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勇斗side
いつものようにインスタLiveをした日。
誰かゲストに来てくれないかなって考えてたら柔太朗からコメントがきて嬉しかった。
今日はドラマの撮影で郊外に行っているらしいからコラボは無理だけど。
これみよがしに柔太朗の苦手なきゅうりを食べてみたりしてちょっと意地悪してみる。
柔太朗まだ見ているかな?
流れるコメントを時々拾いながら野菜を切っていたら、あるコメントが気になった。
『雪の精霊がいた』
写真とともに呟かれたその投稿が宗教画の様に静謐(せいひつ)で軽くバズっている、と。
それが柔太朗じゃないかって言う人がいて、半信半疑でSNSを覗いたらマジで野生の柔太朗だった。
謝って撮影を中断すると画面外で柔太朗に電話をかける。
「どこにいんの?」
🤍「え…と、どこだろ?ドラマの現場の近く」
「〇〇(マネージャー)さんは?」
🤍「奥さんの陣痛が来て病院」
「気付いてないと思うけど、お前今SNSで騒がれてるぞ」
🤍「え、まじ…?」
「お前さぁ…本当、そういうとこ…。 俺が行くまでどっかに大人しく隠れてろ!」
電話を切るとマネージャーに説明して慌てて車に乗り込んだ。
柔太朗はクールに見られがちだけど本当は人見知りで口下手なだけだったりする。
意外と抜けていてその隙につけ込む悪い虫が後をたたない。
にも関わらず本人が気付いていないとこも余計にタチが悪い。
焦る気持ちを抑えてハンドルを握ると、今度は雪だるまの前で無邪気に笑う写真が流れてきた。
…マジで何してんの。
大人しく隠れてろって言ったよな、俺。
ため息を吐くと人差し指でこめかみを抑える。
でも結局、俺はこの笑顔に許してしまうんだ。
柔太朗とはグループの追加メンバーとして出会った。
あの頃の柔太朗は声も小さいし大人しくて、個性的なメンバーの中で埋もれるんじゃないかって心配してた。
だからできるだけ隣にいるようにしたし、たくさん声をかけた。
柔太朗は華奢な体からは想像できないくらい影で努力をしていて、穏やかの中にある凛とした美しさはどんどんファンの心を掴んでいった。
少年が孵化して大人になっていく様をそばでずっとみてきた。
綺麗だけどどこか危うくて、そしてそれがたまらなく本能を刺激される。
だから、困る。
LINEに書かれた公園に着くと街頭の下に一台の車が停まっていた。
先ほどの投稿にあった雪だるまがヘッドライトに照らされている。
薄暗い車内にぼんやり柔太朗が見えた。
運転席の方を向いているから表情は読み取れないが、 ふたりの姿が重なって離れてまた重なる。
…何をしているんだ?
確かめようと近づくと中の男と目が合った気がした。
男がニヤリと笑った瞬間、助手席が倒されて柔太朗が見えなくなる。
「…柔太朗っ!!」
俺は車に駆け寄ると窓を勢いよく叩いた。
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