「邪魔したな」
「またいつでも来るが良いぞ」
すっかり爺さんと仲良くなったライルを連れて、エトランゼの家へと転移した。
「ここがエトランゼの家だ。殆ど使っていないから物は少ないがな」
「そうか。何だか夢でも見ていた気分だ。俺は宿だから帰るわ」
えっ?帰っちゃうの?僕一人で寝れるかな?
「ベッドも二つあるし泊まって行けよ。なんならここに住めば宿代もかからんぞ?」
実際、男一人ではする事がないんだよな…酒が飲めたらいいけど……
「そこまで良くしてくれても何も返せんぞ?」
「誰もお返しなんて望んでねーよ。仲間なんだから気にせずにこいよ」
何だか俺まで口が悪くなっちゃうけど…男友達といると仕方ないよな?
「仲間…か…。わかった。世話になる。家賃分は取り分から引いておいてくれ」
「俺は知っての通り金持ちだから必要ないが、それだと友達じゃないから遠慮なく受け取る」
異世界で初めて友達が出来た。ハーリーさん?誰それ?
国王?身分差が……
「荷物を取りに行ってくるわ」
「待て待て。魔法の鞄があるんだから付いて行くぞ」
俺とライルは夜の街を歩いた。
夜の店が俺を呼んでいる気がしたが…頭にミラン達の顔が浮かんで、行くことは出来なかった。
「今日は13階層に行くけどいいか?」
翌朝、目覚めて準備をした後に確認をする。
「問題ないぜ。それよりセイは13階層は初めてだったよな?」
「そうだ。ライルは何階層まで潜ったんだ?」
これは気になる。こいつなら一人だとどこまででも潜れそうだからな。
「15階層までだ。どうしてもそこは俺一人だと突破出来ん」
「そうか。ちなみに俺となら?」
「楽勝だろうな」
よし!お墨付きを貰えたぜ!
どうして無理だったのか気になるが、それは到達すれば分かることだ。楽しみは後にとっておかないとな。
俺はライルと転移した。
「この草原はやっぱりワイルドウルフか?」
見渡す限り膝丈の草原だ。
「そうだ。ネタバラシをすると、ここまでが同じ敵だ。問題ないだろ?」
「そうだな。既に次が気になるが、それはお楽しみだな」
まずは13階層だ。一つ一つクリアすることにゲームの醍醐味がある!
ゲームオーバーは死だけどな。
「あっちの方向に気配が固まっている」
「やっぱ便利だな…」
正確には固まっていないけど、気配の並びでここからは捉えられない中心を予想出来る。
「ここも剣か?あの武器の方が楽だろ?」
「対物ライフルはクソ重たいんだ。それに使わないと上手くならないだろ?」
あれは人が軽々しく持てる重量じゃない。身体強化しないと腰をいわす。
俺達は抜剣して草原を駆けた。
もちろんライルは俺に合わせてくれている。
シュッ
『キャインッ』
バタッ
ライルの攻撃ではウルフが声を上げる前に絶命しているが、俺の攻撃だと即死しない…致命傷なんだけどな。
キング戦の前には、俺の攻撃でもウルフは声をあげられなかった。
どうやら上達していっているようだ。まぁ初心者だから伸び代しかないよな。
そんな俺に触発されたのかライルが・・・
「キングは俺が殺る。見とけ」
「ちょっ」
俺が危うくキム◯クになる前に、ライルが飛んでいった。
もちろんライルは飛べないんだけど、そう錯覚するくらい速かった。
俺が気付いたらライルは二刀の剣を振り切り、ワイルドウルフキングの後方10mにいた。
ドサッ
「どうだ?すげーだろ?」
クソムカつく!!イケメンで似合うからまたムカつく!
もしかして、相性最悪なんじゃないか!?
「ムカつく…が、凄い」
「ハハハッ」
何、爽やかに笑ってんだよ!?イケメンだからって何でも許されると思うなよ!?聖奈さんに言い付けるぞ!?
俺の小物感が出たところで……
「さっ。行くぞ。セイのお待ちかねの14階層だ」
ライルが洞窟を潜って行く。
どう考えても主人公はライルだなと思いながら、俺はそれを追いかけて行く。
「やっぱ、草原なんだな。ってことは、敵だけが違うということか」
俺の視界の先は相変わらず草原だ。しかもご丁寧に俺の身長より高い。
「気をつけろよ。奴らは音に敏感だ」
「そろそろ教えろよ。何が出るかわからんのは結構怖いぞ?」
目隠しされて何かわからないものを触らせられたら怖いだろ?その10倍は怖いぞ!
