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萩野さんが来てから2週ほどに日々がたつ頃、僕らの高校の入学式が行われた。
これから僕こと〈梟〉(加藤 駿)は、高校一年生の畠中 幸人。という名の、勉強ができて軽く運動もできる男子を演じる。
〈鴉〉こと植野 雫は、高校一年生の畠中 日向。という名の、幸人の妹で、勉強ができる生徒を演じる。
〈百舌鳥〉こと佐藤 優也は、高校一年生の畠中 康介。という名の幸人と雫の弟で、運動を得意としながら時々馬鹿っぽさが垣間見える生徒を演じる。
この3人とも養子であるため、顔は似ておらず性格も大きく違う。という設定でこれからの学校生活を送る。
事前情報として、僕の正確な妹である。加藤 椿は、生まれた時から畠中 椿という偽名を持っており。椿は、僕らとともに学校生活を送っていた。3年前に事故で死亡している。いろいろと調べたが、萩野さんが証拠隠滅をしたせいか事件性は特に見つからなかった。
家から駅2つ離れた場所にある、この学校は幼稚園から大学まですべてそろっている学園である。金持ちたちは幼稚園や小学校から入らせたりするが、僕らは小学校4年生の時に編入し、小学校を卒業した時点で転校し東京に移った。そしてその後に椿がはねられて死亡。そして雫は組織をやめて、失踪。そして僕らは高校からこの学校に戻ってきたのである。たしかであるが、雫が失踪した期間はどっかのお嬢様学校に入っていたことになって埋められているはずである。相変わらず、組織の力の強さには驚くばかりである。
入学式の看板を通った時点で小学校時代の友人に気づかれて、今度遊びに行く予定を勝手な約束をとりつけられた。
日向は満点ではなくわざと1問間違えていたらしく、僕が新入生代表挨拶をしなくてはならなくなった。
「えーっと、ただいまご紹介にあずかりました、新入生を代表してご挨拶させていただきます、畠中です。 本日は、私たち新入生のために、このような素晴らしい入学式を挙行していただき、誠にありがとうございます。校長先生をはじめ諸先生方、来賓の皆様、そして温かく見守ってくださっている保護者の皆様に、新入生一同、心より感謝申し上げます。‥‥」
などとつらつらと言ってから席に戻ったが、はっきり言ってどうでもよすぎて、話した内容すら覚えていない。
新しい教室は、康介とも日向とも同じ1年C組だった。おそらく裏で萩野さんたちが介入していることだろう。
「剣道部に入らないか?」
部活紹介も自己紹介もまだだというのに、部活に勧誘するのをやめてほしい。そもそも、だれだよ。
「いえ、まだどこに入るかとか決めていなくて」
軽く頭をかきながら言うと、後ろから誰かに肩を組まれた。
「そうか、じゃぁ生徒会に入ろうか」
久しぶりに聞く軽く低めでありながら人懐っこさをにじませる声が聞こえる。
ひぇぇぇー風間先輩だぁぁ。彼は生徒会会長の風間先輩小学校の頃に生徒会に入った時にいろいろと教えてくれた先輩でもある。
「いえ、他の部活に入ろうかと‥‥」
「おい、風間お前何でここにいるんだ?帰れ。生徒会だろ?片づけを手伝え。」
「畠中君待っているからね」
さわやかに手を振って体育館へ向かう先輩に向かって、『ぜっったいに行きたくないです。』と今すぐ大声で言いたい。
「はい、このクラスの担任になりました飯田です。自己紹介は明日行います。はい、解散」
早いな。と心の中で思いながら。帰宅の準備をしたが、結構多くに人に話しかけられるため、そこまで早く帰れない。早く帰らないと風間先輩が校門の前で待ち伏せするからいやなんだよ。
「日向。帰ろ。」
「うん」
僕と日向は教室を出た。康介はもう他のクラスメイトと一緒に教室を出ているようだった。
下駄箱で靴を履いていた時に後ろからとてつもない嫌な予感がしたため僕は駅に向かって走り始めた。学校の並木道の途中で後ろを振り返ると風間先輩が追いかけてきていた。
