経験してるし」
「ふーん…」
「隼兄にキ、キスしたのだって、好きなのもあるけど、どっちかって言うと よ、よっきゅーふまん?ていうか、別に誰でもいいって思って、……」
悠の返事がない。
「お、おい…なんか言えよ」
「……じゃあ俺がしてやろうか」
「へっ…………なにを」
「キス、よっきゅーふまんの解消も」
「……はぁ?!」
思わず顔をあげる。悠は冗談なのか本気なのか、少し怒っているようなよく分からないをしていた。
「誰でもいいんだろ、じゃあ俺は?隼と違っていまフリーだよ」
「へ…?」
「どう考えてもこっちのが健全だろ」
「けんぜん…?」
思考が追いつかないでいると、ぐいっと抱き寄せられ、強引に唇を奪わる。思わず固まる俺。
「っん…ぅ、ふ……」
強引なキス、貪るような、求められるような初めての感覚。息が苦しくて涙が溢れる。
どうにか残っている腕の力でドン、と悠の胸を押す。
「はは、顔真っ赤」
「…るさ……」
意地悪く笑う悠。
「隼で抜いたりした?」
「はぁ?!…するわけないだろ」
「そうなの?じゃあなにオカズにすんの?」
「っ、いわない……」
首筋にちゅ、ちゅとわざと音を立てながらキスが降ってくる。恥ずかしくって、逃げ出したい。それなのに、 同時に期待している自分がいた。
自分のそこが固くなっているのに気づき、慌てて隠そうとする。
「……勃った?」
「…っ」
「ふは、キスだけでこんななの…?」
「うるさ……!」
「彼氏とする時もこんななの?」
「わ…わかんな…(彼氏いたことねーもん!)」
「ふ、なんだよわかんないって笑」
くしゃっと眉を下げて笑う悠。
あ…こんな風に笑う顔初めて見た。
そんなことを考えていると、腕をぐいっと引っ張られ抱き寄せられる。
「っちょ…っと、まって!」
「……なに?やめる?」
パッと手を離される。
こっから先はお前が選べよ、というように。
なんでこんなことになったんだろう。
目の前にいるのは隼兄じゃない、大嫌いな悠。でも不思議と嫌悪感はない。
それよりどうしても、この先を知りたい気がして。
「……やめない」
「へぇ〜…、じゃあ移動しよっか」
ひょいっと抱き上げられる。びっくりして思わず抵抗するが、そのままぽいっとベッドに寝かされてしまった。
「ほ、ほんとにすんの…?」
「は?お前がやめないって言ったんだろ」
言ったけど……!
ぐるぐると考えてる間に、俺は再び唇を奪われた。
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