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ゼル《初めまして、人の子よ。私はゼル…》
ゼル《…この村の民の言う「守護神」です。》
ルディア「え……しゅ、守護神…!?」
「森で祀られてた…?」
ゼル《ええ…しかし、この町は酷い有様になりましたね。》
《生憎、今の私は…力を失っています。故、人に少しの力を分け与えることしかできません。このキマワリを眠らせるのと、あなたを守るのでもう限界を迎えたほどです──》
《提案があります。人の子よ…貴女に力を与えます。》
《この町を救ってくれませんか?》
ルディア「え…なんで?私がやらないと…ダメなの…?」
ゼル《今の私は、戦うことこそ不可能ではありせんが、力が衰えており…》
《…いえ、時間がありません。手短に…戦いますか?戦いませんか?》
ルディアは胸の前で拳をぎゅっと握りしめる。
ルディア「…まだよくわかんないけど…」
「私…この町を救いたい!」
目の前の守護神は得体が知れなく無表情だが、少し笑った気がした。
ゼル《では、これを授けます。》
突然、ルディアの目の前にとても大きく、白と金の混じる高貴な大剣が現れる。
ルディア「おわっ!?」
「えっと、これは…?」
ゼル《「一番星の大剣」です。》
ルディア「えっと…これを持って戦いに行けってこと?」
ゼル《説明がまだです。この大剣は──》
ルディア「はあーっ!!」
ルディアは学舎の上にうろついていたゴーリキーに大剣で切り掛かるが、防がれる。
反撃のアッパーを…間一髪で躱す。
ルディア「あっぶな!!」
(このゴーリキー、さっきまで倒したポケモンたちと違って…なんかクッソデカいし不気味だし目が赤い…!)
(というかあの体…硬い…私の力じゃどうにも…)
ゼル《その大剣の力の説明を覚えていますか。》
ルディア「!!」
記憶の中のゼルの声『この大剣は、自然光で補給したエネルギーを纏わせ、それを放ったり振る速度を上げることが可能です。
その力を使う時は、正面上に剣を掲げ、こう詠唱しなさい──』
ルディア「世界に──光を!!」
そう叫ぶと、剣に青白いエネルギーが纏う──
ルディア「おお!?」
…と感心している隙にパンチを撃ち込まれそうになり、大剣でガードしようとするがもう遅い…
かと思いきや、防御が間に合う!まるで柱のように大きくて長い大剣が、木の棒のように軽い…!
ルディア(振る速度が上がるって、こういう事か…!)
ルディア「でぁーっ!!」
反撃の大剣が命中したその瞬間、纏っていたエネルギーが爆発するように衝撃を生み、ゴーリキーは後ろに倒れる。
ルディア「や、やった!倒した!?」
ゼル《そのようです》
倒すととても大きかったゴーリキーが通常サイズに戻った…
目を開けてみると、赤ではなく普通に戻っている。
ルディア「デカかったのはなんだったんだろう…?」
ゼル《見てください》
ルディア「!?」
騒動が起きた時からあった黒い霧が、晴れているのだ。
ゼル《あの妙な赤い目になったポケモンを倒すと、そのポケモンとあたりの霧が晴れるようですね。》
その時、倒したと思ったゴーリキーが起き上がる…
ゼル《!》
ルディア「やばっ…」
襲ってくるかと思い身構えたが、ゴーリキーは辺りを見渡して、唖然としている。
お前らは誰?と言わんばかりの表情でこちらを見つめ、どこかに走り去ってゆく…
ルディア「逃げた…?」
ゼル《敵意がなかったようですね。》
ルディア「……」
「…さっきの黒い霧…『ポケモンの暴走』だと思う」
「さっき遭遇したキマワリ、いつも遊んでた子なの…人を襲うなんて考えらんない」
ゼル《…可能性は高いですね。》
ルディア「あの霧、なんだったんだろう…」
ゼル《考える前に、町をなんとかしましょう》
町中を探し、瓦礫をどけたが…生存者は見つからなかった。
まず、ロベリアの父から墓に埋葬する。
墓には『スモークツリー・エターナル』という文字が書かれる…
ルディア「ゼル、私…強くなりたい」
ゼル《…》
ずっと我慢していたのだろう、抑えようとしても涙が溢れ出る。
ルディア「なんも守れなかった…今度は何かを守れる力が欲しい…!」
「私、強く…なれるかな…」
