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鷹槻れん

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(副社長は、最初から知ってらしたんだ)
いつから知っていたのかは分からない。でも、清香の中で、晴永にも、彼の許嫁にも恋人がいることは折り込み済みだったんだろう。
「――そのことで、祖父さんと話がしたい」
電話の向こうが静かになる。
数秒の沈黙。
やがて清香が静かに口を開いた。
『……分かってると思うけど、あの人は一筋縄じゃ、いかないわよ?』
「望むところだ」
『……角実屋フーズを辞めることになっても?』
「覚悟はしてる」
『角宮の後ろ盾を失ってもいいの?』
「構わない」
晴永の口調に、一切の迷いはなかった。
息子の決意を聞かされて、清香はしばらく黙っていた。
それは試すような沈黙ではなく、我が子の言葉を受け止めている間のように、瑠璃香には思えた。
『……そう』
ややして、大きな吐息とともに、
『なら、逃げちゃ駄目ね』
静かな声が返ってくる。
「逃げるつもりなんて、最初からないよ」
『……そう。なら……お母さんからも、お父さんに話を通しておくわ』
〝お母さん〟という自称に、晴永が少しだけ肩の力を抜いたように見えた。
「助かる。……ついでに……母さんも同席してくれるとありがたい」
『同席? 別に構わないけど……』
清香の声が少しだけ厳しくなる。
『一緒の席にいても、私はあなたのために戦ってあげないわよ?』
「……」
『話すのは晴永、あなた自身』
「……分かってる」
当然のことだった。
祖父を説得するのは、当事者である晴永自身の役目だ。
そこを、清香に任せるのはお門違いだろう。
(でも、だったらなぜ、晴永さんはお母さまの同席を望んだの?)
瑠璃香の疑問を置き去りに、二人の会話は進んでいく。
『でも』
そこで清香の声が少し柔らかくなった。
『ちゃんとあなたがお父さんとどう戦うのか、特等席で見させてもらうわ』
晴永は思わず黙り込んだ。
「母さん……」
『お父さんはきっと、私のことを引き合いに出してくるでしょうから……その時はちょっとだけ口出ししてもいい?』
「……ああ。じゃあ、祖父さんとの橋渡しの件、頼む」
『会社では一緒にいるんでしょうに……自分で言う気はないのね?』
晴永は、社長補佐だ。確かに清香の言うとおり、社内では基本祖父である角宮盛晴と行動を共にしているはずだった。
「会社では、プライベートな話はしたくない」
結婚絡みのことを持ち出せば、険悪なムードになって仕事に支障が出かねない。晴永はそれを懸念しているんだろう。
『……分かったわ』
電話が切れて、晴永が瑠璃香をそっと抱き寄せる。
「母さんと父さんの話、したことあったか?」
「あ、あの……晴永さんが幼いころにお父様が家を出て行かれたというお話は、少し……」
以前、結婚指輪を見に行った帰り道で聞かされた話を思い出しながら、瑠璃香は答えた。
晴永の父親は、ある日突然いなくなったのだという。
コメント
2件
なんかお母さんとの距離が少し縮まったみたい(*´꒳`*)
いや〜、清香さんが「お母さん」って自称したとこ、すごくグッときたわ。あの沈黙のあとの変化、ちゃんと息子の覚悟を受け止めたんだなって伝わってくる。晴永が祖父と直接話す決意を固めたのも、もう逃げないんだなって感じがしてかっこよかった。ただ、なぜ同席を望んだのかまだ謎だし、盛晴との対決がどうなるかめっちゃ気になる!続き楽しみにしてる🔥