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新幹線で京都駅に到着するとそこからバスに乗り京都水族館を 見学する。
大きな水槽にキラキラと鱗を輝かせながら大小さまざまな魚たちが泳いでいる。
別のエリアではアザラシやオットセイ、イルカやペンギンなどの海の生き物が遊んでいる様子が見れた。
「かわいいね」
並んで歩いていた元貴に声をかけるときゅっと口角を上げた
「ね、かわいい」
会話をしながら歩いていると突然元貴が足を止めた。
「綺麗」
そう呟く横顔に思わず見惚れしまう。
我に返り視線の先を追うと、 薄暗い空間を青白く光る水槽がトンネル状に覆っている。
水槽の中には無数のクラゲがふわふわと漂う。
「すご…」
感嘆の声が漏れる。
視線を戻すといつの間にか元貴は隣から消え、クラゲの説明パネルの前に立っていた。
慌てて追いかけ隣に並ぶとパネルを向いたまま呟くように話しかけられる。
「くらげって心臓も脳も無いらしいよ」
「変な生き物だね」
「とっても不思議。それって生き物なのかな」
「…たしかに……でもゆらゆら漂うのも気持ちよさそう 」
水槽を漂うくらげ達を見ながらそんな冗談を言う。
すると元貴は体を少しこちらに寄せ、俺の手のひらに指先を這わせる。
「僕は…嫌だなぁ…恋をしていたい、ずっと。」
そう言って熱を帯びた瞳でじっと見つめられる。
「っ…そっ、か」
熱をもろに食らってしまい、乾いた喉から言葉を絞り出した。
「…そろそろお土産買って戻ろう、点呼の時間なっちゃう」
元貴はそう言うと歩みを進める。
うつむきがちに隣を歩く元貴をチラリと覗き見ると頬を赤く染めていた。
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水族館を後にして、しばらくバスに揺られるとホテルに到着した。
聞いていた通り部屋は2人部屋でユニットバス付きだ。
持っていた荷物を置く。
2つ並んだベッドを見てよからぬ妄想に駆られ、頭をぶんぶんと振り邪念を払う。
「ぅわ…なにしてんの」
その様子を見ていたらしい元貴に後ろから声をかけられた。
「…ぇ! いや!テンション上がっちゃって!」
「…きも…」
何を言っているのか分からないといった冷たい目を向けられる。
「ほら、晩ご飯の時間だから」
そう言い残すと元貴は先に食堂に向かって行ってしまった。
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美味しいご飯をいただいて大満足で部屋に戻り旅のしおりを見ていると、すっかり頭から抜け落ちていた重大な事実を思い出す。
「お、風呂…」
そう、大浴場でみんなで入浴するわけだが当然ながら元貴も一緒だ。
男同士のアレコレを学んだせいでここ 1週間よからぬ妄想が溢れて止まらない。
今元貴の裸を見たら自分のモノがどうなるかなんて想像にかたくない。
そんなことを考えているとどこかに行っていた元貴が部屋に戻ってきた。
「ぁ、元貴?あの、次お風呂だって」
「…あぁ、僕部屋のお風呂使うから行っておいで」
ホッとしたような残念なような返答に落ち着きを取り戻した。
きっと大浴場が苦手で他の人と入りたくないとかそんな理由だろう。
「そっか!じゃあ行ってきます!」
そう言い残し部屋を後にした。
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