「ワイルドボアだ。奴らは兎に角タフで、がむしゃらに突っ込んでくる」
「ワイルドボア?デカい猪か…」
うん。知っても怖いぞ。
「俺はソロになってからは相手をせずに洞窟に飛び込んでいたけど、どうする?」
「そりゃあ倒すに決まっているだろ?」
「俺でも一太刀で殺せん場合が多いぞ?」
ライルでもか。なら奥の手で行きますか。
「魔法で道を作る」
「は?あのバカでかい氷か?」
「いや、違う。見ててくれ」
俺はそう言うと詠唱に入る。
『フレアボム』
バシュッ
俺の手から離れた魔法は火の玉となり、草原を焼き尽くしながら飛来して行く。
そして、かなり進んだところに着弾した。
ドガーンッ
「500mってところか」
目測だがそんなもんだろう。
「す、すげーな!まだこんな魔法を残していたのかよ!」
「ああ。魔法ならまだあるからおいおい見せて行く。それよりも行こう」
俺達の前には道がある。500m先行き止まりだけど。
「音に集まるなら沢山いるだろ?」
「そうだな。集まっているはずだ」
よし。魔力波にも沢山反応がある。
俺は対物ライフルを取り出して、また魔法の詠唱に入った。
RPGを使わないのは、狙いを定めるのが難しいからだ。魔法は簡単。俺はな。
『フレアボム』
シュッ
ドガーンッ
また500m先に着弾した後、対物ライフルの引き金を引いた。
狙いは魔力波頼みだ。こうして狙撃すると、益々ゲーム感が凄い。
プレイヤーには見えないはずなのに見えるとことか。
「どうやらボスは大人しく待っててくれたみたいだな」
魔法を放ったり銃を撃ったりしながら進んだ。魔石はライルが何も言わなくても拾ってきてくれた。
そういう気遣いをイケメンがするから、俺達みたいな奴らが割を食うんだ!
何故か理不尽な想いを抱いてしまったが、後悔はない。絶対だ!
「雑魚もいないし二人がかりでやろうぜ!」
「そうだな!初共闘といきますか!」
なんだかんだ一緒に戦ったことはないもんな。同時に別の敵とは戦ったけど、それはどうなの?
「俺が先手を取るから、セイは一撃に集中してくれ。どう考えても攻撃力はセイの方が上だからな」
「そうなのか?まぁ力はあるかもしれんが、スピードが段違いだから微妙じゃないか?」
魔法あり腕相撲なら勝てるかもしれないけど、総合的な攻撃力はそっちだろ。まぁ華を持たせてくれるって言うのなら、断るのもアレだな。
「よし!行くぞ!」
ライルが飛んでいった。俺はその後ろを追う。
ザシュッ
『ブィィィインッ!?』
流石に堅そうだな。そして攻撃されたらやはりその場を動くみたいだ。
「くらえっ!」
ザシュッ
ザシュッ
ライルの攻撃が入るがやはり短剣の悲しい所。刃渡りが短い為、急所までは届かない。
ワイルドボアキングは切り傷だらけになるも、戦意は未だ衰えていない。
しかし、十分だ。
ライルにヘイトが向かっている。最早俺のことは眼中にない。
えっ?モブキャラだから?んなわけっ!!
俺は身体強化を限界まで使い、跳んだ。
「うぉぉおお!!」
ザンッ
バターンッ
落下の重力も利用した俺の一撃は、ワイルドボアキングの首を皮一枚残して断ち切った。
「やったな!…どうした?」
討伐の喜びを全面に出したライルだが、俺の反応がおかしいことに気づくと、心配そうに問いかけてきた。
「…いや、何か・・・・まさか!?」
「どうしたんだよ?頭でも打ったか?」
失礼なっ!正常だわ!
「いや、魔法の練度…レベルみたいなモノが上がったようだ」
「?よくわかんねーけど強くなったってことか?」
「そうだ」
多分身体強化の限界が、4倍から5倍になっている。25%の能力アップだが、バカに出来ん。
垂直跳びで言えば3mくらいだったのが375cmになったんだから、かなり違う。
未だに何がキッカケかわかんないけど、全部が大切だと思おう。使用頻度も使い方も大事だ。
「やったな!これでまた攻略が楽になるな!」
「楽かどうかはわからんが、安全度はあがるな」
それは間違いないだろう。
もし、今の強さかライルがいればあの時エリーを……
つい、意味のないことを考えてしまう。
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
聖「界◯拳5倍を使えたらベ◯ータを倒せていたのと同じ感じだな。エリーには悪いけど」
ライル「界◯拳?」
聖「いや、なんでもない。こっちの話だ」
聖(聖奈さんがいないとボケてもつっこんでくれない…はっ!?まさか聖奈さんはヒロインでも仲間でもなく…相方?)
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