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58 - 第58話  すれ違いの予感

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2024年09月20日

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翌朝。


「早瀬。おはよう」

「おぉ高杉。おはよう」


会社に出社すると高杉が声をかけてきた。


「これ」


そう言って高杉が何かのファイルを渡して来る。


「何?」

「昨日残業してたらさ、望月さんが来てこれ早瀬に渡してくれって預けて帰った」

「あっ、そうなんだ。サンキュ」


そっか。昨日透子こっち来たんだ。

ならオレがいる時来てくれれば会えたのに。

オレ帰ってからって。


・・・え?


「高杉。望月さん、残業してる時来たの?」

「あぁ。オレらももう少しで帰ろうかなって思ってた時だったから、ちょうど受け取れてよかった」

「その時、望月さんオレ訪ねて来たんだよな・・?」

「そりゃ当然だろ。お前訪ねて来たから定時で帰ったって伝えたら、なんか困ってる感じしたからオレが預かったんだけど」


・・・マジかよ。

オレ、昨日透子に仕事って言ってたよな。

仕事してたことには変わりないんだけど、昨日はこっちの仕事じゃなかったから、会社にはいなかった。

そのタイミングで訪ねて来て、オレがまだ仕事続いてるってメッセージって・・・。

それ・・誤解するやつだよな・・。


「何?どしたの?」

「いや・・別に。資料サンキュ」


そう高杉に伝えてとりあえずその場を後にする。


高杉はありのまま別に伝えただけで、彼女との関係も知らないから当然悪くもない。

だけど、なんか、嫌な予感がする。

とりあえずこの予感が当たらないことを願って、透子の携帯に電話をかける。


・・・・出ないか。


「あっ、早瀬。ちょっと来てくれるか。急ぎの用事頼みたいんだが」

「あっ、はい。わかりました」


透子に電話が繋がらないまま、部長に呼ばれる。

だけどオレの気の回し過ぎだと思いたくて、今度はさり気なくメッセージだけ送信する。


『透子。おはよう。

高杉から資料受け取った。届けてくれてありがとう。

それでちょっと相談したいことあるんだけど、今日透子の時間都合いい時会議室で会えないかな?』


とりあえずさり気なく仕事の用事だと伝えて透子を呼び出す。

ホントはまだ資料なんて見てないけど、今はどちらにしても会って確かめたい。

そうであっても、そうでなくても、きっと透子の反応を見たらすぐにわかるはず。

透子はもう昨日で忙しいのは終わったはずだから、適当に時間作れるはず。

オレも今日は一日会社で自由が利くから、透子の都合に合わせられる。


連絡来ることを期待して、携帯を閉まって、それから部長の元へ。

しばらくして、部長に頼まれた仕事が片付いて、携帯を開く。

彼女から返信が来てるかを確認すると、まだ既読にさえもなってない。


・・・なんで読んでもいないの?

メッセージ朝イチ送って、もう昼前なのに。

そんなまだ忙しいわけ?

