テラーノベル
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食卓に並んだ湯気の立つ料理に、亮が「うまそー!」と声をあげて椅子に腰を下ろした。
「さすが咲だな。助かるわ」
兄の軽い言葉に、咲は「……どういたしまして」とだけ返す。
「ほんと、妹ちゃんは偉いなぁ」
悠真も隣に腰をかけながら笑った。
「俺が高三のときなんて、料理なんて全然できなかったぞ」
何気ない会話。けれど、心臓の鼓動が耳に響いて仕方がない。
咲は俯いて箸を並べながら、こぼれそうな想いを必死に抑え込んだ。
亮と悠真の笑い声が重なり、部屋に響く。
二人の間には、大学生同士の気安い空気が流れていて――そこに自分が入り込む余地はないように思えた。
咲は小さく息をのみ、ひとりでお味噌汁をテーブルに置いた。
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