ある日の放課後、練習を終えた俺と千早は、分かれ道まで一緒に帰る事になった。まだ7月の月初だというのに、夕方には太陽がアスファルトをじりじりと照らし、8月本番のようにムシ暑かった。
千早「今日は一段と暑いですねぇ」
藤堂「そうだな…」
生返事をしながらチラと千早の方を見ると、ほんのりと赤く焼けたうなじに汗が滴っているのが分かった。手の甲で汗を拭いとる仕草が妙に色っぽく感じて、気づけば話すのを忘れて千早に見とれていた。
初めはそんなつもりは無かった。隙あらば俺をおちょくって来るし、性格悪ぃし、いけすかねぇヤツだと思ってた。だけど、毎日会って、一緒に練習して、試合して、こうして一緒にいるうちに自分が千早に抱いている感情が友情では無いことに気がついた。授業中は必要以上に横顔を見てしまうし、練習着に着替えてる時はいちいちドキドキする。筋肉はあるけど意外と細ぇんだよな…。あと眼鏡を外すと意外と顔が可愛い。あと…
千早「…くん?藤堂くん?」
藤堂「あっ?!あぁ…どうした?」
千早「さっきから呼んでいたんですが、大丈夫ですか?さては暑さで頭が…?」
藤堂「いやぁ、大丈夫だ!ボーッとしてただけだからよ…」
千早「…そうですか」
千早「まあ、藤堂くんの場合は暑さでやられる程の頭は持っていませんでしたから、心配損でしたね。失礼。」
藤堂「お前ってほんといい性格してるよな…」
千早「それはどうも」
千早の口の悪さは相変わらずだったが、一瞬心の内を悟られたような気がしてならなかった。千早は勘が鋭い所があるから厄介だ。この気持ちを知られた時にはどれだけの軽蔑と罵詈雑言を浴びせられるか…。
でも、もしかしたら千早も俺と同じ気持ちかもしれない。自惚れなのは分かってる。けど、もしも、もしもそうだったら?そんな感情が無かったとしても、意識してくれたら?
その時、俺はどうする…?
少しの期待を胸に日々を送っていても、多分この関係が進展することは無いんだろう。言わなきゃ、気持ちは伝わらない。
そうして考えているうちに、あっという間に分かれ道の交差点に着いてしまった。
藤堂「…」
千早「ではここで。また明日ですね。」
藤堂「…ッなあ!」
千早「はっ、はい?」
藤堂「その、えっと…、今日、お前ん家親いんのか…?」
千早「両親ですか?今日は忙しいみたいで帰ってこられないそうです。…それが何か?」
藤堂「じゃあッ、俺が飯作りに行ってやるよ!」
(何、言ってんだ俺…。しかも超〜〜上からだし…。)
思わず口走ってしまった後悔と、2人の間に流れる沈黙の時間が気まずくて変な汗が吹き出てきそうだった。顔が段々と熱くなっていくのが分かった。無意識のうちに顔を手で隠した。みっともない顔を千早に見られていると思うと耐えられなかったから。
藤堂「悪ぃ…。忘れてくれ。ほんとに暑さでやられてるみてぇだ笑 ははっ…」
千早「別に構いませんよ」
藤堂「えっ…」
千早「自分から聞いといて何ですかその反応は。いつも出前では栄養バランスに偏りが出ますから、俺にとっては都合がいいです。自炊しませんし 」
藤堂「あ、あぁ…まあお前ならそうだよな…」
千早「はい…?」
藤堂「何でもねぇ!こっちの話だ…」
千早「そうですか…。では行きましょうか」
おう。と返事をしたが、俺はすっかり上の空でまともに歩けているかも怪しい位だった。家に行って飯を作るだけで何かが変わるとは思わない。しかし、妙な期待感が頭の中を支配して感情を押し殺すのにいっぱいいっぱいだった。
(とりあえず、何作るか考えておこう…)
続く
コメント
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初コメ失礼します!最高すぎる!推しカプ最高〜
やばいですほんとに好みです‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️
めちゃくちゃ良かったです‼️続き楽しみです☺️