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<しにがみside>
朝食として手渡されたリンゴを、シャクシャクとかじる。
ra「今日の作業内容は、農場 畜産 掃除。この中から選ばしてやる。」
リアム看守はチェストを取り出して、本をバサバサと入れていく。
どうやらこの中から選び取れというようだ。
pn「んじゃ~……これ!」
乱雑に詰められた本の中から、ぺいんとさんが選び取る。
本の中には一つの刑務作業の説明と、注意事項等が書かれている。
「俺掃除だ!」と、ぺいんとさん。
「俺は畜産かな」と、クロノアさん。
看守はその声を頼りに、紙に何かを書き込んでいる。
sn「ぇ?クロノアさん畜産ですか?僕が畜産になってますよ?」
【只今確認中─】
「……いって!」
スタンを受けて頭を抱えていると、困惑したような笑い声が降ってくる。
kr「ねぇ、本当にどう言うこと?w」
pn「wwお前人狼しようとすんなよ……ww」
賑やかになる周りに合わせて、僕も明るく声を上げた。
sn「誰も乗らないから、ボッチ人狼なんだよね」
ペンの擦れる音は直線を二度引いて、またカリカリと書き込まれる。
ra「じゃあ……お前たち、6番 ←農場 8番←掃除 9番←畜産で間違いないな?」
今度はちゃんと確認をしながら、 看守は呆れたように言った。
「餌や雑巾等の替えが必要な場合、その都度報告するように。」
……………………
sn《ぁ、農場の水路んとこ通れそう、!》
人参の種を植える動作を繰り返しながら、周囲を視線だけで探索する。
……ん?あれって……トラップドア?
pn《ぇ、いける?》
木材とドアが同化して見落としていたが、水中の探索はかなり経験している。
壁が石レンガのままなのは、この刑務所の意地の悪い設計ミスか。
sn《……ん?ぁ、これ木って素手で壊して良いんですよね?!》
ポンッと思い付いて、電球が光った。
kr《うん、いけると思う。何、…壊せそう?》
sn《農場にある水の中の床だけ木材なんですよ!》
kr《ぉ、じゃあ結構何かに使えそう!とりあえず何個あるかによるけど……やっぱツルハシかな?》
pn《保留のままでも良いけど、もし手荷物検査されたらバレるかもしれないしなぁ……》
扉から遠い位置にある、片方の畑の木材を五個回収して隣に目を移す。
sn《いや~……バレるか……こっち側無しだなぁ》
pn《……看守が入ってこない事を祈ろう。》
とりあえず水路を通ってみることになり、慣れた手つきで潜る。
水路を道のりに進めば、ネームタグが近づいてくる。
いや、距離を詰めてるのは僕だけど。
pn《ぁ、これ俺の方来てない?!……風呂場の方か?》
一度近付いたネームタグが離れていくのを見ると、風呂場とは水路が別になっているらしい。
sn《アッ……どこ此処?……何か出口無いかな……息が死ぬ、w》
同じだったら下水で出来た野菜食べることになるし、それは流石に嫌だけど。
(何処に繋がるのか分かんないのキツいな……)
少し開けた場所に出た。水面から肺いっぱいに息を吸って、出口の扉から這い上がる。
周りをグルリと観察すれば、クモの巣や埃が部屋に溶け込んでいる。
《倉庫みたいなとこに出ました、!》
僕が出てきたタンクには、[地下貯水槽]と看板がぶら下がっている。
電気がつく様子はなく、ランプや松明で照らしても薄暗さは拭えない。
《……何か本がある》
書見台の上に置かれた、何やら書き込まれた本が目に付く。
『レバーの切り替えは決して行うな。水路が切り替われば牢屋付近全域が沈没する。』
目に留まった恐ろしい文へ、そろりと指を置いて文字をなぞる。
pn《ぇ、お前大丈夫?そろそろ看守来るぞ?!》
sn《ヤベ、とりあえず農場から地下の貯水槽に出れるのが分かったことだけ!》
書見台の本をひったくるように回収して、慌てて水路から農場に戻る。
人参を食べて回復したが、この水路は出来るだけ使いたくない。
pn《クロノアさんは何をしてるの、w 》
kr《ぇ、牛の餌やりしてる》
平和か。看守も来てないみたいだし、セーフだろと高を括った。
ra「6番。」
背後から聞こえてきた看守の声に、全員の息が止まった。
僕は何事もなかったように返事をして、説明書通り動いた。
指定のチェストにはきちんと人参を入れた。
(何本か食べて無くなったのは……言わないでおこう。)
その筈なのに、今看守は僕の目の前に立っている。
身長差から見下すように見える顔は、一点を見つめている。
そして自然な動作で、僕の肩に手を置いて……払い除けた。
その時思い出したのは、あのクモの巣や埃が落ちる地下室。
ダラダラと冷や汗が酷くなっていく。
震える手の平に滲むのは、どっちだろうか。
看守は無言で中身を確認すると、僕を一瞥して口を開いた。
「……泥が付いていた。」
<ぺいんとside >
刑務作業を終えると、看守が先導してようやく牢屋に着いた。
リアム看守の様子が、さっきからおかしい。
シャンと伸びた背はいつも通りだけど、視線は伏し目がちだ。
(しにがみが何かやらかしたのか、?)
