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感情の起伏が激しいのか、一転して素直な謝罪の言葉を口にしたザンザスに対して、レイブはやや恐縮しながらも言って返す。
「と、とんでもないよ! 僕が無垢の魔力をこのナイフに込めちゃったら起こった事だから…… 謝ってもらう事じゃ無いような? でしょぉ? …………それにしても何なのかなぁ? 金属って硬くてさぁ、普通だったら大きくなったり縮んだりしないよね? コレって一体ぃ? やっぱりザンザスさんが言う通り呪われた武器、呪物とかなんじゃないだろうかぁ? でもぉ、だったら村の皆が僕達四人に持たせた理由は何なんだろうかぁ? そんなに危ない物を、大切にしなさいっ、ってぇ…… うーん? 判らないなぁ?」
腕を組んで頭を捻るレイブに続いて声を出したのは師匠バストロの奥さんだったらしい、無表情なフランチェスカである。
「ウチにいるシパイもそれと似たナイフを後生大事に腰から下げていたよ、師匠であるアタシに対しても一度も抜いて見せてくれる事が無いくらいにはね…… ナイフを与えられて親や家族と離されて育てられる子供達、ゴライアスの子、だったっけか? その言葉、アンタ等四人の存在自体に意味があるのかもしれないよね? ゴライアス…… か? 一体どんな意味なんだろうね?」
この疑問には一つきり残った左目をきつく閉じたままで周囲の声を聞いていたバストロが返した。
「ゴライアス、うん、ゴライアスかぁ…… 昔、師匠からも聞いた事があるようなぁ……」
「えっ! そうなのバストロ? アンタ!」
「う、うん、ええっとぉ、何だったっけなぁ? 確か、『アクマ』を開放する為には『巨人族』の叡智(えいち)が無くては成らない、とか何とかぁ? そんな話をしてくれた時にな、ゴライアス? とか、ゴリアテ? そんな言葉を言っていた様なぁ、いなかった様なぁ~?」
この別居状態の夫婦の会話に割り込んだのは小さな黒猪(こくちょ)、ペトラの声である。
『ん? ゴライアスってゴリアテなの? ゴリアテだったらアタシ昔聞いて知っているわよ! 遥か昔、太古に存在した神様たちの総称だった筈だわよ! 言い伝えでは神様たちってこの世界の有り様を決めた、作り上げた存在とか言われているのよ? 特に数体の巨神、魔神たちは世界に生きる全ての命を導く為に、苦心惨憺(くしんさんたん)していたんだって、そんな伝承が残っているわよ?』
バストロが即座に返す。
「ほぉー! 神様って言えば、レイブが通訳してくれるアスタロト様と同じじゃないかぁ! んじゃぁ、信用出来る存在って事だな! あの御方(おんかた)は、尊(たっと)い尊い、いと尊い存在に他ならないからなぁ~! んじゃ、レイブは悪くないし、ゼムガレのナイフにも罪は無いっ、そう言うことだなっ! 良かった良かったぁ! 今回の事故は誰が悪いとかそう言う訳じゃなくって、うーん…… そうだな! 偶然、偶々(たまたま)ヴノの体調が悪かったせいで皆を驚かせてしまった、だろ? そう言う事にしてしまうしかないよな? わははははっ! なっ?」
「そうなの?」
『北の魔術師バストロよ…… 良く判らんが少し強引なんじゃないかぁ、ヒヒン』
『うーんでも伝承では神様とか『アクマ』って良い者なんだよね~? それを加味するとバストロのお師匠が言う通りなのかなぁ?』
レイブが重い口を開いてペトラに言う。
「イイモノ? そっかぁー、そうなんだねぇ…… それじゃぁやっぱり冬篭り開けのヴノ爺の体調不良が原因なのかもしれないよねぇ~」