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23
#執着
さぶれ
1,448
部屋に入ると、春樹が冷蔵庫を開けた。
「ビールでも飲むか?」
さっそく冷えた缶ビールを出してくる。
ソファーに腰を下ろして、彼から手渡された缶から一口を飲んだ。
「鷹騰社長って、彼女いるんだね……」
そうして、ひと息をついて呟くと、
「そりゃいるだろう。あれだけイイ男なんだから」
当たり前のように返された。
「そうだよね……」と、小さく頷く。
バーに連れて行ってくれたりもしたのに、普通に彼女がいたんだ……と、思う。
だけど、別にバーに連れて行かれただけで、なんにも起こったわけでもなかったんだし、そんなのきっと社長の方にとっても、大したことでもないんだよね……とか、うだうだと考えていたら、
「……でも、本当に美人だったよな。さすが、鷹騰社長だよ」
春樹がさっきの彼女のことを蒸し返した。
「まだそんなこと……社長にも目移りするなって、そう言われたばっかりじゃない」
あの時の、気づかうような鷹騰社長の言動が思い出されて、ちょっとだけ嬉しくもなる。
「ああ、そうだけど……でも、美人は美人だろうが」
一方で、場の空気を読む素振りもない発言が、春樹から返ってきて、鷹騰社長との中身の違いをまたにわかに思い知らされたような、そんな気がした……。
「なぁ、舞……」
ソファーをにじり寄った春樹が、私にグッと顔を近づけてくる。
キスされるのかと思ったら、なんとなくしたくないような気持ちが襲った。
「こっち向けって…」
顎が持たれて、唇が迫る。
「ん……」
口づけられて目を閉じながら、ふとあの鷹騰社長はどんなキスをするんだろうと思った。
きっと今頃はあの彼女と……。そんな想像が頭に浮かぶと、なぜだか複雑な心境にもなるみたいだった。
「……何考えてるんだよ、おまえ……」
ぼーっとしていたのを察したらしく、春樹がキスをやめて尋ねてくる。
「えっ、何も……別に……」
まさかキスの最中に、他の人のことを考えてたなんて言えるわけもなくて、しどろもどろでごまかして顔をうつむけると、
「……俺と、したくないのかよ?」
彼にひどく不満げに言われた。
「そういうわけじゃないんだけど……」
「けど、なんだよ?」
露骨に面白くなさそうな口ぶりの春樹に、
さすがに自分が悪かったようにも感じて、「ごめんね……」と謝った。
「……ちゃんと春樹のことだけ考えるから、機嫌直して」
ちょっとだけ上目づかいで、そう口にすると、
「……何、言ってんだよ、おまえ…」
春樹が照れて赤くなり、
「可愛いだろ、バカ……」と、囁きかけてきた。
そんな風に言われたら、なんだかこっちまで顔が火照って赤らんでくるみたいだった。
コメント
1件
うわ、もう読み終わっちゃった……今、心臓がバクバクしてる。舞が春樹とキスしてる最中に、まさか鷹騰社長のこと考えちゃうなんてね。その“複雑な心境”って描写がもう、すごくリアルで胸が締め付けられたよ。でも最後、春樹が「可愛いだろ、バカ」って照れてるところ、一気に空気が柔らかくなって、ほっとした。感情の揺れ方、めちゃくちゃ丁寧に書かれてるね。続き、すごく気になる!