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ここに置くのも久しぶりですね。
今となってはここの小説たちは黒歴史なんですが…。
気持ちの悪い朝だった。
やけに朝日が眩しくて、飼い猫は一向に起きる気配が無かった。
アラームの無機質な音が部屋に響くだけで、いつもと特に変わらなかった。
片思いが辛かった。昨晩、声を上げて泣いてしまった。
だけど、今は
ただただ、朝が気持ち悪かった。
だから、死のうと思った
思い立ったあとは何故か早くて、Suicaをチャージし始発のいつもとは向こう側の電車に乗り、電車が発車するのを待った。スマホの電源は切っておいた。小さい鞄には、スマホと、財布、そして片思いの相手──upさんから貰った、可愛らしい猫が縫われたハンカチが入っている。
upさんが、誕生日にくれた物だった。慣れていないのか、照れた様子でmmmr撮影の際に、プレゼントを送ったと言われた時は、涙がでるほどうれしかった。家に届くまで、少しでも早く受け取りたくて予定日も分からないのに、少しの外出もせず、家でずっと届くのをひたすら待っていたのだ。
欲を言えば、輸送ではなく手渡しで本人から貰いたかったが、恋人でもないのにわざわざこんな遠くまで会いに来てくれなんて我儘は言えなかった。プレゼントを貰っただけで、幸せものだったから。もう最後にあったのはmmmr全員で集まった日、1年前にもなる。
なんて懐かしい日を思い出していたが、列車の発車合図で一気に現実に戻された。朝早くだったためか、電車には誰も載っていなかった。
車窓から入り込む朝日がなんとなく心地よくて、気づいた時には眠っていた。
目が覚めるとどうやらもうお昼時のようで、時計は12時を指していた。朝からなにも食べていなかったため、そろそろ降りようとまだ眠気のある目を擦った。
幸いにも、どうやら田舎行きの電車だったようで、休日の電車内には人はいなかった。
なんとなく惹かれた駅で降り、なんとなく駅員さんに会釈して改札を通った。特に何も無いその駅の重たいドアを開けると、そこは山に囲まれた殺風景の田舎だった。
自分の住んでる都心より、ずっとずっと空気が綺麗だった。そこにいるだけで、まるで自分の汚い部分が全て浄化されたようにも感じた。
なんとなく、また歩くと海の匂いがした。その匂いに釣られるように歩いていった。
途中にあった地元の食堂で海鮮丼を食べた。美味しかった。
2時間、いや3時間ほど歩いた気がする。そこには、何の変哲もない海があった。
ただただ、綺麗だと思った。
綺麗すぎて、自分が、自分の全てが醜く感じた。
片思いの相手によく似た、綺麗で透き通るような青。
私は、その海に導かれるように手を伸ばす。届かない。覚悟を決め、靴と靴下を脱ぎ、海へ入った。
冷たかった。その時だった。
「 ……何してるんですか? 」
聞き覚えのある声だった。それは紛れもない、想い人であるupさんだった。
『 地平線、掴めるかなって。』
嘘はついていない。妄想にまででてくるとか、どれだけ片思いが酷いんだろう。
「 いや、そうじゃなくて…。なんでこんな所にいるんですか? 」
『 うーん、死にたくなっちゃって、逃避行? 』
なんちゃって、と振り返る。
そこには珍しく焦った顔で息を整えているupさんがいた。
『 は!?え、upさん!?本物? 』
「 そーですupprnですよー……。」
何でここに……?と戸惑っていると察したのか、実家がここら辺なんです、帰省してて気分転換に海に来たらltさんが変なことしてたから、と付け足した。
「 あの、よく分かんないけど死なないでくださいよ。ltさんに死なれるのは、俺が困る 」
『 関係なくないですか?upさんに 』
私は、もうこのまま死んでもいいとすら思っているのに。こんな辛い片思いも終わらせられて、このまま……
「 ……ずっと、好きでした。だから、死なないで、俺のために生きて欲しい 」
へ、と声が漏れる。私のことを好きだなんて、ありえない話だった。だって、いつもは私をあんなにからかって、その癖他の人のところにふらっと行っちゃうから。
慌ててる、かわいいなんて言われてしまって、更に恥ずかしくなり押し黙った。
「 逃避行ならいくらでも付き合うから、返事、聞かせて貰えませんか 」
気持ち悪かった朝のあの眩しい朝日は、全てを飲み込むようなオレンジの美しい夕日に変わっていた。
恋心を秘めた海は、静かに揺れた。
透き通った瞳に、全てを見透かされたような気がした。