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確りと閉じられた東門の外、二十数匹の闘竜が横一列に並んでこれから始まるであろう戦いに備えていた。
少し距離を置いてはいたが心強い仲間である獣奴が回復スキルの準備を終えて、背中ごしに頼もしい視線を注いでいる事が感じられているようだ。
さらに後方の塀の上には、スリーマンセルのリーダーに当たる魔術師達が、手に手に思い思いの武器を構えて仲間達の様子を凝視し続けている。
手にした得物は揃って真紅、『それ専用』である。
中央で一歩前に進み出た鬼王ズィナミ・ヴァーズは、両手に持った真紅のシミターを振り上げて叫びを上げる。
「いいか! 迎撃は竜達のブレスからだ! 突破された場合は獣奴がこれを迎え撃つ! 我々魔術師の出番はその後、周辺の魔力によって動く事が出来なくなった竜と獣奴の手当て、回復だぞ! スリーマンセルに拘(こだわ)る事無く身近にいる仲間達を治療する事っ! 壁外での乱戦にまで至った場合は個々にモンスターを相手の戦闘に入るが、気負って無理をしないように! 我々の刃は『鍛治王の里』自慢の『それ専用』だぁっ! 竜や獣奴、魔術師にとっては只の鋭利な武器だがモンスターにとっては天敵となる! 掠り傷一つで絶命に至らせるタンバーキラーの力を秘めた必殺の逸品である! つまり、トドメはいらない! 故にヒットエンドラン、一撃離脱を心掛けよ!」
この声に、大きな声で答える者、武器を構え直す者、不安そうに息を呑む者、それぞれの反応を見せる魔術師達だったが、流石はニンゲンが弱者となったこの時代に他者の為に生きる職を選んだ者達である、脅えて逃げ出そうとする者は皆無であった。
一際表情を硬い物にして身を寄せ合っている十数人は、まだ生徒の様だ。
どうやら避難の指示には従わずに、この場にやって来てしまったらしい。
四回生らしい子供たちの近くに歩み寄ったズィナミは優しげな笑顔を浮かべて語り掛ける。
「来ちまったのかい、仕方ないねぇ~! 指示に反した罰は後回しだよ…… いいかい、決して前に出るんじゃないよ! 他の者や竜、獣奴の近くでサポートに徹しな! アンタ等の役目は手負いで弱っているモンスターのトドメ役だ! 確り努めてお仕置きを回避するんだよ、判ったかい!」
「「「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」」
「ふふんっ! 死んだら承知しないからね! 最初は下がってな」
言い終えたズィナミは最初の場所、魔術師達が並ぶ塀の上、その中央に戻り、再び全員に向けて大声で叫ぶ。
「さあ、来るよ! 先走るんじゃないよ! 引きつけるんだ、アタシの合図までは飛び出し禁止だ! なーに、スタンピートと言ったって精々百体か二百体だ! 辛抱してれば直終わる! やってやろうじゃないかっ!」
今度は一人も違う事無く、その場に立った魔術師と魔術師見習いは、大きな声をピタリと合わせて答えるのであった。