「よし。今日はこんな感じでいいかな?」
「そうだな。また明日仕事終わってから、オレもまた残りやるわ。栞は?明日来れそう?」
「うん。私は朝から取り掛かれるしまた続きやるよ」
「サンキュ。頼んだ。じゃ、今日はこれくらいにして帰るか」
いとこの栞とようやく今していることが片付いて今日はこれで帰ることにした。
「栞がいて助かるわ。オレだけだと本来の仕事の合間に準備しなきゃいけないから正直時間もなかなか取れなくて」
「私の方こそ。私もここでこうやって樹くんと一緒に出来るの嬉しいし」
年が近くて、いとこの栞とは昔から会う機会多くて、異性で唯一恋愛にもならなくて一緒にいて気楽な存在。
だからお互いの恋愛相談なんかもし合ったりして、オレ的には有難い関係。
「あっ、そうそう。前に頼まれてたあのネックレス。いい感じになりそう」
「マジで!?」
「うん。ちゃんと樹くんの理想通りでちゃんと作り上げるから任せて」
栞はずっと昔から憧れていたジュエリーデザイナーという職業で活躍していて。
気心知れた栞に、彼女にプレゼントするネックレスをオレがデザインしてオリジナルを作ってもらうようお願いした。
「いやいや、にしてもホントに樹くんがあの憧れの透子さんをゲットしちゃうとはね~」
「まだ心まで手に入れられたかはわかんないけどね」
「えっ?ならまさかそれ以外は手に入れたってこと!?」
「はっ!? まさか、んなわけないだろ。ずっと憧れ続けた人だぞ。そんな簡単に手出せるかよ」
「うわ~。よく言うわ~。あれだけ昔遊びまくってた遊び人が」
「だから、それは! ・・・あの人好きになって一切やめただろうが」
「そだね~。私もまさかあの樹くんにそんな人出来たって聞いた時は最初信じられなかったけど」
いとこの栞は、昔からよくうちの家に出入りしてたり、母親と仲良くしてるのもあって、オレとも顔合わせることが多くて。
なので昔から遊び回ってたオレも知ってしまってるわけで。
「そういうお前は全然男見る目ないだろうが」
「うるさいなー。今度の人は絶対大丈夫だから」
「お前の大丈夫何回目だよ(笑)」
「それより樹くんもようやくここまで来た憧れの人、手放さないようにね」
「わかってるよ。だからお前に頼んだんだし」
「そうだね。樹くんが私に頼み事してくるのも初めてだし、女性の為にプレゼントするなんて初めてじゃない?しかもオリジナルで作るなんて・・・。いや~ホントにビックリだわ。ホントに好きな人出来るとそこまで人って変われるもんなんだね~」
「ホントにな。まだどこまであの人がオレに心開いてるかわかんないけどさ」
「なのに、プレゼントしたいとか。いや~愛だね~」
「お前楽しんでんだろ」
「そりゃ楽しいよ~。今まで強気な樹くんの弱点ようやく見つけられたんだからさ~」
「お前な~!」
「ハハ(笑) でも私もそこまで樹くんが夢中になる女性いつか会ってみたいな」
「あぁ。近々紹介する。ちゃんとあの人がオレ好きになってくれたら」
「そのネックレス渡せる時は透子さんが樹くんちゃんと好きになってくれてること願ってる」
「あぁ。そうなってればいいな」
オリジナルで作るそのネックレスはまだ一か月以上完成するのには時間がかかるらしく。
それが完成して渡す時まで、オレがどれだけ彼女にこの気持ちを伝え続けて、彼女はオレにどれだけ心を開いてくれるのか今はまだわからないけれど。
だけど彼女を想って作ったそのネックレスを受け取った時に、彼女がオレの気持ちがどれだけ大きいのかわかってくれれば、ほんの少しでもそれを知ってくれれば、きっとそれだけでもオレは幸せだから。
重すぎるオレのそんな気持ちを笑顔で受け取ってくれますようにと、今から勝手な願いを密かに思いながら。
栞とそんな彼女の話をしていると、本来の会社の近くまで辿り着く。
もう透子帰ったよな。
今偶然会えたりしたら、栞にもちゃんと紹介出来るのに。
会社も同じで、家も隣で、ようやく付き合えたという形だけは手にしていても。
こんなに近くにいるはずなのに、お互い仕事が忙しければ、こんなにも会えなくて遠く感じる。
彼女がもっとオレを好きになってくれれば、もっとオレを必要としてくれれば、こんな時でもホントは会いに行きたいのに。
だけど、オレばっか近くにいても、離れていても、彼女への気持ちが大きくなるだけ。
ホントはどんな一瞬でも彼女に愛を伝えたいのに、きっとまだ彼女はそんなオレの想い受け止めてはくれないだろうから。
だけど今はそれでもいい。
この上辺の形だけでも彼女を繋ぎ止められているのなら。
今はオレが彼女の一番近くにいられるのなら。
今のこの取り組みさえ成功すれば、ようやくオレももっと自信を持って踏み出せるから。
だからその時まで、オレは頑張るしかない。