2025年12月23日_
元貴 side …
少し暖かな風が頬を撫でる。俺は今、駅のホームで兵庫県行きの新幹線を待つ。周りには子供を連れた夫婦、くっつきベンチに座るカップルと沢山の人がいる。今は冬休みの時期。家族や恋人と旅行などに行く人が多いのだろう。
「新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく、16番線にひかり501号が到着いたします。安全柵の内側までおさがりください。」
駅のホームにアナウンスが流れる。俺の乗る新幹線だ。横を見ると、奥の方から新幹線が来ている事に気づく。俺は持っていたカバンの取っ手をぎゅうっと弱い力で握る。すると、大きな音と共に目の前に新幹線が止まる。新幹線の扉が開くと同時に次々と人が新幹線へと乗っていく。俺は深呼吸をしてから、少し遅れて新幹線へと乗り込んだ。
新幹線の中は静かで、既に席に着いている人がほとんどだった。俺はできるだけカバンを体に引き寄せ、細い通路を通って自分の席まで行く。
「…ここだ」
席に付き一安心した。俺の席は窓側。通路側にはまだ人がいなかった為、誰にも迷惑をかけずに席に着くことができた。席に着き荷物を足元に置いて一息ついていると、すぐに車内放送が流れる。
「今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、のぞみ号 岡山行きです。途中停車の駅は…」
もう少しで新幹線が走り出す。東京から出るのっていつぶりだろう。最近出たような気もするし、出ていない気もする。窓からはホームの人々の様子がよく見える。この人たちは何を目的で新幹線に乗るんだろう。俺みたいに誰かに会いに行く人はどれくらいいるんだろう。まぁ俺の場合、”その人”に会えるかどうかは分からないけど。くだらないことを考えていると、ゆっくりと新幹線が動き出す。そして、いつの間にか新幹線は走り出し、景色が一気に変わる。東京の街の景色が次々と運ばれてくる。普段見ない景色に、思わず息を飲む。
「…綺麗」
つい口から思っていたことが零れた。晴れた空に輝く街の光。交差点には多くの人が歩いている。いつもの光景のはずなのに初めて見るような気持ちになる。この街の中で数え切れない程の人達が出会い、数え切れない程の人達が別れていく。それはとても尊いことのようで、とても儚いような気がする。見方を変えるだけでこんなにも世界は美しく見えるものなのか。
変わりゆく景色を静かに眺めていると、目の前がふわふわと掠れていく。朝早かったからだろう。眠い。新幹線の中は静かでとても居心地がいい。俺は新幹線がトンネルに入ったタイミングで意識を手放した。
このお話長いですね…笑 ((
でも、あと残り3話です!!!
ここまで読んでくださっている
読者の皆さん、
本当にありがとうございます😇✨
今書いている新しいお話が
めっちゃ上手くいきそうで、
作者はワクワクしております…!🫣
ではまた次のお話で^^
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