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「え?なに?」
「晃河が可愛いって知ってるの、俺だけだと思ってた」
「もしかして莉久?あんなのただの冗談でしょ。本気で可愛いなんて思ってないと思うけど」
「そう?でもあんなほっぺむにむにしてさ。俺の晃河なのに」
「また嫉妬だ〜!なんだ、明日香って意外と嫉妬深いんだ〜」
「まぁ、晃河程じゃないけどね?」
「俺はまぁ…他の人が明日香に近づいただけで嫉妬だから」
「ちょっとそれは無理があるんじゃない?そんなこと言ったら誰も近づけないじゃん」
「それでいいんだよ。明日香に近づいていいのは俺だけ」
「わ〜。独占欲つよ〜」
「独占欲強い男は嫌い?」
晃河はそう言って目をしょぼんとさせる。
「嫌いじゃないよ」
「ほんと?」
「うん。晃河が俺を独り占めしたいって思ってくれるのは嬉しいし」
「じゃあ、これからも明日香を独占するね」
「いいよ。俺も晃河のこと独占してもいい?」
「もちろん。俺も明日香の事見てるから、ちゃんと俺の事見ててね」
晃河はそう言って嬉しそうに笑った。
翌日、学校で授業を受け、体育の時間になる。明日香が更衣室で体操服に着替えていると、クラスメイトの1人が言う。
「あ!それ」
明日香は声のする方を見た。すると、クラスメイトはシャツを脱いでいた晃河の腕を持ち上げた。そこには明日香とお揃いの腕飾りが着いている。
「これ、有名なやつだよね。恋人とお揃いでつけるやつ!もしかしてこれで晃河の彼女が誰なのか分かったり…」
クラスメイトはそう言って腕飾りを凝視する。
「A?じゃあ″あ″から始まる人か〜。何。この学校の人?」
晃河はそう聞かれて、こくりと頷く。
(晃河、嘘つけないもんな…)
明日香はバレてしまわないか心配になる。そんな気も知らず、クラスメイトは話を続ける。
「この学校で″あ″から始まる人…あ、同じクラスのあかりちゃんとか?」
「…違うよ」
「えっとあとは…同じ学年にあゆかちゃんとあゆみちゃん、それと…」
そこで考え込むクラスメイトに莉久が言う。
「明日香…とか?」
莉久のその一言でみんなの視線が明日香に集まる。そして、クラスメイトは明日香に寄って腕を掴んだ。
「はい、身体検査しま〜す」
「ちょっと、やめてよ」
明日香はそう言って抵抗したが、体操服の腕を捲られてしまい、腕飾りがあらわになる。
「お、あった」
そして、先程と同様に腕飾りを凝視する。
「わぁ。ビンゴ。″K″だ」
クラスメイトのその言葉で周囲がザワつく。
「いやあの…これは…」
(何とか誤魔化さないと…)
「マジ?お前ら付き合ってんの?」
(どうしよう…)
明日香はどう言い訳しようか苦悩する。その時、横で着替えていた颯人が言う。
「凄い。晃河の彼女もAから始まるんだね。明日香の彼女もKから。すごい偶然。でも、明日香は白だよ?」
「なんで?」
「俺、明日香の彼女に会ったことあるし。ここなちゃんだよね?たしか」
颯人はそう言って明日香の方を見る。
「…あ、うん。そう」
明日香がそう言うと、再び周囲がザワつく。
「なんだよ〜。偶然かよ〜。ビビらせやがって〜」
そう言いながらクラスメイトは着替えを再開した。明日香は、颯人に向かって言う。
「ごめん。ありがとう」
「ううん。全然」
颯人はそう言ってニコッと笑った。
着替えが終わり、みんなが更衣室から出ていく中、颯人と莉久だけが残る。
「なにしてんの。あのままバレてれば2人を引き離せたかもしれないのに」
「…ごめん。でも、ああいうやり方はよくないと思う」
「なんで?」
「だって、みんな巻き込んで…あすかも困ってたし…」
颯人はそこで口を噤む。そんな颯人を見て、莉久は言う。
「そんなこと言ってたら、一生手に入らないよ?もっと貪欲にならないと。何してでも手に入れるって思わないと一生このままだよ?」
「そうだけど…」
「まぁいいや。とにかく颯人はもっと明日香と距離詰めてよ。俺もやることやるからさ」
「うん。わかった」
「じゃあ、引き続きよろしくね」
そう言って莉久は更衣室を出ていった。残された颯人ははぁっとため息をつく。
「もっと貪欲に…か…」
颯人は、そう呟いて更衣室を出るのだった。
それから颯人はもっと明日香にちょっかいを出すようになった。そんなある日、2人がじゃれている様子を見ていた晃河に莉久が言う。
「あの二人って仲良いよね」
「え?」
「なんか距離近いっていうか、友達の距離じゃなくない?」
莉久のその言葉に晃河は無言になる。そんな晃河の様子を見て莉久は続けて言う。
「なんかもう、付き合っててもおかしくないよね。2人お似合いだし。ね、晃河もそう思わない?」
「…思わないよ」
晃河は不機嫌そうにそう答える。
「まぁ、明日香はどうか知らないけどさ。颯人は明日香の事好きだと思うんだよね。なんかあったらいつも明日香のこと庇うし、他にも友達いるのに明日香ばっかりだし」
「別に友達だからじゃないの?それくらい友達でもするでしょ」
「そう?でも、颯人最近彼女と別れたんだって。なんか、他に好きな人が出来たとか。それって、明日香の事なんじゃない?」
「…だとしたら何。別に俺に関係ないし」
「関係ない、ね。あんなに仲良くしてるのに、大事な友達が颯人に取られちゃうかもよ?颯人ばっかりになって、もう晃河に構ってくれなくなるかも」
それを聞いた晃河は再び黙り込む。そんな晃河を見て、莉久は続けて言う。
「明日香もさ、あんだけ颯人に助けられて距離詰められたら、ちょっとは好きになっちゃうと思うんだよね。そしたらどんどん好きになっちゃって、最後にはふたり両思い。付き合っちゃうじゃない?」
莉久のその言葉を聞いて、晃河は颯人と明日香をじっと見る。
(明日香が取られちゃったらどうしよう…)
晃河はそんな不安を抱えて、1日過ごした。その日の帰り、明日香と帰っていた晃河は2人の分かれ道でふと口にする。
「あのさ、明日香」
「何?」
「…颯人ともう話さないで欲しい」