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薄暗い部屋。
軋むベッドの上、縛られた手首にわずかな熱が滲む。
アーサーはアルを睨みつけながら、かすれた声で言った。
「……なあアル、お前……本気で思ってんのか? こんなもん、愛じゃねぇって、わかってんだろ」
アルは静かに首を横に振った。
「違う。これは、俺の全部だ。
……君が、俺に向けてくれないなら――だったら、奪うしかないだろ」
「バカか……」
アーサーが吐き捨てると同時に、アルの指先がそっと頬に触れた。
「バカでも、君を手に入れられるならそれでいい。
アーサー……俺、ずっと、君に触れたかったんだ」
その囁きと共に、唇が落ちた。
柔らかく、けれど逃がさないように深く、まるで祈るように重ねられる口づけ。
「っ……、おい……やめ……」
抵抗しようとしたが、手首は布に縛られ、体も言うことをきかない。
アルの指が首筋をなぞり、耳の後ろを撫でる。
その仕草一つひとつに、妙な熱が走った。
「……な、何して……んだよ……っ」
アーサーの声がかすれる。
それをアルは、愛しそうに受け止めるように笑った。
「ねえ、気づいてるだろ? 君の体が、俺に触れられて震えてる。
俺のこと、怖いって言いながら――感じてるんだぞ、アーサー」
「黙れ……っ!」
顔を背けようとするが、顎をすくい上げられて、再び唇を奪われる。
今度は、深い。
舌が絡む。奥をなぞられる。
逃げ場のない熱が、じわじわと胸の奥に染み込んでいく。
アルの手が、シャツの裾から這い上がる。
指先が肌に触れ、アーサーの呼吸が浅くなる。
「や……めろ……」
「無理だよ。もう止まらない。君を手に入れたくて、ずっと……ずっと、こうしたくてたまらなかったんだぞ」
唇を、首筋を、鎖骨を辿るように落ちるキス。
まるで、失くさないための刻印のように。
「アーサー……全部、俺にちょうだい。
君の心も、体も、言葉も、全部……俺だけのものになってほしいんだぞ」
その言葉に、アーサーはぎり、と奥歯を噛み締めた。
「……クソが。……お前なんかに……」
でも、言い切れなかった。
否定の言葉の先が、喉の奥で絡まって出てこない。
熱が、ゆっくりと全身に広がっていく。
まるで、アルという存在に侵食されていくようだった。