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握っていたペンを置き、椅子の背もたれに頭まで深くもたれかかった。椅子の肘掛けに手を置き、椅子を左右に揺らす結はものすごく腹立たしい気分だった。
暖人が受賞式に出席してくれることが決まり、その後のことを打ち合わせる為に、宵の灯屋で数回暖人と夏夫と会いコーヒーを飲み、日曜日の朝食を共にした。暖人のことをもっと知りたくて、恭平に協力してもらい、打ち合わせは暖人が慣れている宵の灯屋でさせてもらった。会う回数を重ねるたびに暖人は工藤にも慣れていき、打ち合わせは順調だった。
だが、結は腹立たしい気分だった。
打ち合わせをするとき店に翠の姿があったりなかったりした。あるときはコーヒー焙煎士の講座を聞きに行き、またあるときは自治会が主催する防災セミナーに出掛けているという。
「これから寒くなって暖房などを使うでしょう。もし火事が起こっても的確に対処できるように必要でしてね」
恭平は言う。それは結にもわかる。ホテルでも常に防災意識を持ち、いざとなったときに的確に対処できるように日頃から心掛け、訓練も行っている。 けど、けれどもだ。
なにも結が店を訪れるときに限って、それらと重なって翠の顏が見られないなんて腹立たしい。それよりも会えないことが腹立たしいと感じている自身がもっと腹立たしかった。
コメント
1件
第12話、読み終えました。 結が翠さんに会いたくてたまらないのに、タイミングが合わなくてむしゃくしゃしている心情、すごくリアルでした。自分で「会えないことに腹立たしい」って気づいてさらにイライラしてるのが、恋心の芽生えを感じさせてドキドキしました。打ち合わせが順調なのに、心は全然順調じゃないギャップがいいですね。続きが気になります!