今までなら仕事の合間でも朝送ったら必ず返信くれてたのに。


オレはもういたたまれなくなって、彼女の部署へと足を運ぶ。


元々離れている部署だからか、いつも以上に彼女の部署までの距離が長く感じて。

今はもう一秒でも早く彼女に会いたくて、確かめたくて、駆け足で足早に部署へと急ぐ。


彼女の部署まで辿り着いた時、たまたま入口から出て来た三輪さんを見つける。


「三輪さん!」

「あっ、早瀬さん。お疲れ様です」

「お疲れさまです。あの・・望月さん今います?」

「望月さんですね。ちょっと待ってくださいね」


三輪さんに呼び出してもらう間、ここまで走って来たのと彼女への不安が重なっていつも以上に鼓動が激しくなっていく。


「あっ、早瀬さん。すいません。望月さんちょっと今ここ離れてるみたいで」

「あ・・・そう、なんだ・・」


だけどその鼓動とは裏腹に彼女がいないと伝えられる。


「約束されてました?」

「いや・・どこ行ったかわかる?すぐ戻って来るのかな?」

「そこまでちょっとわかんないんです~」

「あっ、そっか・・・。望月さん、会社には来てるんだよね?今日三輪さん会った?」

「え?はい。もちろん来てますし、会いましたよ」

「あの・・望月さんいつもと同じだった?なんか違う様子とかなかった?元気なかったりしなかった?」

「え~?どうでしょう。特にそこまで感じなかったですけど・・・」

「そっか・・。あっ、ここの部署での仕事忙しいのってもう昨日終わったんだよね?」

「はい。昨日全部終わりました!あっ、そういえば残業して全部終わって21時前くらいに早瀬さんとこ資料届けに行くって望月さん言われてましたけど、その件ですかね?」


21時前・・・。

オレ向こうの用事終わったのそれくらいの時間で、会社通りかかったのその後くらいの時間だったよな。


そっか。

やっぱあの時、まだ透子会社いたかもなのか。


「あれ?早瀬さん。受け取れませんでした?」

「いや・・あ・・うん。受け取った」


会いは出来なかったけど・・・。


「なら良かった。あっ、じゃあ望月さん戻ったら伝えておきましょうか?」

「いや・・いいや。うん、ごめん。ありがとう」

「そうですか。了解です」


ホントは三輪さんに伝えてもらえて透子をつかまえるつもりだったけど。

でも、なんか今はそこまでしない方がいいような気がして。

オレも落ち着いて話せるように、ちょっと頭の中整理しよう。


多分きっと。

透子はもう気付いてる。

オレとの会話が食い違ってること。

仕事だと透子には言ったのに、オレがその場にいなかったことで、多分少なからず透子は何か感じているはず。

もしオレが透子の立場なら、きっと同じように感じると思うから。


だけど。

まだオレは透子に今は本当のことが言えない。

まだ誰にも今はこのことは言うことは出来なくて、きっと誤解しているであろう透子のことを考えると胸が苦しくなる。


透子にこのことを話してしまえば、きっと透子は応援してくれる。

誤解もきっと解ける。

だけど、これはオレだけの問題じゃなくて。

だけど、これはオレのケジメでもあって。

どうしても失敗することも出来ないし、一度決めたこのことは、ちゃんと形にしてから自信をつけて、透子にも伝えるって決めてたから。

だから、今はまだ言えない。

だけど、透子は手放したくない。

このまま誤解されて離れるなんてことは絶対嫌だから。

こんな状態で信じてもらえるかわからないけど、だけど、どんなことがあってもオレの透子への気持ちは絶対変わらないから。

何があってもそこだけは絶対揺るがないから。

透子とずっといられるように、今はどうしてもそれをしなければいけないから。


その日結局夜になっても一日透子からの返信も連絡もなかった。

なんとなく意図的な感じがして、気になって携帯でこっちからの連絡を取りつつも、家に帰ってからも隣の透子の部屋も訪ねてみる。

だけどチャイムを鳴らしてもやっぱり何の反応もない。


「透子・・・? いないの・・・?」


ドア越しに話しかけてみるも、結局返答はなし。


もう22時過ぎだから仕事も終わって帰って来てるはず。

まだ寝るにも早い時間だし。

まだ出かけてるのかな・・・?

居留守使ってもどっちだっていいけど、理由わからないままこのままとか嫌なんだけど。

せめて連絡くらいしてくれよ・・・。

はぁ・・ただのオレの思い過ごしならいいけど、でも今までここまで返信なかったことなかったから、きっとそういうことなんだろうな。

三輪さんは、いつもと今日も変わらないって言ってたし仕事も行ってたみたいだし。

透子いつまでこんな感じにするつもりだろ・・・。

ってか、どうにかしてつかまえないとな・・・。


こんなドア一枚隔てた所に、透子はいるはずなのに。

こんなに近くにいるのに、なぜか透子が遠くに感じる。

やっと近づけたと思ったはずなのに、こんな一瞬でこんな何気ないことで、こんなに遠く感じて、会うことさえも出来ない。

こんなの片想いしてた時よりも、もっとツラい。

オレの存在を知らなくて、すれ違っても気づいてももらえなくて切なかったけど。

今はオレだとわかって無視されるなんて・・・そっちの方が耐えらんないって・・・。






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