TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

「どういうこと?何故、税金滞納ってことになってるの?」

『……』

「説明してくれないと、私、わからないんですけど?」

『去年、会社の方針が変わって…』

「もうちょっとハッキリしゃべって!」


もぞもぞとくぐもった声で聞き取りにくい。


『去年から55過ぎたやつは、会社員扱いじゃなくなった、個人事業主として自分で全部やることになって、だから税金とか、わからなくて…』

「は?60までは働けるんじゃなかったっけ?」

『働けるけど、形態が変わるというか、それで営業成績で歩合制になるし』

「それならそうと、その時に話してくれればよかったのに」

『…言えないよ』

「どうして?」

『給料がガクンと下がったうえに税金の支払いとか…』

「税金は会社員でも個人事業主でも払わなきゃいけないよね?」

『未希は、俺の給料がいいことも結婚の条件だったから、給料下がったなんて言えなかったんだよ』


そうだった。

出会った当時、旦那の給料はわりとよかった。

中の上くらい。

だから、欲しいものもたくさん買ってくれたし、これなら結婚しても安泰だと思った。


特に、最初の結婚でお金に困ったから、シビアにお金のことは条件に入れてた。

結婚してからは、生活費は毎月10万、口座に入れてくれてた。

ローンも税金も保険や電気ガス水道、全て旦那の口座から引き落とされてたから、10万あれば余裕だった。

私の給料は全部私が自由に使えた。


「税金ってさ、前の年の収入で計算されるから高いよね?そのあとで確定申告で取り戻すんじゃなかった?領収書とかためといてさ」

『そうなの?』

「会社から、そんな説明なかったの?」

『あったような?』

「とにかく、生活費の口座から払っとくから」

『うん』


「それから、実家のこと、進君の家のことなんだから、自分でやって」

『…うん』

「私も仕事してるんだからね」



はぁー、情けない。

税金のことがわからないならわからないで、誰かに聞くとかあるでしょうに。


そういえば、生活費の口座から下ろすのがめんどくさくて、自分の給料から食費とか出してたっけ。

じゃあ税金の分くらいは残っているはず。


カードで残高照会をする。

【125386】

じゅうにまんごせんさんびゃくはちじゅうろく。

え?足りないけど?


税金は86万。

生活費も振り込んでなかったの?私が何も言わないことをいいことに、振り込んでなかったようだ。


あー、もうっ!

洋子が言ってた通りだ。

お金のことは、すごいトラブルですごいストレスだ。

そして旦那はここにいないことがさらに、ストレスだった。

文句言いたくてもここにいないなんて!



「足りない分は私が立て替えておくから、返してね」


そうLINEした。

既読もつかねー!ムカつく。


我が家の財布は、基本的に旦那は旦那。

小遣い制ではない。

その方が、何か買ってもらう時にありがたみがあるから、そうした。

それに、家庭のお金を全部預かるのは難しい気もしたし。

結構稼いでる旦那だったから、安心していた…んだけど。


「失敗したな…」


独り言が出てしまう。

仕方ない、払っておいて取り返そう。

これからの税金のことは、きちんとやってもらおう…あれ?

ガクンと給料が下がったと言ってたけど、大丈夫なのか?うち。

家のローンもあるのに。


その督促状は見当たらなかったから、払ってるんだろう。

さて、気分を変えよう。

貴君と観に行く劇団のことでも考えないと気が滅入る。


ぴこん🎶


『未希さん、お元気?あのね、お父さんは糖尿だから、食事に気をつけてあげてね。それからお風呂はぬるめだから。よろしく!』


はぁ?!

お義姉さんからのLINEだった。

だったら、自分でやればいいのに。

既読したけど返事はしなかった、少しの抵抗だ。

お風呂に入って寝る。

こんなにイライラしてたら寝れるわけない、けど寝れた。



次の日。


「おはよう。どう?お義母さんの容態は」

「おはようございます、なんか、腰を痛めただけで体調は大丈夫みたいです。ただ、お義父さんの家事を少し手伝わないといけないみたいで、一度、行ってきます」

「了解、いつにする?」

「そうですね、明日にでも…」

「もう3ヶ月過ぎてるから有休も取れるはずだよ」

「ありがたいです」


旦那よりずっと気を遣ってくれるし、優しい貴君。

惚れてまうやろ!って


「古いな」

「ん?」

「いえ、なんでも。ちょっと社長に明日休めるか確認してきます」


そういうことならと、有休が1日もらえた。

税金も払わなくちゃいけないし。


「あのさ、今日、昼飯、一緒にどう?」


いつもはおにぎりかお弁当を持ってくるんだけど、今日はうっかり忘れてしまっていた。


「え?いいんですか?今日はお昼ご飯用意するの忘れちゃってて」

「行こう、疲れてるように見えるから美味いもん食べて元気出して」

「はい、美味しいもんですね」


傷ついた心に寄り添ってくれる、そんな性格なんだ。

なのにこの歳まで独身だなんて、不思議だと思った。








離婚します  第一部

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