【イツキ】「ライちゃん…元気にしてるかなぁ…。」
【レッカ】「それ何回目だよ…。口癖になってるんじゃないか?」
【イツキ】「あっ…ごめん…。」
【レッカ】「まぁまぁ…心配なのは分かるよ?だけどアイツがやりたいって言ったんだろ?だから俺らも『了解』って言ったんじゃねえか。」
【イツキ】「うん…でもやっぱり心配だよぉぉぉ…。それにすぐに帰ってくるとか行って…全然帰ってこないじゃ〜ん!ライちゃんのバッカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
【レッカ】「ちょ…声デカい…。」
【リュウト】「あははw今日も結構暴走してるみたいだね〜w」
【レッカ】「リュウト!助けてくれぇぇぇ!イツキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
【イツキ】「ガルルルルぅぅぅぅぅぅぅぅ…。」
【ナオヤ】「ヤベェな…。」
【レッカ】「だから気持ちは分かるけど…我慢しようぜ…?」
【リュウト】「でもさ…なんであんな選択をしたんだろうね…。この前まではライちゃんは『元の世界に帰りたい』とか言ってたのに…。」
【ナオヤ】「この世界で命をなくせば…現実世界へまた戻れたはずなのにな。もしかして戻りたくない事情もあったのかもしれないな…。」
【レッカ】「例えば?戻りたくない事情って…。ていうかその場合…何もかも思い出したってことになるぞ?アイツ…この世界に来た時は記憶喪失になってたんだろ?」
【リュウト】「いや…その可能性もあるかもしれないよ。だって僕らは彼と関わって…いろんなところに行って…いろんなことをしたことで…過去を思い出せたんだ。」
【リュウト】「だからライちゃんも…ここに来る前の記憶を思い出せているかもしれない…。」
【レッカ】「は…?じゃあ…アイツ…なんで俺らに教えなかったんだよ…そんなこと…。てかなんでそんなこと言えるんだよ…。」
【リュウト】「僕ら…ライちゃんの日記をさっき見つけたの。しかも結構分厚いんだよ…。」
【イツキ】「えっ…ホントだ…ライちゃんの字だ…。」
【リュウト】「最後のほうだけ読んでみて…。」
僕はリュウトにそう言われて、日記の最後のほうだけ読んでみた。そこにはライちゃんの過去が書いてあった。
○月○日 ○曜日…
俺は今日、過去の記憶をやっと思い出せた。俺がこの世界に来て、ブレイヴになる前の記憶だ。だけどみんなにはちょっと話せないな…。ちょっと気持ちを整理するために、ここに全て書き記しておこう。
俺はみんなよりもできないことが多い人間で、友達もあまりおらず、自分で言うのもおかしいかもしれないけど寂しい人間って感じだった。
両親も幼い頃になくしちゃって、孤児院にいた頃もずっと一人ぼっちだった。正直昔は寂しいって思ってた。けどその心はどんどん薄れていって、何も感じなくなっていった。
だけどとあるアプリをダウンロードして、画面の中に吸い込まれて、それで初めてここに来てから、俺の人生がガラリと変わった。俺自身もビックリするほどね。
思ったよりもたくさん友達ができて、いろんなことができて、いろんなところに行って、いろんなものを知った。改めて家族と呼べる人達もできた。幸せだと感じることもできるようになって、素直に笑えるようになって、感情も出せるようになってきた。それがたまらなく嬉しくて、楽しかったな。
俺がこんなふうに幸せになれて、もう少し生きてみようと思えたのは、間違いなくみんなのおかげだ。俺…現実世界に戻ったら、さっさとこの人生からおさらばしようと思ってたのになぁ…。まぁ…でもいっか…。
あと正直に言うと、たとえここがゲームの中だとしても、少し死ぬのが怖かったから、だから生き延びるほうを選んだ。イツキたちにはまだ言ってないけど、言ったら怒られちゃうかもな…。でもいつかは言わなきゃダメだよね。
あと昔の俺みたいに苦しんでる人たちを助けたい。正直ヒーローに憧れてたから、1回だけでもヒーローらしいことをしてみようかな。せっかくいろんな世界へ行くための力も手に入れたんだし…いろんな世界へ行って、いろんな人を救ってみようかな。
あははwいろんな世界へ旅行か〜!楽しみだな〜!でもイツキたちとお別れしなきゃいけないのは、ちょっとツライな。今までブレイヴとして、アイドル活動みたいなこととか、ヒーロー活動とか、いろいろ長い間してきた仲なわけだし…。やっぱり別れはツライな。
でもいいや!もう決めたことだもん!今更もう諦めねえよ!
