コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
前回のあらすじ
一斉攻撃を仕掛けてきたアメリカ軍。 兵士は皆出撃してしまい、野戦病院には負傷兵と看護師のみ。そんな時、野戦病院にアメリカ軍が来てしまった…
「中尉殿…!」
希望を胸に扉を開けたが、その先には彼の姿はなかった。背の高いアメリカ軍の兵士だった。
その兵士はなにか周りに伝えていたが、何を言っているのかさっぱりだった。私達は怯えて、死にたくないと両手をあげることが精一杯だった。「わ、私達…しぬのかな…」チヨが涙目になりながら震えている。チヨだけでなく、ここにいる全員が死を確信していた。
その時、アメリカ軍の兵士が、こっちに来いという仕草をしたので、私達は大人しくついて行った。もう抵抗する気は微塵もなかった。
ああ…遠くでは銃撃戦の声が聞こえる。波多野中尉殿は無事かな。もう死んじゃったかな…
遠くをぼーっと眺めながら連れられた場所は、米軍の基地だった。
私達はそこで、数日ほど負傷兵の処置をさせられた。
実を言うと…思っていたほど苦では無かった。野戦病院の頃は食糧難で、食事を抜く日は珍しくなかったが、ここでは1日2食食べる事が出来た。従順にしていれば、落ち着いた生活ができた。後で知ったことなのだが、アメリカは捕虜の人権を守る事が書かれた条約を結んでおり、私達は死なずに済んだ。もしあの時抵抗していたら…と思うとゾッとする。
そしてある日。日本人の捕虜が全員集められて、あるラジオの録音を聞かせられた。
『朕深く世界の大勢と帝国の現状とに鑑み…』
カナがハッとした表情で、「天皇陛下…?」と呟き、私達は信じられなかった。神とされる天皇陛下が。私達と同じ言葉で喋って…天皇陛下が態々自分の声で伝えるという事は、相当重大な事なのだろう。私は固唾を飲んだ。
ノイズが多くて、聞こえにくかったけど、どんな事態になったかは理解出来た…はずなのに、突然の事で頭がぼーっとして何も入ってこない。
『朕は帝国政府をして米英支蘇四国に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり』
…
「負けた…?」誰かがぽつんと呟いた言葉で、一気に今の情報が入ってきた。負けたのだ。
この時の4分半の放送は私の中で最も長い時間になった。気づけば涙が流れていた。負けてしまったのか?これで終わり?みんなが流した血は何の為に?嘘だ。絶対に捏造したものだ。
色んな感情がぐちゃぐちゃになって皆で泣いた。悔しかった。でも…少し安心している自分がいた。
「くそっ…クソ!なんで……なんで……!」涼子が床に突っ伏し、叩きながら泣いていた。
「じゃあなんでアキ少尉は死ななきゃいけなかったんだ…」
部屋に響くのは、嗚咽する声、鼻をすする音。悔しさ、無情さ、安堵で漏れる声…
私たちの戦争は、終わった。
次で最終話です。見てくださってありがとうございます。