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る あ .
902
1,370
#一般人
유리
41
スタートーー‼️
――午前0時。
アルカディア号の古びた時計が、五十年ぶりに動き始めた。
カチ……。
カチ……。
美月は、窓の外を見つめていた。
海上には、青白い光。
そして、その向こうには――
あの黒い船。
「……さっきの少女」
美月が呟く。
「私の名前を呼んだ」
隣にいたコナンは、腕を組んで考えていた。
「それが一番気になる」
「どういうこと?」
「五十年前の少女なら、美月の名前を知っているはずがない」
「……うん」
「だったら、考えられる可能性は二つだ」
コナンは指を二本立てる。
「一つは、誰かが少女に美月のことを教えた」
「もう一つは?」
「少女自身が……何らかの形で、今の美月を知っている」
「……五十年前の少女が?」
美月の表情が曇る。
そのとき――
カメラが小さく震えた。
――ピッ。
画面に一枚の写真が表示される。
そこに写っていたのは、五十年前のアルカディア号。
しかし、今までの写真とは違っていた。
「……これ」
美月が拡大する。
甲板に立つ少女。
その隣には白石澪。
そして、二人のさらに後ろ。
現在の美月と同じくらいの年齢に見える少女が立っていた。
「三人目……?」
コナンが驚く。
「今までの写真には、いなかった」
「うん……」
美月は写真を見つめる。
すると、写真の端に小さな文字が浮かび上がった。
――『最深部へ』
⸻
◆
アルカディア号の最深部。
そこへ向かうエレベーターは、船の古い構造には不釣り合いなほど頑丈だった。
「この船、五十年前のものとは思えないね」
美月が呟く。
「海底遺跡と繋がってるからだろうな」
コナンが答える。
エレベーターが下降していく。
――ゴォォ……。
階数表示が、
B1
B2
B3
と変わっていく。
そして――
B7。
停止。
扉が開く。
そこには長い通路が続いていた。
壁には、無数の写真。
五十年前のアルカディア号。
白石澪。
謎の少女。
海底遺跡。
そして――
蒼月の涙。
「まるで……」
美月が周囲を見る。
「誰かが、ずっと記録していたみたい」
「そうだな」
コナンは一枚の写真を手に取る。
「でも、この写真だけおかしい」
「え?」
そこに写っていたのは――
現在の月影アイランド。
そして、その写真の日付は、
2026年9月21日。
「……今日の日付?」
美月が息をのむ。
「誰が撮ったんだ?」
コナンが写真を裏返す。
そこには――
『記録は過去だけではない』
と書かれていた。
⸻
◆
通路の奥。
二人は小さな部屋を見つけた。
扉には、
『記憶保管室』
と書かれている。
「記憶……?」
美月が扉を開ける。
中には、大量の映像記録が並んでいた。
モニター。
古いフィルム。
写真。
音声記録。
そして中央に、一台の装置。
「これ……」
コナンが装置を調べる。
「記憶を映像として保存する装置みたいだ」
「記憶を?」
「正確には、記録された映像や音声を組み合わせて、当時の状況を再現する装置だろう」
美月はモニターを見る。
突然、画面が点いた。
――五十年前。
少女が映っている。
少女は一人で海を見ていた。
『私は、どこから来たの?』
少女の声。
『どうして私は、ここにいるの?』
画面の外から白石澪の声が聞こえる。
『あなたは海で見つかったの』
『海で……?』
『ええ』
少女は首を傾げる。
『名前は?』
白石澪が少し黙る。
『……まだ、ないわ』
少女は海を見る。
『じゃあ、私には名前がないの?』
『そうじゃない』
白石澪は優しく答える。
『名前は、自分で見つけるものよ』
映像が切り替わる。
少女が蒼月の涙の前に立っている。
青い光が少女を包む。
『この子が近づくと、宝石が反応する』
別の人物の声。
『まるで……選んでいるようだ』
そして少女が宝石に手を触れる。
――青い光。
遺跡全体が震える。
『この子は、蒼月の涙の鍵になる』
その言葉を聞いた美月は、思わず画面に近づいた。
「……鍵」
すると、少女が突然カメラの方を見る。
『もし、未来の人がこの映像を見るなら――』
