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page1 Hello World!


俺だってずっとただのガキで、こんな腐った世界で生きていくなんて夢にも見なかった筈だ。


道化を演じ、無知なふりをして生きていく。どうやら、これがこの世界で身を守り敵を責め立てるための一番手っ取り早い方法らしい。

とうの昔にどこかで聞いた話だが、「平和を愛するものは平和に愛される」。その話は正しいように聞こえた。

それは大層、素敵な話だ。


『あの子』は未だにそれを信じてるらしく、きっとこの世界で生きていくには向いていないのだろう。


だから俺達が、その歪みを直してみせよう。

歪むのは世界か、君か、はたまた俺達か?


これは終戦の日、俺達が誓いを立てた日までの記憶だ。





────四年前


カーテンが、風に揺られている。

窓から差し込むまっすぐな朝日に目を細めると、一つ大きな伸びをした。


するとそれは、すぐに視界に飛び込んだ。

魔術の本が山積みにされたデスクの上に、朝日のスポットライトを浴びた一通の手紙。


差出人は…ああ、ボス…?


ボスといえば、離れた街にある本店限定バームクーヘンの買い出しという名のパシリにもわざわざご丁寧に書簡を綴る人だ。

やはり面倒事の予感しかしない。


「ナイフナイフ…」


ナイフまでは置いておいてくれなかったので(当たり前だろう、何せあの「ボスの重要文書」なのだから)、とりあえずがさごそと引き出しの中を漁ってみる。


「お、あった」

「そろそろ片付けねえと…」


無駄に丁重にシーリングされた封筒をナイフで切る。


しかし綴られていた言葉は意を反するものだった。


「はぁ…?俺が令嬢の教育係?こんなまともな教育受けてない15の子供にやらせることじゃねぇだろ…」




俺は凸もり。…とまあ、このマフィア組織ではこう呼ばれている。なんせ戦争孤児なもので、とある少年に拾われて今に至る。

いわば秘密警察と呼ばれる役目も背負っているこのマフィア組織だが、任務が無いときは本当に国家の機密組織なのか…と真面目に疑ってしまう程には全員仲が良く平和である。尚任務は物騒である。

ちなみにこの片目は幼い頃、戦争真っ只中のときに怪我を負い失い、義眼で埋めたが、少々恥ずかしいので未だ包帯で隠している。

正直拾われる以前…子供の頃の記憶は朧で、殆ど思い出すことができない。


俺はどうやらフィジカルというものに恵まれているらしく、喜ばしいことに重要戦闘員と幹部の称号まで貰ってしまった。


ここのボスは珍しく女で、先月九つになったばかりの娘さんもいる。そんなご令嬢─おどろく嬢の教育係を任せられてしまった。


幸い今は隣国との情勢はこちら側が優勢で、戦勝も目前だそうだ。

そのおかげで俺が戦場に出ることなんて久しかったからの指名だろうが、子どものお守りなんてこれまでに類を見ないから俺なんかに務まるのか不安で仕方がない。




任務の内容は至って淡白で、


【 Ⅰ 外出を許可してはならない】


【 Ⅱ 外の話はなるべく控えること】


【 Ⅲ ボスの仕事を知らせてはならない】


これだけを伝えられ、殆ど俺任せである。

あまりにもざっくりすぎる。

本当によく分からない。


圧倒的な信頼からかな。いやあ、照れるね。

ハッ、まさかあの人が?ふざけんな。だから子供のお守りはわかんねえって。


…まぁ、こんなことを言ったところでボスからの指令は絶対なのだから、断りようがないのだが。




トボトボと自室を発ち、そのまま重い足取りで令嬢の部屋へ向かう。今思えばこちらの、例の令嬢がいる屋敷の離れへ来るのは初めてだろうか。


ここまで来るのに、ほとんど人とすれ違うことはなかった。彼女も、毎日誰もいないこの静かな廊下をひとりで歩いていたのだろうか。組織の重要な情報の漏洩を防ぐ為とはいえど、年頃の彼女がこんな思いをすることになるだなんて、やはり戦争とは恐ろしいものだ。



