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結局、元の判定はどっちやったんやろう。 憧れか恋か。友達か恋人か。このまま生ぬるく、けれど幸せな感じで繋がっていくのも、悪くない気がしていたけれど。
「じゃあ、そろそろ帰ろかな。電車で酔い醒ましながら帰るわ」
「あ、最後にあれ、教えよか?」
その「最後」という言葉に、心臓がちくりと痛んだ。
もしかして、あんなに期待させておきながら、早々にここで振られるんやないやろな。
「……え、何?」
「もう一箇所、確認した場所」
元がニヤニヤとこっちを見ている。……あ、こいつ、ちょっと酔ってるな。
「……俺から見えへん場所?」
「あ、跡はつけてへんからわからんで?」
「……それなら、一生わからんやんか」
「やから、今教えよかって言うてる」
不意に、視界が元の顔でいっぱいになった。
急に距離を詰めてきたかと思えば、柔らかな指先が俺の唇に軽く触れる。……え、それって。
「ちゅうしたった。それが一番手っ取り早いやろ?」
「へ!? ちゅう……!?」
悪戯っぽく笑う元とは裏腹に、俺は弾かれたように口元を両手で隠した。
嘘やろ。俺が気持ちよく寝ている間に、あの密室で、そんな幸せなことが行われていたなんて。
「俺さ、誰かに取られるかもって思ったら、燃えちゃうんよね、多分。昨日も寝ながら、女将さんとのやり取り、全部聞こえててさ」
「……それって一時的なもんっていうこと?」
はんちゃんの時のように、空に「彼氏です」と嘘をついた時と同じ状態……。
じゃあ、もし俺に「好き」と伝えた途端、その熱も冷めてしまうんやろうか。
「……俺らってもう、結婚適齢期なわけやん? やから、もとちゃんに選ばせてあげる」
元が急に、ふざけた気配を消した。真剣な眼差しが俺を貫く。
「いち、このまま、友達としてずっと仲良くしていく。……に、どちらかに恋人ができるまで、欲求を満たすだけのお付き合いにする。……さん、結婚は諦めて、俺と真剣に付き合う」
選ばせてあげる、と言いながら、元の声は少しだけ震えているようにも聞こえた。
そんなもん、俺には一択しかない。
「……俺の答えは、三、しかない。大切な親友の大切な人で、しかも同性相手にそんな軽い気持ちで好きやなんて伝えてない。でも……元の気持ちも大事やから。最後は元が決めて?」
「……もとちゃんは、俺と友達以上の事したいって思ってる?」
「もちろん!! 昨日だって何回我慢したか! ほんま、必死やったんやからな!」
俺の咆哮に、元が今日一番の大きな声で笑い出した。
……良かった。やっと、いつもの笑顔に戻ってくれた。
「なんかさ、好きって言ってくれた割に、大浴場でも普通やったしさ。めっちゃええ友達感が出てたし……俺と同じで「好き」って伝えた途端に「あれ、間違えたかも」ってなったんちゃうかなって、不安やったんよ」
「そんなわけないやろ! 必死で抑えてたんや! 本心出してたら、元が可愛すぎて毎回悶絶してたわ!!」
「……じゃあ、全部もとちゃんの誠意ってわけやったんやな?」
元が、蕩けるような笑顔で俺を見つめてくる。
正直に言えば、ただチキっていただけという側面もある。けれど、そこには少なからず誠意も混ざっていた……はずや。絶対に。
「……そうやな。そう思ってもらえたなら、救われるわ」
「色々言うたけどさ……ほんまは、酔ってる俺に手ぇ出さんかったの、グッときたんよ。誠実な人なんやなぁ、素敵やなぁって思った」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
今こそ、逃げずに伝えなければ。ここから先に進むために。
「……俺、元のことが大好きです。会って少ししか経ってないし、まだ何も元のことを知らん。けど、これから全部知っていきたいし、ずっと一緒にいたい」
急にまとまらない告白をしてしまった自分に情けなくなるが、この必死さだけは、元なら感じ取ってくれる気がした。
「……うん。ありがとう」
元は嬉しそうに微笑んで話を繋げる。
「俺さ、はんちゃんからもとちゃんの話はよく聞いてたんよ。旅行も、はんちゃんと行くのはもちろんやけど、もとちゃんと会うのも同じくらい楽しみやった。はんちゃんの言う通り……もとちゃんは、みんなに優しくて、いざという時に守ってくれる、ヒーローやった」
「……ヒーロー?」
何のことかはサッパリ分からんけど、はんちゃんが俺のことをそんな風に思ってくれていたことに、別の意味で泣けてくる。
「俺の事を受け入れて、守ってくれてありがとう。俺も、大好き。かっこよくて優しくて、面白いもとちゃんのことが大好きです」
「ふぇ!? それって……!」
俺は思考がフリーズしたまま、脳内のストップウォッチを起動させた。
元は、はんちゃんには二秒で告白を取り消したんやな? 今、何秒経った? もう二秒たったよな!?
「……もとちゃん、俺とお付き合いしてください」
「よっし! 二秒耐えたぁ!!」
「なにそれ?」
不思議そうに笑う元を尻目に、俺は心の中でガッツポーズを決める。
元が言うたんやからな。もう、絶対に取り消しは無しやぞ。
「……じゃあ、誓いのちゅうを、もう一度お願いします」
半分ふざけながら、けれど心臓をバクバクさせながら顔を近づける。元は可愛らしく首を傾げると、ふわりと顔を寄せてきた。
……嘘みたいや。俺、今、大好きな男の子とキスしてる。
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