コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あの日から五日が経過し、いよいよ死体を燃やす日になった。
いつものキャンプ場に車を止め、燃やす準備にとりかかり始める。
また車で吐きたくはないが、あの臭いに耐性がついたわけでもないし、こいつが燃やせって言わないことを願うしかない。
「また俺が燃やすのか?」
「いや、その必要はない。今回燃やす死体は前回より数が増えてるし、何より佐喜子の死体もあるからな。お前が中途半端に焼いてせっかくの死体を台無しにされちゃ困る。それにもう車をお前のゲロで汚されたくないからな」
「わ、悪かったって。というか、それだったら俺いらなくないか?燃やす訳でもないし」
「前も話したが、もう何人も殺してきてる。警察も本気で捜査を開始してくる頃だろう。だから、お前には見張りをしてもらいたい」
「見張り?」
「そうだ。今は深夜な上に大学から離れてはいるが、普通に警察が来たりしたら即刻逮捕になりかねない」
「あー…まあ深夜に男二人がキャンプ場でなんか燃やしてたら職質案件だよな」
「そうだ」
「つっても見張りかー…どうやればいいんだろ」
「人が俺の方に近づいてきたら教えてくれるだけでいい。声が出せない感じだったらメッセージで」
「警察じゃなくても?」
「一般人でも通報すれば警察と変わらないからな」
「それもそうか」
紅上はしばらくして立ち上がり、前に死体を燃やした辺りに向かった。どうやら燃やす準備ができたらしい。
「お前はここで見張っててくれ」
「了解」
そうして二回目の死体燃やし会が始まった。
*
死体を見たわけでもないし、燃やしている臭いもほぼしないが、前回の光景が脳裏にちらついて中々集中できない。
階段から突き落としてくるような女が性別すらわからないような体になっていく様は見ていて非常に辛かった。
一度焼死体になってしまうと、どれだけ面が良かった女も一瞬にしてただの焦げた肉塊となり、自分がどれだけ罪深いことをしてしまったのかという気持ちになる。
心を動かすという意味では一番効果的かもしれない。
きっと今回のを見ていたらしばらく再起不能になっていただろう。
*
かなり時間が経過した。ように感じた。
見張りっていうのも結構暇で、事件が起きないのが一番ではあるものの、事件が起こらないと仕事がないのが悲しい。
もう暇すぎるしスマホでも見るか、と思った瞬間、
「ん、明日ね」
という気だるげな女の声が聞こえた。
東本は取り出しかけたスマホを素早く出し、自慢の速いフリック入力で紅上にメッセージを送った。
『女の声が聞こえた』
『1人か?』
東本はメッセージを受け、声のする方へ頭を動かした。
女はスマホを耳に当てている。何やら電話しているらしい。
『1人っぽい、電話してるな』
『了解』
『俺の方に来そうだったら言ってくれ』
『わかった』
東本はもう一度女の方を見た。
進行方向を確認するためってのもあるが、一番は女の顔をよく見るためだ。
こんな緊張した場面になっても、いやなったからこそ、普段の生活が行動に現れている。
女が少し明るい所に来る。前より見た目が判断しやすい。
女を見て、東本は絶句した。
なぜなら超美人だったからだ。
しっかりと細部までは見えないが、顔のどのパーツもデカすぎず小さすぎず。
肌も白くて、痩せすぎてる訳でもない丁度いいスタイル。
逆にブス要素を挙げて欲しいレベルで美人だった。
「あ、係長。今は帰宅途中です。…はい、特に成果は…はい、では明日」
女は踵を返し去ろうとしている。
東本はしっかりと目に焼き付けようと女を目で追っている。
そして気づいた。
女は警察の制服を着ていた。
バレてたら本当にやばい。
女はだんだん姿が見えなくなっていっている。
東本がスマホを開いた瞬間通知が来た。
紅上からのメッセージだ。
『今終わったぞ、女はどうなった?』
『とりあえずいなくなったけど』
『こちらに気づいている素振りはあったか?』
『多分気づいてない、目合わなかったし』
『そうか』
『一旦そちらに向かう』
*
「燃やすのは成功したのか?」
「ああ。女の方も平気そうだしな」
「いや、あいつ警察の服着てたんだよ」
「本当か?」
「そうだ。結構やばくないか?」
「気付いてそうでは無かったんだろ?」
「まあそうだな」
「即バレることはないだろうが…念のため場所替えは必要そうだな」
「ここ以外に場所あるのか?」
「多少遠い所なら2、3箇所はある。どっちみち車で移動なんだから遠くてもそこまで痛手じゃない。大学から遠いという利点もある」
「やっぱ金持ちかー…」
俺たちは車に乗り込み、キャンプ場を後にした。