この作品はいかがでしたか?
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「有佳、本当に大丈夫?何かあったらいつでもいいから連絡して。それから、病院にも行ったほうがいいよ」
「わかった」
なんだかすっきりしない朝だ。
朝起きると胸焼けのようなむかむかした感じは無くなっていたが昨夜、眠れなかったのが堪える。
「じゃあ、行ってくるね」
そう言って出て行く賢也の背中を見つめて決心がついた。
昨日は足がすくんで一人では先に進めなかったが、今日はすんなりとドアをノックして入ることができた。
「来ると思ってました、いらっしゃい片桐さん」
満面の笑みで迎えてくれた松崎さんは,昨日よりは少しだけマシになったソファをすすめてくれた。
着手金の10万円を支払い金曜日に残業だと言われたら連絡するよう指示を受けると、とりあえず消化器科を受診することにした。
なにかの病気の前触れだと嫌だ、こんな気持ちで重大な病気とかになっていたら所構わず泣いてしまいそう。
煮込みハンバーグと豆腐と野菜の具だくさんスープをテーブルに載せる。
「ごめんね、9時以降は食事ができないのと一応消化のいいものにしたくて」
「構わないよ、それに有佳の料理はなんでも旨いし煮込みハンバーグは好きだしね」
「ありがとう」
ベッドに入るとまた、胃のあたりがムカムカとしてくる。
癌とかだったらいやだな・・・
賢也を送り出してから、病院へ向かう。
不安なことばっかり・・・
悶々としながら順番を待つ
鼻からの検査のためモニターを見ながら進めていく。
何か質問があったら言ってくださいと言われても、とてもそんな気分ではない。
「あ~かなり荒れてますね」
そうなんだ・・・
検査をなんとか乗り切り先生の説明を受けた。
温野菜のサラダにビーフシチューを二人で食べる
「どうだった?」
「胃が荒れてるって。でも、まだポリープにまではなってないからしばらくクスリを飲むことになった」
「早めに気付いてよかった」
「そうだね」
何事も早めに気づけば大きな事にならないのかもしれない。
暴飲暴食もしてないしタバコも吸ってない、これってやっぱり賢也のことでモヤモヤしてるからだよね。
どちらも結果は早くわかった方がいいのかもしれない。
「賢也って今週の金曜日も残業?」
「あああ、ごめんな」
「うううん、平気。気にしないで、私のために頑張って働いてくれているんだもの」
「有佳の為にがんばるよ、でも本当に早く気がついてよかったな」
「うん、でもしばらくは消化の良さそうな物ばかりになるけど」
「それこそ、オレは大丈夫。有佳の料理は本当に旨いから」
疑惑の目で見ると賢也が“金曜日”というワードに対して微妙な反応をしていることに気付く。
気がつかなければ、こんな些細なことは目に入ることはなかったんだ。
賢也を見送って、部屋中の掃除をする。
掃除をしているとすごく落ち着く
松崎さんへ連絡しないといけないのに、すごく緊張する。
松崎さんとの連絡方法はLINEなど残る物、通知が見える物はすべてNGだ。
電話をしようとすると、緊張で指が固まるため、そのたびに掃除をしていた。
午後3時
いい加減電話をしよう・・・
呼び出し音3回で「松崎です」と名前だけを名乗った。
「明日の金曜日は残業です」とだけ伝える
「了解しました。結果は土曜日の午後に書類を作成しておきます」それだけ言うと通話が切れた。
履歴に残った電話番号は登録せずにそのままにした。
夜、ベッドの端で賢也に背を向けるように寝ていると背中から抱きついてきた。
急に胃がムカムカとする。
「ごめん、ちょっと調子が悪い」
「うん、抱きしめるだけ」
そういうと首筋にキスをしてきた。
胃がおかしくなる・・
「ごめん、ほんとに・・・」
そう言うと、身体を離していきながら「おやすみ」と言って頭にキスをした。
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