テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
過呼吸表現があります。
約3,500文字あります。
心の声がかなり続きます。
赤葦くんの性格暗めです。
赤葦くんのトラウマのお話です。
《赤葦side》
夜は苦手だ。
独りだということを、突きつけられている気がするから。
俺は昔……とは言っても、小学生の時だったかな。
教育虐待みたいなことをされてた。
暴力を振るわれたわけでも、言葉で攻撃されたわけでもない。
ただ、プレッシャーと両親の雰囲気に、俺が負けただけ。
テストでミスをしたり、成績で5を取れなかったりした時に両親が出す、がっかりした雰囲気が苦手で。
溜息を聞きたくなくて。
俺が勝手にプレッシャーを感じて、怖がって。
プレッシャーから体調を崩して、迷惑をかけて。
うちは昔から共働きで、家に俺だけなのが当たり前だった。
それなのに、いつしか一人が怖くなってていた。
両親が中々家に帰ってこないのは、仕事が忙しいからだ。
それを、俺が期待に応えられないからだって勘違いして。
独りを感じて。
夜寝る時の真っ暗な部屋と、静かな家が怖くなって。
それで、暗所恐怖症になって……
自分でも笑ってしまう。
呆れるしかない。
中学生の時に両親とちゃんと話し合って、和解して、プレッシャーによって体調を崩すこともなくなった。
でも、暗所恐怖症だけは治ってくれない。
映画館やプラネタリウムは苦手だし、寝る時も完全に電気を消すことができない。
暗い場所にいると、動悸が止まらなくて、怖くて、過呼吸になって。
自分なりに回避はしてるけど、学校で出たら困るよな。
迷惑は、絶対にかけたくない。
そう、思っていたのに………
「雨止まないな〜」
「雨の日って、テンション下がるよなぁ…」
「そ、そんなことないだろ!
ほら、元気出せ〜?」
「雨って、弱そうじゃん…?
なんか、元気でない……」
「いやいやいや、そんなことよりバレーしようぜ!」
「ちょっ、赤葦も手伝って!」
「は、ぁ…………ッ………」
「って……赤葦?」
「っ、あ………え?ぁ……な、なんですか?」
「あぁ、いや……」
「赤葦、体調悪い?大丈夫?」
「問題ありません。すみません。
ボーっとしてしまって……」
「いや、それなら大丈夫なんだけど……」
「木兎さん、トスあげますから、練習しましょう」
「トス………バレー……?……………やる!!!」
「おっ、ナイス赤葦」
「さすあか〜」
「猿、今なんて?」
「ん~?さすが赤葦で、さすあか」
「あー、理解」
先輩達が話しかけてきているのに、全く反応ができなかった。
それほどまでに、俺の頭は不安で支配されていた。
今は放課後の部活中。
普段ならさっきみたいなことは有り得ないし、頭はバレーでいっぱいになる。
でも、今日だけは、例外だ。
今日の天気は雨。
しかも土砂降り。
テンションが下がるし、なんとなくさみしい感じがして苦手だ。
そしてなにより…………
停電が、怖い。
これだけの大雨だ。
雷も鳴っている。
いつ、停電が起きてもおかしくない。
そんな事もあろうかと、精神安定剤はさっき飲んでおいた、けど…………やっぱり、
「こわいッ……………」
「ん?あかーし何か言った?」
「ぁ、いえ。ただの独り言です」
「?……そっか!」
怖い、けど………迷惑をかけるわけにはいかない。
(バレーのことだけを、考えよう)
そう思って、そこから十数分は問題なくバレーに打ち込めた、のになぁ…………
突然鳴り響いた激しい雷鳴とともに、体育館が闇にのみ込まれる。
停電だ。
部員達の困惑の声と、激しい雨の音。
そして、
「あぁッ……はッ、はぁっはぁッ……ふッ……!」
自分の体から発せられる、激しい鼓動と呼吸。
聞こえる音が全て、悪魔の囁きのように聞こえる。
落ち着けと叫んでいる頭も、不安と恐怖に侵略されていく。
(やばい、息が、できないッ……!)
激しい呼吸のまま、喉元を抑えながらしゃがみ込む。
(ひとりで、なんとかしないとッ!)
迷惑は、かけられない………
(せめて、バレないようにッ………!)
そう思って、口を押さえながら呼吸を整えていた。
でも、それに気づかない先輩達ではない。
「あかーし?………赤葦っ!」
「どうした木兎!?」
「あ、あかーしがっ!」
「!取り敢えず明かりを確保するぞ!」
「尾長!ゆっくりでいいから部室まで行って、ランタン持ってきてくれ!」
「はいッス!」
「尾長がくるまでは、スマホでなんとかするぞ」
「木兎は赤葦のそばに居てあげて。
できれば居場所教えてくれるとうれしいかも」
「わ、わかった!」
「木兎なら声でわかるなw」
「だなー」
俺、絶対、迷惑だ……
どうしよ……どう、しよう………ッ!