ヒェッ。とても怖かったのでジョギング程の速度で走って逃げた。流石に全速力を出すと、世界記録を優に超えてしまうため、畠中幸人の状態ではジョギング程の速度までしか出さないように常日頃から心がけている。駅の階段を駆け降りついたホームでは目の前で電車のドアが閉まった。
あぁ、最悪だなぁ。と心の中でつぶやいていると、後ろからガシッと風間先輩につかまれた。この先輩は柔道をやっているそうで、体格は普通であるが結構力の使い方が上手であるため、少ない力で人を動かすのが得意なのである。まぁ、僕も柔道から始まりいろいろな格闘をやっているため、本気を出せば風間先輩など2秒もかからず殺せるが。
そんな風に引きずられながら駅から学校に連れ戻され、僕は生徒会室でガムテープで手を拘束された。
たぶん今の状態を訴えたら勝てると思う。まぁ、適当に何かいちゃもん付けて訴えても、裏の力が働いて、勝ててしまう気がするが。
「やぁ、遅れてすまないね。」
白衣姿のままの教師が中に入ってきた。そして、僕を見て何かを感じたような顔をした。
「あぁ、やっぱり幸人か‥‥」
「そうです。幸人以外の適任者はそうそう、いないでしょう」
繊細そうな細いフレームの眼鏡。清潔感があるしわの無い白衣。長くもなく短くもなく、跳ねてない髪。ポケットにはいつもきちんと決められて入っているのだろう赤ペンと青ペンとホワイトボード専用のペン。相変わらず、見るからに几帳面そうな教師である。
「久しぶり。改めまして、この生徒会の顧問を務めている北上大輔です。」
すっと、北上先生は笑顔で手を出してきた。その手を握り返し、こちらも笑顔を向ける。
「お久しぶりです。生徒会に入る予定なのでよろしくお願いします。」
「よし、畠中。今の録音したからな。」
「学校内への録音することが可能な機器の持ち込みは禁止なはずでは?」
「生徒会の権力でもみつぶす」
「やばっ」
「風間。次からやるなよ」
きちんと北上先生が釘をさす。しかし、今回の事はきちんと見逃されている。
「そういえば、日向君は生徒会に入る気はなさそうかい?」
「えぇ、生徒会にはもうこりごりとか言ってましたから」
「そうか‥‥」
地味に残念そうな顔をしているが、小学校時代にこの人が散々仕事の量を増やしていたが原因だろう。できれば僕も入りたくなかった。
「よし、生徒会の仕事を片付けようか」
「あれ?今日何かありましたっけ?」
「入学式の片づけ。君を追いかけるために途中でほっぽって来た。」
「働け」
北上先生があきれたような目で風間先輩を見た。
風間先輩は何も言わず、僕の手のガムテープを外し、通学カバンの持ち手をつかみ、体育館の方へ行った。
体育館の片づけ状況はというと、半分も終わっていない状態だった。そんな中、3人が片づけをしていた。その3人は、小学校の時の生徒会のメンバーと変わっていなかった。
「あっ。幸人じゃん」
その言葉で残りの2人が反応する。
「かーざーまーせーんーぱーい。勝手にどこか行かないでください。」
「はい。すいませんでした。でも、ほら、それ以上の収穫があったじゃん。」
「ありましたけどー。次やったらー俺っちが先輩の隠している秘密をーお昼にー放送で流しますからねー」
田井中先輩がそういった。
「大丈夫。そしたらお前を生徒会長の権限で退学にするから」
「職権乱用は禁止ですよ。もし、それをやるなら卒業式で風間先輩が生徒会長としての立場を返還した後に先輩の秘密を暴露したらどうですか。彼の生徒会長として退学させる権利はなくなっていますから問題ないですよ。」
田井中先輩に軽くアドバイスしてみた。
「幸人。お前天才か?」
田井中先輩はそう言ってから、ニヤリと笑った。
「畠中君。考えついても言うな。こいつならやりかねないから。」
「善処します。そして片付けましょう。もうすぐ、昼飯の時間になりますよ。」
「はい」
それから30分ほどたって、やっと全部の片付けが終わった。