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マイッキーが風呂に入ったあと。ドアが閉まる音がして、
家の中が一段静かになる。
ぜんいちはソファに沈んだまま、
ゲーム画面も見ずに、
さっきの光景だけを思い返してた。
伏せられたスマホ。
あの一瞬。
名前。
「……覚えてる」
口に出した途端、
胸の奥がざわっとする。
別に、
疑う理由なんてない。
今までだってそうだった。
マイッキーは嘘つかない、
って、
自分で何度も言い聞かせてきた。
でも。
「友達だって」
あの言い方。
軽すぎた。
「友達…ね。」
ぜんいちは立ち上がって、
無意識に机を見る。
そこにあるはずのスマホは、
もうない。
マイッキーが持っていったんだろう。
それでも、
画面に浮かんだ名前だけが、
やけに鮮明に残ってる。
「……なんで覚えてんだよ」
自嘲気味に笑う。
気にしすぎ。
そういう役は自分じゃない。
風呂場から、
水の音。
シャワーの音。
――まだ、戻ってこない。
ぜんいちはソファに座り直して、
指を組む。
心臓の音が、少しうるさい。
「帰ってきたら、 普通に話すだけ」
「そう、普通に。」
そう決める。
決めたはずなのに、
頭の中ではもう、
“もしも”が増え始めている。
知らない名前。
夜中の通知。
伏せられた画面。
ぜんいちは目を閉じる。
信じたい気持ちと、
覚えてしまった違和感が、
同じ場所でぶつかっていた。
主)なんか長編になりそうな予感笑笑