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約3,000文字あります。
喘息描写があります。
〚月島side〛
「んっ……」
目覚ましの音が鳴り、目が覚める。
初夏とはいえ、まだ少し肌寒い。
僕は、寝ていたい気持ちを抑えて起き上がった。
今日も朝練があるし、準備しないと。
「っ、けほッ……」
そう思いながら深呼吸すると、少し息苦しかった。
咳もでる。
仕方ない、今日は薬を飲んでおこう。
学校で酷くなったら困るしね。
ある程度準備を終えて、リビングへ降りる。
今日の朝ごはんは和食かな。
「おはよう、蛍」
「おはよ……けほっ…」
「あら、喘息?久しぶりねぇ〜」
「ん……別に、これくらいなら大丈夫」
「そう?あんまり無理しないようにね〜。忠くんに言っておく?」
「……大丈夫」
山口に言うとめんどくさ………くはないか。
でも、なんか嫌だし。
伝えなくてもすぐ気づくだろうしね。
僕は、奥底に燻っている不安を無視して準備を進めた。
しっかり薬も飲んで、カバンの中の吸入も確認した。
忘れ物はない。
「行ってきます、」
「はーい!気をつけてね!」
ヘッドホンを付け、いつも通り通学路を歩く。
しばらくすると、山口が現れた。
「おはようツッキー!」
「おはよ……っけほッ…」
「……ツッキー喘息気味?体育あるけど大丈夫?」
「別に平気。体育も部活も、大丈夫だから」
「なら、いいけど……無理しないでね!」
「ん、」
前言撤回。
少しだけ面倒くさい。
母さんもだけど、心配性なんだよ。
もう子供じゃないんだし、自分の限界ぐらい分かるし……
そう思い、少し拗ねながらも学校へ向かった。
朝練が終わってから放課後になるまで、僕は特に問題なく生活できた。
体育の後から、息苦しさは増して咳も多いけど……
そんな僕を見て山口は、心配そうな顔をして時々声をかけてくる。
でも、小中学校の時みたいに過剰に心配してくることはないから、その点まだいいかな。
「っ、けほっ…すぅーッ、ふぅー………ッ」
「ツッキー、大丈夫?やっぱり部活辞めとく?」
「いや、大丈夫だから」
「そっか……無理、しないでね…!」
「ん、」
いや、大丈夫なわけがない。
正直、すごく苦しくて、歩くのもやっとなくらいだ。
でも、見学するのは、なんか悔しい。
最近は体も大きく丈夫になってきて、発作が出てもそこまで酷くはならない、はずだ。
いざとなれば吸入だってあるし、山口もいる。
(大丈夫、大丈夫……)
僕は、ひたすら自分に言い聞かせた………
「みんなアップは終わったか?
10分後にランニング始めるから水分補給とかしておけよ!」
「今日はグラウンド5周だから外に集合だべ!」
「「アッス!」」
澤村さんと菅原さんから指示出しをされて、僕を含めた部員たちは動き出す。
(ランニング……持つかな……)
アップだけでかなり疲れたし、息切れも激しい。
でも、ここまで来たんだし………なんか、悔しい。
走らないほうが良いだろうけど、プライドが邪魔をして言い出せない。
でもまぁ、良いだろう。
本当に無理だったら途中でやめればいい話だ。
「よーい、スタート……!」
休憩が終わり、清水さんの合図で皆が走り出す。
いつも最後尾を走っているけど、それでもいつもより少し遅めに……。
念の為だ。
山口も察して、合わせてくれた。
無理しなくてもいいのに……
走ってる最中も、できるだけ関係ないことを考えて、苦しさに目を向けないようにする。
そうしたほうが、精神的に楽だから。
(ようやく一周か……)
あ、白い鳥だ。
形的にシラサギかな。
あ、トンビと出くわした。
って、お互いに避けてる。
動物って、人間より賢いって思う時あるよね。
今とかまさに………
苦しいなら、嫌なら、怖いなら、安全なところへ逃げればいいのに。
こういう無駄なプライドは、時折自分を切り刻む。
ほんとバカ。
「っ、はッはぁッ…ふ、ぅッ……ひゅっ……ッ」
空から地面へ視線を戻すと直ぐ、自身の荒い呼吸を自覚してしまった。
まって、……本格的に、苦しい…ッ……
(き、つッ……!)
