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kaede🍁
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篝火

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kaede🍁
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目黒と阿部が引っ越しをした数日後。
岩本は仕事終わりに不動産会社から届いた資料を眺めていた。
リビングでは深澤がソファで雑誌を読んでいる。
「ふっか。」
「んー?」
「ちょっと相談。」
深澤は雑誌を閉じて岩本の隣へ移動した。
「どうした?」
岩本はテーブルに何枚かの間取り図を広げる。
「……引っ越そうと思う。」
深澤は目を丸くした。
「え?」
岩本は少し照れくさそうに笑う。
「前から考えてた。」
「今の家。」
「一人で住むには十分だったけど。」
「二人だと少し狭い。」
深澤は部屋を見回す。
確かに暮らせないことはない。
でも、自分の服や荷物が増えてからは収納もぎりぎりだった。
「俺の荷物のせい?」
「違う。」
岩本はすぐに否定した。
「むしろ。」
「もっと増えてもいい。」
「え?」
「我慢してほしくない。」
「好きな服も。」
「アクセサリーも。」
「趣味も。」
「全部。」
「置ける家にしたい。」
深澤は少し照れながら笑う。
「照。」
「ん?」
「そういうこと。」
「さらっと言うよね。」
岩本は首を傾げる。
「思ったことだから。」
「……ずるい。」
深澤は照れ隠しに笑った。
「でも。」
「俺も。」
「収納欲しかった。」
「あと。」
「服を全部掛けられるクローゼット。」
「筋トレ部屋も欲しい。」
「それも作ろう。」
「え?」
「俺も欲しい。」
二人で顔を見合わせる。
「じゃあ。」
「トレーニングルーム付き?」
「賛成。」
「広いキッチン。」
「賛成。」
「ソファは大きいの。」
「賛成。」
「観葉植物。」
「……。」
岩本だけ少し考える。
「水やり忘れそう。」
深澤は吹き出した。
「確かに。」
その日のうちに二人は内見へ行く約束をした。
___________
休日。
不動産会社の担当者と一緒に何件か部屋を回る。
「ここ広い!」
深澤がリビングを走り回る。
「日当たり最高!」
「収納も大きい。」
岩本も珍しく楽しそうだった。
「ここ。」
「いいな。」
最後に案内された一軒。
広いリビング。
大きなウォークインクローゼット。
二人で筋トレできそうな一室。
窓からは緑が見える。
深澤はその部屋へ入った瞬間、笑顔になった。
「照。」
「俺。」
「ここ好き。」
岩本も周りを見渡し、小さく頷く。
「俺も。」
「じゃあ。」
「ここにする?」
深澤は少し驚く。
「そんなにすぐ?」
「迷う理由がない。」
「ふっかが笑ってたから。」
深澤は思わず笑った。
「それ。」
「決め手?」
「うん。」
「十分。」
___________
数週間後。
引っ越し当日。
玄関には段ボールが山積みだった。
「……。」
岩本が一つ持ち上げる。
「重い。」
「何入ってる?」
「漫画。」
「これは?」
「服。」
「これは?」
「服。」
「これは?」
「雑貨。」
「……。」
岩本は苦笑する。
「やっぱり多い。」
深澤は胸を張る。
「だから最初に言ったじゃん。」
「俺。」
「荷物多いって。」
「知ってたけど。」
「想像以上。」
二人で笑いながら荷物を運び終える。
夕方には部屋も少し片付いた。
大きなソファへ並んで座る。
窓から夕日が差し込んでいた。
「ただいま。」
深澤が何気なく呟く。
岩本は優しく笑う。
「おかえり。」
その一言が嬉しくて、深澤は自然と岩本の肩へ寄りかかった。
「広いね。」
「うん。」
「静か。」
「うん。」
少し沈黙が流れる。
岩本はそっと深澤の手を握った。
「ここなら。」
「もっと安心して暮らせる。」
「うん。」
「帰ってきたい家になる。」
深澤は微笑みながら頷く。
「もう。」
「帰ってきたくなってる。」
その言葉に岩本も笑った。
二人で選んだソファ。
二人で選んだ家。
ここからまた、新しい毎日が始まる。
岩本は深澤の肩を優しく抱き寄せる。
「おかえり。」
もう一度そう言うと、深澤も幸せそうに笑った。
「ただいま。」
その言葉が、新しい家のリビングに温かく響いていた。
コメント
1件
ああ、もうこのエピソード、すごく良かったです……。岩本が「我慢してほしくない」「全部置ける家にしたい」って言うところ、あれがもう全部ですね。深澤の「そういうことさらっと言うよね」に完全に同意。で、最後の「ただいま」「おかえり」のやりとり。たったそれだけなのに、この二人の新しい家がもう「帰る場所」になってる感じがして、胸がじんわり温かくなりました。観葉植物の水やり問題で笑い合えるのも、本当にいい関係だなあ。