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スカイツリー付近の下町の灯りが、タクシーの曇りガラス越しに蜃気楼のように映る。夜が近い。

『で…お主』

「坂沼だ」

『ん…沼?雨が降っているのか?』

「違う!坂沼…俺の名前だ」

『そうか。では坂沼、そのすかいつりーとやらへは何をしに行くのじゃ?』

「…知らない方がいい」

いや、まぁ。スカイツリー付近の押上天祖神社へ相談に行くだけで、大したことはしない。出雲大社なんていう大御所神社の妖狐にとってはライバル心がありそうだと思ったのであえて秘密にしているだけだ。坂沼は鑑定道具を指先で突きながら、目的地に近づいたことを告げるタクシーのナビを見つめた。ここまで来てしまったらもう、ついてくるなと言うのも無駄だな。仕方ない。“後輩陰陽師”にはテキトーに説明しよう。

『しかし、それはなんじゃ?』

「鑑定士の仕事道具」

使わないけどな。ただ、道でばったりあった人間が自分を知っていたときの身分明証明代わりに持っているだけだ。バカでかい虫眼鏡なんか。

「鑑定士は忙しからな」

嘘。ホントは暇だ、仕事がないから。

『ふぅん…』

背中に柔らかいものを感じ、坂沼が振り返るとすぐそばに妖狐の顔があり、坂沼はたまらず「わっ」と叫んだ。・・思ったより貧乳じゃない。コイツ。

「なにやってんだ」

『のぅ、坂沼』

「…なんだ」

『お主、呪われた品が好きらしいのぉ』

「…好きだ。それがどうした」

平静を装って、坂沼(サカヌマ)はなるべく冷たく言った。憑依型(ツキモノ)は神様であれ、妖怪であれ。取り入られたら最後、容易く操られてしまうからだ。きっとあの依頼客もこうやって鏡を媒介に妖狐に取り入られたんだろう。気の毒に。

『あの築1000年宅の』

「築1000年いうな。30年だ」

『築1000年宅の蔵(クラ)を覗いたのじゃが』

「いや、何してんだよ」

つーか。二回いったし、こいつ。

『坂沼。確かに呪われた品はあったがな?三割型偽のものじゃ・・ハハハッ‼︎‼︎気の毒にのぉ』

「知ってるよ」

『えーーー!!』

なんつー現代風(モダン)な驚き方してんだ、創世記からいる神様のくせに…というか、七割も本物の『呪われた品』があった事の方が驚きだ。

「大体。心霊は、心に霊って書くだろ??だから。そういう類のものは、あくまで『心』からくるものなんだ。つまりは気のせい以外の何者でもない。僕はただ、気の病をとってやってるだけだ」

ようは、占い師みたいなモノだ。たぶん。

『インチキ“陰気“伊達鑑定士じゃな!』

「いろいろ付け足すなッ」

『くしゅん!』

…可愛い。だが、妖狐ってやつは自身至上主義だ。褒めると間違いなく『天狗』になる。なんだかこの文脈ではおかしいけれど、『妖狐が天狗になる』って。文系鑑定士としては、ついニヤニヤしてしまう。

『どうした?なにが可笑しいのだ』

「いや…なんでもないよ」

意外に、カワイイかもな。コイツ。

幽霊探偵なんてやってられるか

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