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「栞ちゃん! 中に入れてよ! 俺、栞ちゃんがいないと生きていけないんだ!」
パンを口に運ぼうとした瞬間、ドアを叩く乱暴な音が響いた。
心臓が、嫌な音を立てて跳ねる。
元彼、健太の声だ。
「やめて、健太……! ここには来ないでって言ったでしょ!」
「お金、あと少しでなんとかなるんだよ! 栞ちゃんなら、貸してくれるだろ!?」
恐怖で身体が固まる。
もし、この修羅場が会社の人に知られたら?
完璧な「桜川栞」の経歴に泥が塗られたら、私はもう生きていけない。
「お願い、静かにして……っ!」
ドアの影にうずくまり、耳を塞ぐ。
涙が、完璧に引いたアイラインを黒く滲ませていく。
その時だった。
「……自分、深夜に何しとんねん」
低くて、よく通る関西弁が、廊下に響き渡った。