少女が静かに話し始める。
『お願いがあります』
『私のことを、忘れないでください』
映像が止まった。
⸻
◆
美月はしばらく黙っていた。
「……この子、怖かったんだと思う」
「うん」
「自分が誰なのか分からなくて……自分の名前すらなくて」
美月は少女の写真を見る。
「でも、どうして私の名前を知ってるんだろう」
コナンも考え込む。
「まだ分からない」
そのとき――
部屋の奥から、機械音が聞こえた。
――ウィィィン。
一台のモニターが勝手に起動する。
そこに映ったのは――
現在の美月。
「……え?」
美月は言葉を失った。
映像の中の美月は、今日の昼。
月影アイランドへ到着したときの姿。
さらに次の映像。
美月が第七埠頭へ向かっている姿。
海底遺跡へ入る姿。
そして――
今、この部屋にいる姿。
「これ……」
コナンが驚く。
「リアルタイムで撮影されてる?」
美月が後ろを振り返る。
誰もいない。
しかしモニターには、確かに二人が映っている。
そして画面の下に文字が表示された。
『記録対象:美月』
その下には――
『適合率:98.7%』
「適合率って何だよ……」
コナンの表情が険しくなる。
その瞬間、別の画面に文字が表示された。
『過去の対象者:1名』
その名前は――
白石澪奈。
「……!」
美月が息をのむ。
「私と……この子が?」
コナンが画面を見る。
「同じ装置の対象になってる」
だが、その直後――
警報音が鳴り響いた。
――ビーッ!
――ビーッ!
『警告。外部アクセスを確認』
「誰かがこのシステムに入ろうとしてる!」
コナンが叫ぶ。
「急いで!」
二人が部屋を出ようとした、その瞬間――
モニターに少女が映った。
五十年前の少女。
少女は美月を見つめている。
そして――
「美月……」
また名前を呼んだ。
「あなたは……私なの?」
美月が問いかける。
少女はゆっくり首を横に振る。
そして、口を動かした。
――「違う」
続けて――
――「あなたは、私の続きを生きる人」
「……!」
映像が消える。
⸻
◆
その直後。
船内全体が大きく揺れた。
「うわっ!」
美月が壁に手をつく。
「アルカディア号が動き始めた!」
コナンが窓を見る。
海の向こう。
黒い船が移動している。
その進行方向には――
月影アイランド。
「まさか……!」
コナンが走り出す。
「黒い船が島へ向かってる!」
「じゃあ、あの船の目的は……」
「蒼月の涙だけじゃない!」
コナンが振り返る。
「月影アイランドそのものだ!」
そのとき、船内放送が響いた。
『月が沈むまで、残り一時間』
美月が時計を見る。
午前0時30分。
あと一時間半。
『蒼月の涙を持つ者は、月影アイランドへ戻れ』
『そこで、五十年前の最後の真実を知ることになる』
放送が切れる。
美月はカメラを握りしめた。
「……行こう、コナン君」
「うん」
「この事件の答えを見つける」
二人は船の甲板へ向かって走った。
その背後。
誰もいない記憶保管室で――
一台のモニターだけが、再び点灯する。
そこに映ったのは五十年前の少女。
そして、その横に表示される新しい文字。
『第二対象者、航海を開始』
その下に――
『美月』
という名前が浮かび上がった。
そして海の彼方では、
黒い船が静かに月影アイランドへ進んでいた。
その船首に刻まれた三日月の紋章が――
青く、妖しく輝いていた。
――第9章・終――
次章予告
第10章「月影アイランド、封鎖」
黒い船が月影アイランドへ到着。
島全体が謎のシステムによって封鎖され、通信も脱出手段も失われてしまう。
美月とコナンは、島に残された五十年前の地下施設へ向かう。
そこで待っていたのは――
白石澪が最後に残した、決定的な記録。
そして、ついに「月影の亡霊」の正体へとつながる手がかりが現れる。
コメント
3件
第9章、一気に引き込まれました…!「記録は過去だけではない」という一文や、少女が「私の続きを生きる人」と告げる場面、胸に迫るものがありました。五十年前と現在、二人の「対象者」が繋がっていく伏線の張り方が美しくて、最初から読み返したくなります。次の章で島が封鎖されるところ、どうなるんだろう…続きが気になって仕方ないです!