いよいよ耐えられなくなって、僕は3周目半ばで立ち止まってしまう。
直ぐ後ろには、周回差で変人コンビが迫ってきている。
2人とも慌てふためいてるし。
急に立ち止まるのは良くないって分かってるけど、まじで動けない……
「はぁッはッ…ひゅ~ッ……けほッ、げほッ…ッ!」
「ツッキー!」
しゃがみ込んだ僕を見て、山口が駆け寄ってきた。
来なくていいから、吸入持ってきてよ、っ!
「や、まッ…はぁッは、ぁッ……きゅ…にゅッ……けほッ!」
「!わかった!えぇっと……日向!
ツッキーの背中擦っててあげて!
影山は先輩呼んできて!」
「わ、わかったっ!」
「お、う……!」
やっぱり山口の指示は的確だな。
さすが、慣れてるだけある。
意外と日向って指示されたら冷静なんだよな。
これが兄の力か。
今度兄ちゃんに会ったら感謝しとこ。
「つ、月島ぁっ!だ、大丈夫か!?」
叫びながら日向が来て、背中を擦ってくれる。
ありがたいけどうるさいよっ!
影山は……全力疾走で先輩呼びに行ってるな。
先輩も気づいて動いてくれている。
ぁー、今めっちゃ迷惑だ、僕……
そう、思えば思うほどに、苦しさが増していく。
「ッ、ひゅーッけほッげほッ…はぁッはぁッ…けほッ……ッ!」
「月島!大丈夫か!?」
「日向変わるべ!水お願いできるか?」
「わ、わかりましたっ!」
「月島。落ち着いて、自分のことに集中しろ」
「周りのこと気にしないで大丈夫だからな〜」
先輩たちの声に耳を傾けながら、必死で呼吸を整える。
けど、そう簡単には整ってくれないよね。
まっじで苦しい。
頭が痛い。
喉が締まってて、視界が熱い。
目の奥がキーンとしてて、自分の鼓動ばかりが聞こえる。
痛い。苦しい。寒い。熱い。
いろんな言葉が浮かんでは消えていく。
(くる、しいッ……!)
目を閉じかけたそのとき___
「ツッキー!お待たせ!」
ようやく山口が戻ってきた。
遅いわクソがっ!(理不尽)
「先輩、ありがとうございます!変わりますね!」
「あぁ、」
「ツッキー?聞こえる?吸入準備できてるから、できそうだったら言ってね」
その後も山口がテキパキと動いてくれて、無事吸入をすることができた。
まだ苦しいけど……ギリ動けるくらいには回復したかな。
「も……大丈夫……けほッ……」
「はい、水。ゆっくり飲んでね、」
「ん…………ぁ、あの………迷惑かけて、すいません…」
「いや、それは大丈夫なんだが……」
「つ、月島……大丈夫、なのか………?」
「月島………」
先輩達の後ろから、日向と影山が心配そうにこちらを覗いてくる。
(落ち着かないんだけど………)
「大丈夫って言ってるでしょ……馬鹿はバカらしく騒いどけよ、バカ」
「んなっ……!バカバカうるせぇよ!」
「んだと月島ボケェ!」
「ふっ……ほんっと単細胞………w」
「はぁ……ったくお前らは………」
「でもでも!月島、一応元気そうでよかったべ」
「まぁ………それなりに、落ち着いたんで」
「その、月島なんで?」
「………喘息あって。そこまで酷いわけじゃないし、最近は症状も出てなかったんですけど……」
「今日は朝から少し苦しそうだったもんね。普段ならこんなこと無いんですけど………」
「ほんと、すみません」
「いや。月島が悪いわけじゃないから、気にするな」
「そーそー!でも、できれば言っといてほしかったけどな〜?」
「気をつけます………」
「よしっ!それじゃあ練習再開な!月島は無理せず、今日は出来そうだったらマネ業手伝ってくれ」
「「はい!」」
もっととやかく言われるかと思ったけど、意外とすんなり終わって良かった。
やっぱり烏野って………
「あったかい………」
「ん?ツッキーなんか言った?」
「なんでもない」
「そーお?」
「しつこい山口」
「ごめんツッキー!」
(烏野に来て、よかった……)
なんて。
今はまだ、言えるわけないけどね。
約3,000文字お疲れ様でした。
個人的にはこの話、結構好きです。
でも、やっぱり吸入の描写難しい………
感想や♡待ってまーす!