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離婚します  第一部

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離婚します  第一部

16 - 第16話 督促状と義母の入院

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2024年10月29日

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税務課から封書がきたとのLINEには、既読は付いたけど返事はなかった。なんだか、頭にきた。


〈開封するけどいい?返事ないならオッケーだということにするよ〉

送信!


怒りスタンプも付けた。

既読あり、返事なし。

ったく!!

ハサミで開封する。

【督促状】だった。


えっ!

税金だけはちゃんと払ってたと思ってたんだけど?

旦那に電話して問い詰めようかと思ったけど、時間も遅いし出ない可能性もある。

もしかして役所の手違いかもしれないし、明日確認してからにしよう。


ん?

この前突然帰ってきたのはこのこと?

だったらあの日に払ったとか。

じゃあ手違いというか行き違いってことね。

自分勝手に解釈して眠りについた。


寝付く頃には、予約した劇団のステージが頭に広がっていた。




次の日。

10時の休憩時間に、封書に書かれた問い合わせ先に電話してみる。


「あの、こんな封書が届いたんですけど、ホントに支払ってないのか確認したいんですけど」

『しばらくお待ちください』


保留の音楽が流れる。

ガチャっと切り替わる音、担当者に変わったのか。

そしてしばらくの時間。


『お待たせしました、小平進さんですね、はい、滞納されてますね、かれこれ1年ほどになりますので、そちらに届いている支払い書には、滞納の金額も含まれてます』

「え?1年分も?去年も?」

『はい、4回に分けて支払っていただくことになってますが』

「わかりました、すぐに支払います!」


なんてこと!

私は払わなければならないお金は、キチンと払いたい性格。

旦那もそうだと思ってたのに、何故滞納?

支払いの振り込み用紙を見る。

これは所得税。

もう一つは?あれもそうかもしれない。

車?固定資産税?住民税?

あれ?会社員だから天引きのはずでは?


「さて、仕事するよ!」


貴君にポンと肩を叩かれた。

あれこれ考えているうちに休憩時間が終わってしまった。


「あ、あのさ…」

「なにか?」

「お昼休み、ちょっと抜けていい?用事ができてしまって」

「あ、いいよ。1時間だけど、急用なら仕方ないから慌てないで。事故でもされたらいけないから」

「ありがとう」


一旦帰って、あの封書も開けてみよう。

そして…

どういうことか、キッチリ話してもらおう。




昼休み。

とりあえず、急いで帰宅する。

レターラックからあの封書を取り出す。

封を切ろうとした時、スマホが鳴った。


『もしもし?未希さん?』

「え?あ、はい、そうですけど」


この声、誰だっけ?

公衆電話からって。


『お元気そうでよかったわ、あのね、ちょっとお願いがあるんだけど』

「はぁ、なんですか?」


お義母さんだった。

うわ、こんな時になんの話だろう?

嫌な予感しかしないんだけど。

そんな私の心の声も無視して、話し続ける。


『私ね、入院したの。だからね、うちに来て家事を手伝ってちょうだい』

「は?え?入院って?」

『ちょっとね、腰を痛めてしまって、大したことはないのよ、だから心配はいらないの。でもね、うちの人、何もできない人だから心配なのよ。毎日とは言わないから』

「え、そんなお義姉さんは?」

『あの子は働いてるから、無理言えないでしょ?』

「いや、私も仕事…」


途中まで言いかけた時


『とにかく、お願いしますね。あ、進には言わなくていいから。心配させたくないのよね』


かっちーーーーん!


「…」


ダメだ、何か言おうとすると怒りが爆発しそうだ。

いつもこうだ、私よりずっと近くに住んでるお義姉さんには気を遣って、なんでもかんでも私に言ってくる。


『とりあえずそういうことだから、お願いね!あ、お見舞いはいらないから』


ブチッと電話は切れた。

んぁーーーーーーっ!!

思わずスマホを投げつけそうになった。

これは、旦那にぶちまけないと気が済まない!

私は怒りで震える手でスマホを操作する。


ん?

LINEがきてる。

旦那だ!


『母さんが入院したって、姉さんから連絡がきた。困ってるみたいだから行ってやってくれ』


ぶっちーーーーーん!!!

頭の中で何かが切れた音がした。


何かを壊してしまいたい衝動に駆られて、クッションや雑誌を手当たり次第に投げてしまって、タロウがびびって2階へ走って行った。


「ハァ…ハァ…」


息が上がる。

それどころじゃないだろ!!

滞納は?!

勢いで開けかけていたもう一つの封書を開けた。


【督促状】

だった。



時計を見ると1時少し前、急いでも10分ほど遅れてしまう。

貴君に電話して、少し遅れることを伝えた、その分残業するからと。


『慌てなくていいから、落ち着いて、ね、大変なことがあったみたいだけど、そういう時こそ、落ち着いてゆっくり行動することが大事だよ』

「ありがとう、気をつけて戻るから」


深呼吸をして、わざとゆっくり車を走らせる。

音楽だけは、ボリュームを上げた。

何がなんだかよくわからない状況で、頭がクラクラする。

工場に着くと、貴君が社長と話していた。


「すみません、遅くなりました」

「あー、大丈夫だよ、小平さんの分もコイツが働くらしいから」

「はいはい、やりますよ、だから社長、邪魔しないでくれますかね」


ボンネットを開けて作業していた貴君が答える。


「じゃ、しっかり働いてくれたまえ」


社長は店舗の方へ戻って行った。


「なにかあったんでしょ?」

「え、わかります?」

「3ヶ月あまり一緒に仕事してるんだよ、それくらいわかるよ、声の感じとかで」

「そう…ですね、あの、お義母さんが入院したって連絡があって、それでその…」

「そうなんだ、大変だね?休みとか時間の調整なら遠慮なく言ってよ、なんとかするから」

「ありがとうございます」


優しい言葉に泣きそうになる。

税金の滞納の話は出せなかった。

そんなお金にだらしない旦那のことは、貴君には言いたくなかった。


「さて、遅刻した分も頑張らないと」

「よっしゃ、頼むよ。そうだ、今日はこの部品の交換の仕方と、コツを教えるからおぼえて」

「はい、お願いします」


頭を切り替えた。

仕事だ、今はとにかく。

いつもより丁寧に教えてくれる気がした。

私のことを気遣ってのことかもしれない。

細かいことまで指導されてるうちに、聞き逃すまいと集中して、いつのまにかゴタゴタのことは頭の隅に追いやっていられた。


そうやって仕事が終わると、適度な疲労感と充実感に包まれる。


「さてと、今日はここまでだな。帰ろうか」

「はい、ありがとうございました」

「色々大変かもしれないけど、仕事の時は集中してね、ミスもだけど怪我しないようにね」

「あ、はいわかりました」


頭がリセットできた気がする。

ありがとう、貴君。


まずは税金の話を旦那とする。

それから…行きたくないけど、一回くらいはお義父さんのところへ行って、家事をするかな。


あー、落ち着いて考えたら、それだけのことだ。


税金を払う。

お義父さんの家事を手伝う。

頭に血が上って、ものすごくごちゃごちゃした気がしたけど。

ここは感情を抑えて順番に片付けることにしよう。


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