そんじゃ…もう遅いし…寝るか…。
またね…みんな元気でね…。
サンダーこと『切崎 雷雨』より…
【イツキ】「サンダー…ライちゃん…。」
俺は気づけばボロボロ涙を流していた。ライちゃんはこんな大きな悲しい感情をずっと背負っていたのかと思っただけで、自分までツラくなった。
【レッカ】「ずっと…一人ぼっちだったんだな…アイツ…。」
【リュウト】「もっと早く気づいていれば…。」
【ナオヤ】「完全なる不老不死…長く生きることもできるが…死ぬことも許されない…。そんなツラい運命を背負って…アイツは今でもどこかで生きてるんだな。」
【イツキ】「ライちゃん…。」
俺たちが涙をポロポロ流す中、開いてた窓のほうから物音がした。みんなで音がした方向をそーっと向くと…そこには…
【ライウ】「ただいま〜。正面から入れなさそうだったから…こっちから来たよ〜。」
【イツキ】「…!ライちゃぁぁぁぁぁぁん!」
そこにいたのは、紛れもなくライちゃん本人だった。泣いてたせいで目元がパンパンに腫れた顔を見られたのは、ちょっと恥ずかしかったが、そんなの関係なく俺はライちゃんが部屋に入ってきた瞬間速攻抱きついた。
【ライウ】「うおぉっ…!?」
ライちゃんが「うおぉっ!?」という声をあげて、体のバランスが少しだけ崩れる。俺が初めて変身して一緒に戦った後もこんな感じだったような気がする…。そう思うと、すごく懐かしく感じた。
【ナオヤ】「おかえり。数日で戻るとか余裕ぶっこいてた癖に随分遅かったじゃないか。」
【レッカ】「そうだそうだ〜!イツキたちが心配してたぞ!ちなみに俺は別に心配してたわけじゃねえけどな!」
【ライウ】「あははwはいはいwごめんねぇ…ちょっといろいろと長くなっちゃって…。」
【リュウト】「で?土産話とかはないわけ?ないって言ったら…俺も怒っちゃうよ〜?」
【ライウ】「もちろんありますよぉ〜wてかみんな元気そうでよかった…俺も安心したわぁ…。って…えっ…待って…そのノートって…えっ…待って待って嘘でしょ…?俺の日記…!?みんなで読んでたの!?泣いてたのってそゆことぉ!?」
【レッカ】「そゆことだよ…!今更かよ…!」
【イツキ】「もう…とりあえず…ライちゃんのバッカぁぁぁぁぁぁ!この後お説教です!」
【ライウ】「えっ…えぇぇぇぇ!?俺帰ってきたばかりなのに…そんなんないでしょぉぉぉ!許してよぉぉぉ!」
【イツキ】「ダメですぅぅぅぅ!でも…」
【ライウ】「ん…?」
【イツキ】「ちゃんと旅のお話してくれたら…許す…。」
【ライウ】「お…おう…分かった…。」
ライちゃんはその後、たくさん旅の話をしてくれた。お土産もいっぱい持ってきてくれて、とにかく楽しかった。今日は時間の流れる速度がいつもよりも早かった気がした。
でも…数日したら…またどっか行っちゃうんだろうな…。
【ライウ】「久しぶりにイツキと一緒に寝れるな〜…安心する〜…。」
【イツキ】「あはは…。ねぇ…ライちゃん…。」
【ライウ】「ん?どした?」
【イツキ】「いつまで旅を続ける気なの…?もう…現実世界に帰らないつもりなの…?」
【ライウ】「……………あー…まぁ…うん…。現実世界に戻っても…○し屋として働きながら生活するだけだし…。今の旅しながら生活するスタイルのほうがいいと思ってるから…。」
【イツキ】「そっか…。俺は帰りたいと思ってたんだけどな…。帰ったらライちゃんに会えないのか…。」
その時の俺はワガママだった。自分は帰って現実でも生活したいからライちゃんも帰ってほしいなんて、こんなワガママ言っちゃダメだと思ってたのに…。
【ライウ】「うんじゃ…もうちょっと待っててくれない…?」
【イツキ】「えっ?」
【ライウ】「そのうち旅が終わって…俺みたいな不老不死な体でも命を捨てれる方法が見つかったら…その時は一緒に帰ろ…?」
【イツキ】「えっ…?いいの…?」
【ライウ】「いいよ…。だけど現実世界でもう1回会えるかは分かんない。もしかしたら…二度と会えないかもしれないけどね。俺はもういろんな罪を犯してる身だし…。」
【イツキ】「……………そっか…。」
【ライウ】「でも俺は逃げるよ。逃げて…オマエらを探し出すから安心しろ。だから…会えなかった時の未来を想像するな。」
【イツキ】「ライちゃん…ありがと…。」
【ライウ】「いいんだよ…。オマエらには借りがあるからな…。」
ライちゃんはダークヒーロー。だけどどこか優しいところもあって厳しいところもある。そんなカッコいいヒーローであり、英雄だ。みんなが憧れるのも無理はないと思う。
【イツキ】「ライちゃん…ずっと傍にいてね…。」
【ライウ】「……………うん…。」
綺麗で儚いこの世界を汚すものは許さない。自分の意思で進みだす者に愛を与え、諦めた者には相応の罰を与えて目を覚まさせる。それが彼のやり方だ。
たとえ彼が悪人だと言われても、俺は一生キミのことを支えるよ。あの時みたいに、ライちゃんがもう泣かないように。