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監獄ダンジョン・カルケル防衛任務。
その決行日が迫りつつある中、イギリスに浮かぶ人工島・ストウェアにも動きがあった。
「水戸くん。聞いてくれるか」
「あ、すみません、川端さん。おっぱいの話なら仕事が終わってからでお願いします」
今では「話がある」と言っただけでそれがおっぱいに結び付けられるようになってしまった男。
監察官・おっぱい男爵。
失礼。監察官・川端一真。
彼のもとに日本の本部から五楼京華と南雲修一の連名でとある命令が届いたのは、昨日の事だった。
川端は4年ほど前にカルケルの副指令を務めていた経験があり、監察官の中で最もカルケルの内部事情に通じている。
「水戸くん。私に本部から指令が来たのだ」
「ええっ!? 川端さん、日本の活きの良いおっぱいにも詳しいんですか!?」
「水戸くん……。私は何が悲しくてそんな指令が届いた事を君に伝えると思うのだね」
水戸監察官は今日も雨宮上級監察官の代わりに事務仕事を代行中。
ストウェアでは襲撃事件以降もイギリス探索員協会の育成が継続して行われており、そちらの担当も水戸監察官。
ならば川端監察官は何の役に就いているかと言えば、ストウェアの防衛司令官。
「えっ? 襲撃された時、真っ先にゾンビになったのに!?」と言ってはいけない。
彼の傷に障る。
「すみません。自分はてっきり川端さんが日本で宴会の幹事でもやるのかと」
「どうしてそうなるのだ」
「だって、デスター攻略作戦の後に行った川端さん贔屓のお店では、心の底からお楽しみだったじゃないですか」
「私が全部悪かったから、もう許してくれ。お願いだ」
デスターで2度目のゾンビ化を喰らった川端は、その後行われた慰労会にて活きの良いおっぱいが出て来るお店に行き、それはもう楽しそうだったと言う。
彼が今日もおっぱい男爵の名を欲しいままにしているのは、もはや必然なのだ。
川端は話した。
しばらくストウェアを留守にするため、仕事の引継ぎなどを済ませなければならないのである。
「ああ、なるほど! 川端さんの経験を買われて、カルケルの防衛任務に出向されるのですか!! なんだ、そっちですか! 先に言って下さいよ!!」
「私が言う前に君は断定したような気がするのだが」
川端一真監察官には、「カルケル防衛のために再び副指令として彼の地に赴き、内部潜入者の支援を。また、有事の際には外部からの攻撃に対する防衛措置を第一に行う事」と言う、結構重要な任務が与えられていた。
「つまり、汚名返上のチャンスと言う訳ですか!! 良かったですよ! 自分、川端さんがここのところ男爵の仕事しかしないので、気になっていたんです!」
「水戸くん。私、ちゃんと仕事もしているのだが。男爵の仕事って何だ」
「だって、仕事が終わったら夜な夜な雨宮さんと歓楽街へ繰り出していくじゃないですか」
「違う。あれは、真っ当な店で酒を飲んでいるだけだ」
ちなみに、本日は珍しく雨宮上級監察官もストウェアに居た。
彼は内緒話をしている監察官の2人を見つけて、スキップしながら駆け寄ってきた。
「あららー! なんですか、川端さん! 今晩のお店の話ですかー? 私に内緒でズルいじゃないですかー! 昨日のお店、良かったですもんねぇ! 川端さんのお気に入りの子! ね、ダイナマイトな! ええと、ジェシーだ! 違う、ジェニファーだ!!」
「水戸くん。違うんだ。聞いてくれ」
「……川端さん! 自分、仮にあなたがおっぱい男爵からおっぱい伯爵になっても、尊敬しています!!」
水戸の中で川端の爵位がアップした瞬間だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
川端は雨宮にも本部からの命令について話した。
雨宮は「えー。凄いじゃないですか! でも、しばらく夜が寂しくなるなぁ」と感想を述べた。
まるで他人事である。
今さら自覚を持てとは言わないが、興味くらいは持て。上級監察官。
「つきましては、雨宮さんと水戸くんに負担をかける事になります。申し訳ない」
「川端さんを見込んでの命令でしょうから! 自分はストウェアから応援してますよ!!」
「水戸くん……!」