「えー、下段の牢の清掃を終えたので、お前たちの牢屋は引き続き番号の場所になっている。」
sn「今回は7番空いてるんですね?」
助かる~としにがみが話しながら入っていく。
おい、バレるだろ”ぉ。
ra「お前たちの中には、定期的に部屋を間違えたり、ハイパーなんとかを使う奴もいるからな」
看守はそう言いながら、監視カメラを見た……気がする。
kr「対策されてるw」
pn「これで間違えたらどうなるんだw」
看守の頭上にあるカメラは、変わらず黒くて丸いレンズをこちらに向けている。
首を傾げつつも、牢屋に入ろうと足を踏み入れた寸前だった。
俺の腕が強く引かれた。
後ろに立っているのは……あのリアム看守だったよな。
「え。な、?」
困惑した俺と看守の視線がかち合うと、瞳が大きく揺れた。
リアム看守は手元にあるそれを一瞥し、 わざとらしく背後に放り投げた。
掴んでいた手はパッと離れていく。
金属と紙が、地面に大きく音を鳴らした。
ra「8番……処刑までの日数はニジュウ日だ。」
(……え、バカにしてる?ありがとうだけど。)
しかしその行動とは裏腹に、瞳は形を崩さず吸い寄せられそうだ。
耐え兼ねて後退りすると、カシャンと鉄格子の施錠の音が響く。
看守はバインダーを拾い上げて、枚数を確認すると一言。
「その期間に変動はアリ。前と同じだ。」
ハッとした。
『違和感』は自然に戻っている。
──監視カメラの視ている先は、”何もなくなった地面”だった。
日数減少:しにがみ→19日ぺいんと→19日クロノア→19日
<クロノアside>
鉄格子の隙間から見えた二人の様子から、しにがみ君と目で会話する。
(何あれ?)
(……気付かれたかもしれない)
看守が居なくなったところで、しにがみ君が本を捲る。
三ページにわたって記されていたのは、地下貯蔵庫にある配管図と、貯水槽の点検記録。
sn「……これって多分誰か別の人に向けて書かれた指示書ですよね……」
しにがみ君のページを捲る音が止まる。
「あそこ地下貯蔵庫だったんだ……」
その時、ガタンッと隣から物音がした。
瞬時に手に持っていた本を仕舞って、息を潜める。
pn「ゴメン。俺だわ」
警戒していた空気をぺいんとの声が解き、肩の力が抜ける。
ぺいんとの様子が気になりつつも、俺は冷静に話を切り出した。
kr「俺の牢に、清掃員の日記って言う本が入ってたんだけど……」
この牢の清掃を行っている内に書いたのか、 走り書きの粗雑な字が並ぶ。
~清掃員の日記1~
『よぉ、PKST団。』
『あのメデューサ号を爆破したんだって?』
『俺はそん時ゾペロニアの方に居たけど、元々は用務員としてメデューサ号で働いてたんだ』
『まぁ、スティーブ機関長は覚えてないようだがな。』
pn「やべぇ、全然覚えてない……」
kr「俺は後半分かってないんだけど……w」
俺たちは、つい最近脱獄したばかりなのに、もう忘れかけている。
複雑過ぎたストーリーをたくり寄せながら、ページを捲った。
<ぺいんとside>
牢屋の中をグルグルと、忙しなく歩き回る。
『お前らがこの刑務所に戻ってくると聞いた時は運命かと思ったよ』
そこまで強く掴まれた訳じゃないけど、あの感触が消えない。
『俺はメデューサ号にお前らと看守ら……そしてジェームズ・ゴルゴンが乗っていたことを知ってる。』
俺が腕を擦る音は、朗読の声に紛れている。
『しかしながら、俺には強い情報網があってな……犯人はお前ら、だけじゃないと踏んで聞きたいことがある。』
鼓動がうるさく響いて、スラスラと流れてくる文字がまとまらない。
リアム看守……俺にトラップを仕掛けるなんて、卑怯だぞ!
『お前らが盗んだ伝説の剣の在処を教えてくれ。タダでとは言わない。』
『お前らが今後行くだろう場所に生け簀があるんだが、そこにチェストを置いておく。』
あの人……明らかにボディタッチ増えたよな。しにがみにもしてたし。
『本が入っている筈だから、それに情報を書いてほしい、褒美は後払いだ』
『俺は水曜日辺りに来て確認するから、汚すなよ』
pn「水曜日……」
一週間後のことを指しているんだろう。
足を止めて呟けば、「清掃員との取引」と「伝説の剣」…そして「脱獄」。
この重大な問題に立ち向かうことが、俺たちに出来るのか?と不安になる。
─人は不安になれば、音に敏感になる。
規則正しい革靴の音に、サラサラと書き込まれる音が重なる。
リアム看守だ。紙に何を記録しているんだ?
朝から思っていたけど、あれは何の為に……。
巡回の足音が近付いた気がして、俺は布団に突っ伏した。
【取引まで残り7日】
▽
怪しい取引を持ち掛けられた三人……。
「今、手元には何もない。俺たちに取引材料なんて無い。」
何故か 監視カメラと記録を、目の前で見せる看守。
「何を企んでいるんだ??……あの時は味方だったけど、今度は……」
鳴り響いた警報に、看守が持ってきたものとは、!
「え、クロノアさん?!」
次回「ほうれん草だよ♡ノアちゃん♪」
~俺と一緒にShall we dance !!~
NV:”カラス”のぺいんと
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