「!……あかーし、落ち着いて。
大丈夫だからな」
「ぼッ…はッひゅーッ……くと、さんッ……はぁッ……?」
「そーそー。
一緒にいるから、大丈夫だぞー!」
暗いのと、視界が涙で滲んで顔はよく見えない。
でも、木兎さんが太陽のような笑顔で笑っていることは、わかる。
あぁ、眩しい。
俺とは、正反対だ。
「赤葦〜、落ち着こうな〜」
「過呼吸か………一旦体を起こすぞ」
「わかった。
木兎、そのまま背中さすってやれ」
「わかった!」
「はッ、かひゅッ……だぃ、じょッ……ぶッ…けほッ!」
「どこがだよ!
今は、自分のことにだけ集中しとけ」
「赤葦、俺に合わせて、ゆっくり深呼吸するぞ」
先輩達が素早く対応してくれて、いつもより早く呼吸が落ち着いた。
丁度尾長がランタンを持ってきてくれて、少しだけ明るくなる。
これくらいの明るさなら、大丈夫、だ………
「すいません……
練習、止めてしまって………」
「いやいや、どうせ停電で練習できなかったし、大丈夫だぜ?」
「赤葦、体調は大丈夫なのか?」
「それは、はい。問題ないですこのあとの練習も、できます」
「でも、大丈夫なの?」
「過呼吸起こしたばっかりだし………」
「大丈夫ですっ、!」
「でも……」
「過呼吸には慣れてるので、大丈夫です」
「………暗所恐怖症、か?」
「っ………」
「図星、だな。言っておいてくれればよかったのに」
「そう、頻繁に起こるわけじゃないので。本当にすいませんでした。
喉渇いたので水道行ってきますね」
本当に申し訳ない。
一人でもなんとかできたはずなのに、迷惑をかけてしまった。
それに、これ以上は、泣いてしまいそうだ。
精神安定剤も全然効いてくれない。
(あぁ、本当に嫌になる)
一方的に先輩たちを突っぱねて、外に向かおうとしたら、引き留められた。
今まで口を開かなかった、木兎さんによって。
「ねぇ、赤葦。迷惑、かけたと思ってるんでしょ」
「!………急にどうしたんです?」
「言い方変えるね。
赤葦、迷惑かけて申し訳ないって思ってるんでしょ」
「……そりゃあ、思いますよ。誰だって、」
「ぁー、違う!そーじゃなくて……えぇっと……… あ!
あかーし、なんとかできたはずだ〜とかって、自分のこと責めてるでしょ!」
「………質問の意図がわかりません。
それを聞いて、何の意味が?」
(あぁ、この人は……… )
痛いところを突いてくるな。
普段なら適当にあしらって逃げるけど、今の俺にはその余裕すらない。
木兎さんだけなら軽く突っぱねて立ち去れる。
って、思っていたのに。
「そうやって突っぱねるってことは、図星なんだな」
「木兎は、一人で抱え込むな!って言いたいんだろ?」
「そう!それ!!
あかーし、いっつも一人でなんとかしようとするんだもん!」
「っ………別に、必要があれば相談します」
「それじゃあ駄目!
ちっちゃい事でも相談して欲しいの!」
「っ…………も、……放っといてください!
一人で大丈夫です!」
先輩たちも加勢してきて、どんどん苦しくなってく。
迷惑かけたくなくて、本音が出せない。
独りは嫌なのに、一人で良いと言ってしまう。
(もう、やだ………)
「ねぇ、あかーし。
俺達ね、あかーしに甘えてほしいの」
「………は、ッ?」
「そうそう!
赤葦はチームメイトであり、大切な可愛い後輩だからな」
「木兎くらい甘えてくれたっていいんだよ〜?」
「さるの言う通り!」
「木兎は少し甘えすぎだがな」
「わ、鷲尾ひどい!」
「っ………でも、」
「別に、過呼吸の理由も問いただしはしない。
ただ、苦しいのを一人で我慢しないでほしいんだ」
「一人でいたい時はそう言ってくれていいし、一緒にいたい時は遠慮なく言ってくれていいしね」
「だから、一人で抱え込むな、」
「俺達は、あかーしの仲間だからな!」
その言葉を聞いたら、心の中の黒いものが薄れていった。
目の奥から、あたたかいものが自然と込み上げてくる。
「っ、ゔぅッ……ふッ、…~ッ!」
あぁ、この人達は、なんて暖かいんだろう。
何も聞かず、何も強制せず、ただただ寄り添ってくれて……
あー、涙が止まらないや……
「ああああ、あかーしぃ!?!?!?!?!?!?」
「ちょっ……木兎!なに泣かせてんだ!」
「え!?俺!?!?!?!?!??」
「ぃ、えッ……そのッ……うれ、しくてッ………」
「あ、りがとう……ございますッ……!」
冷たいはずの空気が、なんだか暖かいや……
一人だけど、独りじゃない。
そう、思えたのは、俺の大切な宝物だ。
終わり方がぁ…………
心情表現入れると、長くなっちゃうんですよね。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます!
ここからは余談で。
ついこの間、友達が過呼吸になったんですね。
私、初めて過呼吸というものを目の当たりにして。
たくさん調べて書いてきたはずなのに、どうしたら良いか本当に分からなくて、ただひたすら背中を擦るしかできなくて、大丈夫って声をかけてあげることすらできなくて………
やっぱり、知識として知っているだけじゃ足りないんだなって改めてわかりました。
あとやっぱり過呼吸の表現むずいッ!
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!