「私も! 私も!! じゃあ、今日はさっさと仕事を切り上げて、川端さんの壮行会を開かなくっちゃ! お店の予約は任せてちょうだい! おっぱい男爵の教えを授かった私は無敵だから!!」
「雨宮さん……。ヤメてください。私は恥を残して出立したくありません」
「ハロー! そう、そうなのよ! 3人で行くからさ! えー、ホント? それ、川端さんが喜ぶよー! うんうん、絶対行くからね! はーい! じゃあ後で!!」
流れるように電話を済ませる雨宮。
水戸も「やれやれ」とため息をつく。
「川端さん! あと30分したら終業時間ですからね! そしたら、いつものお店にレッツゴーですよ!! ふぅー! 忙しくなって来たなぁ!」
「いや、雨宮さん。私はもう気持ちを集中したいのです。数々の汚名を返上するこの上ない好機ですから。精神を落ち着かせたいのです」
「えーっ!? 川端さん、行かないんですか!? ジェシーがわざわざ出勤してくれるって言ってるのに!? あ、違った! ジェニファーだ!! 川端さんのために休日出勤してくれるんですよ!? ミスター川端の仕事が上手くいくようにって! 緩めの胸元のドレス着て!! 行かないんですかー!? もったいないなぁ!!」
「……2時間したら帰りますから。本当です」
「川端さん。自分、川端さんとの最期の思い出がこれって悲し過ぎるので、絶対に生きて帰って来てくださいね」
その後、川端一真は朝までオールナイトでジェニファーとよろしくしたらしい。
恥はイギリスに置いて、もう一度飛び立て、川端一真監察官。
◆◇◆◇◆◇◆◇
日本の協会本部では、南雲が防衛部隊の選定に頭を悩ませていた。
「チーム莉子は確定として、残りなんだよ。少数精鋭でって五楼さんに言われているし。うーむ。山根くん、どう思う?」
「まあ、普通に考えたら加賀美さんのところとかじゃないっすか? 加賀美隊はチーム莉子とも面識ありますし。実力的にも問題ないっすよ」
今回の防衛任務は急襲部隊と違い、パーティー単位での連携練度を重視するべきであると南雲も考えていた。
防衛部隊はカルケルの隣にあるドノティダンジョンに潜る可能性が高いため、重ねて普段から活動しているパーティーである事が望ましい。
「そう言えば、南雲さんは現場に行かないんすか?」
「ああ。私は本部で指揮官の任を仰せつかっている。監察官の投入は、現場の逆神くんの判断を踏まえて段階的に行う手筈になったんだよ」
逆神家が3人のみでは、カルケル内で大きな問題が起きた場合に対処できない可能性があり、その際に単独で千人力の監察官が逐次参戦する予定である。
「サーベイランスの調整がやたらと多く来てるのもそのせいっすか」
「そうだな。オペレーターを複数人動員して、各所に指示を飛ばすことになるだろうからね。だから、しっかり整備しておいてくれよ」
「うーっす。そう言えば、五楼さんと映画見に行ったらしいっすね」
「……耳が早いな。どこから漏れたんだ」
「春香さんから聞いたんすよ。なんでも、五楼さんが嬉しそうに話してくれたらしいっすよ。やるっすねー! この遅れて来た桃色青春野郎!!」
「ぐっ。性格悪いな、君ぃ。いいじゃないか。映画見に行くくらい」
山根は南雲のデスクに2人分のチケットをスッと差し出した。
「バックトゥザフューチャーには、2と3があるんすよ! ご存じっすよね、南雲さん!!」
「…………。山根くん。昼ご飯は天丼でも出前を取ろうか」
目前に迫った防衛作戦。
監察官たちの士気も各々の方法でしっかり上がっているようであった。
そして、ついに先陣を務める逆神家。
出発の日の朝が来た。
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コメント
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うわあ、川端さんの壮行会がまさかのオールナイトコースになるって、もう完全に男爵の貫禄ですね(笑)。水戸さんが爵位アップさせたツッコミ、めちゃくちゃ好きです。南雲さんと山根さんのバックトゥザフューチャー掛け合いも、シリアス前の良い息抜きになってて和みました。防衛任務直前の空気感がすごく丁寧で、次の展開が楽しみです!