部屋の前で一呼吸置いてから、紅色の塗料が塗られた樺のドアを軽く叩く。

ビーズとリボンでデコレーションされた表札には、「おどろくのへや」とポップで拙い手書き文字。




「失礼します。今日から貴方の教育係になりました、凸もりと申します。えーと」


言葉に詰まるなあ…。

言うのも何だが、俺はこの組織ではそこそこ若い方だ。

だから自分より年下の人間と話す機会なんてそうそうないし、更にあのボスのご令嬢と来た。

全く頭に台詞が思い浮かばないのだ。

これでも初対面の人と話すのは結構得意な方ではある。



「どうしたの?」



桃色のフリルの袖が扉の隙間から覗く。

首を傾げて部屋から出てきた彼女は、母親に似た赤髪と美しい翡翠の瞳を輝かせてこちらを見つめた。


「あ!おじさんはじめましてだ!」



そして何より驚いたこと。

もふもふの耳、尻尾、八重歯。

彼女は狼娘であったのだ!


…いやいやいや。待てよ。彼女の姿に呆気を取られていたが、俺はおじさんではない。



「おどろくはおどろくだよ!おどろくそーゆーオシゴトタイド…?あんまり好きじゃないから、もっと気さくに接してほしいな。」




あのボスの娘さんってことだから気難しいお姫様なのかなと思ったが、案外俺と気が合いそうだった。

何だか俺とよく似た霊圧…?を感じる。



「じゃーお言葉に甘えちゃおっかな〜」


「おどろくちゃんって呼んでいい?」




「むしろそうよんでほしいのだ!よろしくねしぇんぱい!」


ほう…しぇんぱい…!

その珍しく面白い響きに躊躇う。


「よろしくねおどろくちゃん!」


ああそうだ、これだけは言わなければ。


「…ねえおどろくちゃん、俺、おじさんじゃないよ?」


「あっ…ごめんなさい…なんとなくそう見えたから…」


確かに服装が年相応でなかったのは認めよう。緑のシャツにブラウンのベスト、赤のネクタイは15の子供が着るには余りにも年不相応だ。普通パーカーとか、丈が余るシャツを着るのだろう。

加えて彼女は6つも下の子である。おそらく年上の背丈のデカい男は皆おじさんに見える年齢だ。

だがしかし、俺におじさんは流石にどうかと思うんだ。

…うん、気をつけよう。服もちゃんと選ぶようにしよう。流行りのちょっとお洒落なのを着よう。


懐かしい記憶、これが彼女と俺の出会いだった。






長々とした文章でしたが、ここまで読んでくださり光栄です。

拙い文章ですが、雰囲気だけでもお好きになっていただけると幸いです。

さて、下記のものはページに挟まっておりましたメモ。よろしければご活用ください。

是非是非、最後までお付き合いいただけたら。





【凸もり】

〈本名〉…不明

〈容姿〉…緑のカッターシャツ、ストライプ柄のブラウンのベスト、赤のネクタイ

または赤のパーカー

〈役職〉…おどろくの世話係、重要戦闘員(幹部)

〈年齢〉…15

〈一人称〉…俺

〈二人称〉…君、他人行儀だと貴方

〈好きな食べ物〉…良い肉が沢山入ったシチュー

〈嫌いな食べ物〉…しゃびしゃびの麦ご飯


追.

重要戦闘員(幹部)に加えておどろくの教育係の二役もこなすことは過労かと思いきや、戦場にあまり出る必要が無いのとおどろくと話すのが楽しく案外悪くない。部屋に本が増えてきたのでそろそろ片付けなければ。


【おどろく】

〈本名〉…おどろく

〈容姿〉…桃色のフリルワンピース 狼 水色のリボン 瞳の色が翡翠色で綺麗だった

〈役職〉…マフィアのご令嬢

〈年齢〉…9

〈一人称〉…おどろく、あたし

〈二人称〉…あなた、君

〈好きな食べ物〉…おっきいステーキ!

〈嫌いな食べ物〉…ピーマン、グリーンピース

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コメント

3

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最&高✩

ユーザー

神!!!!!!!!!!!!!!!語彙力無さすぎてこれしか言えない…

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