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名月

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2024年07月31日

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『名 月』

🐯×🐧(ニョルド)

月を眺めていた。

 秋月の時期が近いので夜空は澄み渡り、それはそれは見事な月だ。満月ではないけれど。

「チャニョラ、なに見てるの?」

「ギョンス、」

 番組の収録で、メンバー一同がひとところに会した夜のこと。ベランダでぼんやり空を見つめている俺の横に、ギョンスが並び立った。

声を方を向くと目線があって、いつもどおりの真顔のギョンスは、すぐに目線を空へと向ける。先ほどまでの俺のように。

「わぁ、すごい月だ」

落ちてきそう、と感想を述べて、ギョンスは少し口角をあげた。淡い笑み。

「ひとりで月を見てたの?ロマンチックだ」

 別に揶揄るわけでもないその言葉に、だがなんて答えたものかと思い、俺も薄く微笑んだ。

ギョンスはただ、じっと月を見ている。

 これだけ長い期間一緒にいればメンバーがそれぞれどういう人間なのか多少わかっているつもりだけど、それでも、ギョンスに関しては、なに考えてるんだろうなと戸惑うことも多い。

表情が特別乏しいわけではないが、独特のテンポがあるやつだから。

「月が綺麗ですね」

「え?」

 ふいにギョンスがつぶやいた言葉に、俺は首をかしげる。確かに、月はきれいだが。唐突になんなんだ。

「知ってる?『月が綺麗ですね』は、日本では愛の告白らしいよ」

 これまた唐突な言葉にぎょっとして、視線を月からギョンスへとうつす。

「……それ、いま、特別な意味で言ってる?」

「ううん。なんで?」

 真意をはかりかねて、期待しながらすなおに訊ねたら、すなおに否定された。まぁ、わかっていたけれど。

ギョンスは俺を見ない。

「月が綺麗ですね、ギョンス」

今度は俺から言ってみた。

ギョンスは、やはり、少し欠けた月を見つめ続けている。

小さくため息を吐いて、俺も視線を月へと戻した。

まださほど遅い時間ではないが、そろそろTシャツ1枚では肌寒いな。そんなことを考えたとき、ふいに、

「月はずっと綺麗でしたよ」

「え?」

 意味がわからなくて、もう一度ギョンスへと視線を移す。

ギョンスは俺を見てにやりと笑うと、すぐにうつむいて、ベランダの手すりに凭れていた身体を起こした。

「意味は調べて。いまはスマホでなんでも調べられるだろ」

それだけ言うと、ギョンスはくるりと振り向いて、スタスタと部屋の中へと戻ってしまった。

 残された俺は手すりに身体を預け、ズボンのポケットからスマホを取り出す。

 月はずっと綺麗でしたよ、の意味を知って、赤面してうずくまるのは、もう少しあとのこと。

『月が綺麗ですね(I love you)』

『月はずっと綺麗でしたよ(I’ve always liked you)』

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