テラーノベル
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宮舘の家で暮らし始めて一か月。
荷物も片付き、生活のリズムも少しずつできてきた。
――はずだった。
「……。」
渡辺はリビングの隅に積まれた段ボールを見つめる。
「どうした?」
キッチンで夕食を作っていた宮舘が振り返る。
「いや。」
「まだ開けられてない段ボールあるなって。」
宮舘も視線を向け、小さく笑った。
「本当だ。」
「翔太の荷物。」
「思った以上に多かった。」
「ごめん。」
渡辺は苦笑する。
「服も増えたし。」
「化粧品も。」
「全然収納が足りなくて。」
宮舘は火を止め、渡辺の隣へ座った。
「翔太。」
「少し相談がある。」
「ん?」
「引っ越さない?」
渡辺は目を丸くした。
「え?」
「今?」
宮舘は穏やかに頷く。
「二人で暮らすには少し狭い。」
渡辺は慌てて首を振る。
「俺の荷物のせいでしょ。」
「違う。」
宮舘はすぐに否定した。
「翔太が遠慮してる。」
「え?」
「欲しい物があっても。」
「『置く場所ないから。』って。」
「我慢してるだろ。」
渡辺は何も言えなかった。
図星だった。
本当は。
大きなドレッサーも欲しい。
服ももっと掛けたい。
メイク用品もきれいに並べたい。
でも。
「涼太の家だし。」
「迷惑かけたくなくて。」
そう呟くと、宮舘は静かに笑った。
「翔太。」
「ここは。」
「俺の家じゃない。」
「え?」
「翔太が帰ってくる家。」
「二人の家だ。」
その言葉に渡辺は目を見開く。
宮舘は続ける。
「だから。」
「遠慮しなくていい。」
「ドレッサーも。」
「ウォークインクローゼットも。」
「翔太が好きな物を置ける家にしたい。」
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渡辺は思わず笑った。
「涼太。」
「たまに。」
「すごいこと言う。」
「本音だから。」
「……ずるい。」
翌週。
二人は休日を合わせ、不動産会社へ向かった。
「この部屋はリビングが二十畳あります。」
担当者の説明を聞きながら部屋を見て回る。
渡辺は窓際へ歩いて行く。
「日当たりいい。」
宮舘も頷く。
「朝、気持ちよさそうだ。」
「料理もしやすそう。」
「キッチン広いね。」
「一緒に立てそう。」
「邪魔しない?」
「しない。」
「本当?」
「隣にいてくれる方が嬉しい。」
渡辺は照れて笑う。
その後も何軒か見て回った。
家具屋にも寄る。
「ソファ。」
「これどう?」
「大きすぎる?」
「二人で昼寝できる。」
「採用。」
「え、早い。」
「翔太が気に入ったなら。」
カーテン。
食器。
照明。
気付けば完全に新居デートになっていた。
「なんか。」
渡辺が笑う。
「生活感しかない。」
宮舘も微笑む。
「そういうデートも好きだよ。」
「俺も。」
数週間後。
引っ越し当日。
辺り一面段ボールの山。
「佐久間ー!」
渡辺が叫ぶ。
「お願い!」
「また俺!?」
佐久間が頭を抱える。
「今回は手伝うで!」
康二も笑顔で現れる。
「俺も!」
ラウールも軍手を着けてやってきた。
「今日は荷物持ち担当!」
三人のおかげで引っ越しは順調に進む。
……と思った矢先。
「涼太。」
佐久間が大きな箱を持ち上げる。
「これ何?」
「料理道具。」
「重っ!」
「こっちは?」
「和食器。」
「また重い!」
康二が笑い転げる。
「舘も荷物多いやん!」
宮舘は真顔で答えた。
「必要だから。」
ラウールが笑う。
「荷物多いの二人ともじゃん。」
「確かに。」
全員で大笑いした。
夕方には引っ越しも終わり、三人は帰っていく。
「また遊びに来る!」
「今度はご飯作って!」
玄関が静かになる。
新しい部屋には、まだ段ボールが少し残っていた。
二人は床に座り、コンビニで買ってきたおにぎりを食べる。
「今日は豪華じゃないね。」
渡辺が笑う。
宮舘も笑い返す。
「今日は疲れた。」
「たまには。」
「こういう日もいいよね。」
渡辺は頷いた。
「うん。」
「なんか。」
「新婚みたい。」
宮舘は少し照れながら、小さく笑う。
「そうかもしれない。」
食べ終えたあと。
宮舘は一枚の紙を渡した。
「これ。」
渡辺が見ると、家具の購入リストだった。
・翔太用ドレッサー
・ウォークインクローゼット収納
・メイクスペース
・全身鏡
一番最後には、小さな文字で書かれていた。
『翔太が毎日笑顔で「ただいま」と言える家』
渡辺は思わず笑いながら涙ぐむ。
「涼太。」
「ん?」
「俺。」
「こんなに幸せでいいのかな。」
宮舘は渡辺を優しく抱き寄せた。
「翔太。」
「幸せになるために。」
「一緒に暮らすんだ。」
「遠慮はいらない。」
「これから先。」
「この家は翔太が帰ってくる場所だから。」
渡辺は宮舘の胸へそっと額を預ける。
「……ただいま。」
宮舘は優しく微笑んだ。
「おかえり。」
その言葉が、新しい二人の家に、温かく響いていた。
コメント
1件
みらさん、こんにちは。リオンです。 「おかえり」って言ってもらえる家——それがどれほど特別な場所か、この話を読んで改めて感じました。翔太くんが「迷惑かけたくなくて」と遠慮するところとか、「新婚みたい」って照れながら言うシーンとか、一つ一つの台詞がとても優しくて、読んでいてほっこりしました。翔太くんのための家って宮舘さんがさらっと言うところ、ああいう自然な愛情表現、好きです。