涙を拭き、目を隠す。
ゼル《ならば、特訓をつけてあげましょうか?》
ルディア「特訓…?やってくれるの?」
ゼル《その前に、貴女に話すべきことを話しておきます──人の子よ。》
《私は力を失い、この森に眠っていました。少しセイザタウンに貢献をしていたので、守護神として祀られていましたが…そう呼ばれる筋合いはあまりありません。》
《そして、私は貴女に協力して欲しいことがあるのです…》
ルディア「協力?」
ゼル《この世のプレート18枚を、全て集めてきて欲しいのです。》
ルディア「プレートって…?」
ゼル《象徴がそれぞれ所持している、タイプのエネルギーを秘めた板です。討伐された等で象徴以外が所持していることもあるかもしれませんが…》
《それがあれば、私は力を取り戻すことができるのです…キマワリを眠らせた時のように、戦えもするようになります。》
ルディア「…うん、協力するよ…守ってくれた恩があるしね。」
「それにこのまま生きてても、きっとそれと冒険以外にやることないだろうし…」
ゼル《感謝します…》
《それでは、これを。》
ゼルのツノが光り、カラフルなガラスのような平たく小さいものが現れる。心なしか、ゼルの頭に形が似ている。
ルディア「これは…?」
ゼル《「始まりの種」です。》
《大剣の鍔に始まりの種を装着可能な箇所があります。装着してみてください》
ルディア「こう…?」
ゼル《始まりの種は…ええ、自らエネルギーを発す受信機のようなものです。これが貴女の近くにある限り、私はあなたに語りかけ、あなたに力を供給することができます。》
《私はセイザ森林でまた眠りにつきますが…それを通じて、こうやって貴女とテレパシーでの対話が可能です。》
ルディア(そういえば妙に響く声だなあと思ってたけど、ゼルの声ってずっとテレパシーだったの…?)
残りの死体を片付けた。身元のわからない、知らないものも多くあったが…祈りを捧げ、冥福を願った。
しかしツゲとサルビア、ロベリアも…死体すら見つからなかった。
ルディア「じゃあ、特訓…いつする?」
ゼル《今からです。一番星の大剣があっても、こんな腕前じゃいつ野垂れ死ぬか分かりませんから。》
ルディア「う…厳しいこと言うじゃん…」
ゼル《特訓予定期間は1年です。》
ルディア「1年!?」
ゼル《不服ですか?サバイバル術も兼ねているのですよ。》
ルディア「…不服じゃないよ。いっぱい特訓した方が、その分強くなるもんね。」
ゼル《では特訓開始です。プランはやって覚えていきましょう──》
長らく時間が経ち…
ゼル《では、特訓終了です。》
ルディア「ふい〜っ、やっと終わりか、数ヶ月前よりずっとスタミナついてきたんだよ!めぐるましい成長でしょ?」
「この調子だと最初みたいに特訓前から前の日の疲労でバテてるみたいなことは起こらないよ!見てて、明日もいい功績を残すから。」
ゼル《特訓終了だと言ったはずです》
ルディア「え?うん、だから明日の特訓も頑張ろうって…」
ゼル《今日で…特訓開始から一年が経ちました。》
ルディア「え!?もう!?」
「そっか、もう1年かあ…一年前よりずっと強くなったかも?」
ゼル《そこに敵がいると仮定して、大剣を振ってみてください。》
ルディア「え…?う、うん…」
「行くよ…はっ、ふん!せい、はっ!」
一段目で右手の大剣を左上に切り上げ、間髪いれず二段目で左に1回転して薙ぎ払い、三段目で右上に切り上げジャンプし、四段目で切り落とす。
ゼル《動きがだいぶ良くなりました…ゴーリキーと戦った時とは大違いです。》
《では、明日から旅に出ましょう…今日はしっかり休んで、この365日の疲れを癒してください。》
ルディア「そうだね、もう訓練は飽き飽きだ。冒険家の夢に近づく時が来たかも?」
ルディア(…もし生きてたらサルビアたちのことも、見つけられたらいいな。)
ルディア「そういえば…私の名前、教えてなかったね。ルディアだよ。」
ゼル《ルディア……ルディア、ルディア…そうですか、とてもよい名前です。》
ルディア「でしょー!?分かってくれるんだ!」
ゼル《…では、行きましょう。》
ルディア「うん!」
ルディア(…さよなら…セイザタウン。)
こうして1798年、少女の旅は始まった──